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母になる前に、偏食を知る

妊娠6週4日。

朝から変わらず船酔い状態。
もうこれが通常モードな気さえしてきた。

ところが仕事中、急にすっと気持ち悪さが消えた。

あれ、楽かも。

と思った瞬間、今度は動悸。
めまい。
手が震えて、キーボードを打つ指が言うことをきかない。

さっきまでの船酔いはどこへ。

気持ち悪さが消えたその一瞬で、
ミックスナッツを口に放り込む。

今なら食べられる。

1時間ほどして動悸はおさまり、
落ち着いたと同時にまた船酔いモード再開。

なんだこれ。
体が忙しすぎる。


帰り道、
「今日の夜は何が食べられるかな」と考える。

思いついたのは、おにぎりと唐揚げのセット。
いわゆる、ちょっとしたお惣菜セット。

イメージ写真↓
たらこじゃなくて梅だと最高。

唐揚げ“定食”は無理。
揚げたてが無理。
でも、少し時間がたって、
ちょっとしなしなっとした
冷めた唐揚げならいけそう。

駅のおむすび屋さんで、お目当てを発見。

「このおにぎり唐揚げセットください」

すると店員さんが、とびきりの笑顔で言った。

「ちょうど今、唐揚げ揚げたてのがありますので、そちら入れますね〜」

いや、待ってくれ。

私はここに置いてある、
冷めて少ししんなりした唐揚げがいいのだ。

どうしよう。
このご好意を断るのは心苦しい。

でも、ここは譲れない。

「こちらの、冷めている唐揚げでお願いします」

…言えた。

店員さんには申し訳ないけれど、
今の私は、本能が最優先だ。

今まで、お惣菜の唐揚げなんて買ったことがなかった。

唐揚げは
醤油とニンニクで味付けして
片栗粉で揚げた、
自分で作る唐揚げしか勝たん。

そう思っていたのに。

だし巻き卵も、出来立ては食べられない。
でも、幕内弁当や駅弁に入っている
ちょっと濃い味の卵焼きならいける気がする。

つわりの味覚は、本当に意味がわからない。

でも、ふと思った。
これって、子どもと一緒じゃない?

お母さんの作ったごはんは食べないのに、
なぜかコンビニのおにぎりは食べる。

昨日まで好きだったものを急に拒否して、
理由を聞いても「なんかイヤ」。

理屈じゃない世界。
今の私がまさにそれだ。

揚げたてはだめ。
冷めてるのがいい。

ふわふわはだめ。
濃い味ならいける。


説明できない。
でも体ははっきり「これ」と言う。

もしかして。

子どもが生まれる前に、
お母さん自身が“理屈の通じない偏食”を体験するのは、将来の予行練習なんじゃないか。

「なんで食べないの?」と責める前に、
「わかるよ、そういう日あるよね」って言えるように。

自分の意思ではどうにもならない感覚を、
一度ちゃんと味わっておく。

そう思えたら、
この不思議な現象も少し愛おしい。

健康志向も、理想の食事も、いったん横に置いて。

今はただ、
食べられるものを探している。

今日の正解は、冷めたしなしなの唐揚げ。

理屈じゃない。
でも、確かにそれが私の体の答えだった。

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