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タイトル未定 【ショートショート】

私のタイトルはまだ決まっていない。
だから産まれる先はまだ不透明なの。

以前のタイトルは「人間」だった。
最後の瞬間、次のタイトルも「人間」が良いなって思っていたことを微かに憶えている。

ここは次のタイトルを決める場所みたい。
みんな列にきちんと並んでいる。
次のタイトルは自分で選べるようね。

どの列に並べばいいんだろう。
列の数はとても数えきれない。
それに一度並んだらやり直しはできないみたい。
近くにいた最後尾の「何か」に なんの列なのかそれとなく聞いてみたけど「コケー!」って鳴くだけだった。
以前のタイトルはニワトリだったのかな。

どうにか「人間」の列を見つける方法はないかな。
まだ「人間」だった頃の知性が残っているうちに何とかしないと。
少しづつ忘れていっているような気がする。 

もう名前も思い出せない。
でも、もう一度「人間」になって やらなければいけないことがある。
これだけは忘れられない。 

地球上の生き物の中で人間の数は決して多くないはず。
昆虫や植物のタイトルになる可能性が非常に高い。
だから列に並んでいる数が多い所はそういう昆虫や植物の可能性が高いということよね。

並んでいる数が少ない列を探さないと。
少子化が進んでいるはずだからすごく短い列のはずよね。

それにしても列が多い。
端まではとても見渡せない程の数がある。

なかなか列に並ばない私をみて、係員が近づいて来た。
「そこの君、早く列に並ばないとタイトル未定のまま送り出されてしまうよ」
係員は業務的にそう告げるとまたどこかへ行ってしまった。

タイトル未定のままでも良いんだ。
私は少し気持ちが楽になった。
この「人間」の思考や感情を持ったままならタイトルなんてなくても良いのかもしれない。
やり残したことをやり遂げるならその方が確実かもしれない。
この苦しみ悲しみ怒りをわからせないと。

列に並ぶのは本能のようなものなのね。
みんな引き寄せられるように列を選んでいる。
私は なまじ「人間」が残っているばかりに欲がでるのかしら。

ベルが鳴っている。
そろそろ時間みたい。
列がどんどん進んでいく。
みんなそれぞれ新しいタイトルをもらうのね。
以前のことは全て忘れて。

そんなの嫌。
私はあいつにもう一度会うの。
私を殺した彼に。

サイレンが鳴っている。
「警告 警告」
「タイトルが決まっていない方はすぐに列にお並びください」
「タイトル未定のままでは危険です」
「繰り返します…」

そんなに焦らせても私は騙されない。
さっき係員から話を聞いていたから。
そういえばこれだけ膨大な列の数なのに他には係員はいないみたい。

そろそろ全ての列が処理される。

サイレンは鳴りやまない。
「警告 警告」
「タイトルが決まっていない方はサブタイトルをこの中から選択してください」
「妖怪 幽霊 モンスター 怪獣」
「選択がない場合はこちらで自動で決定いたします」
「世界の均衡を保つためにご協力をお願いいたします」
「繰り返します…」

この中で一番やり残した復讐をやり遂げるには。
やっぱり幽霊かしら。

「選択を確認『幽霊』を承認」
「強い怨念を感知 抽出し再合成します」
「完了」
「タイトル『未定』 サブタイトル『怨霊』」
「投下します」

これで彼から「人間」のタイトルを剥奪してやれるわ。


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