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軽トラ屋台放浪記1 旅先の石焼き芋よもう一度


異世界から転生したら色々あって妙な屋台で働くことになりました! を改題しました。

タイトルが長すぎてサムネイル画面だと何話目か自分がわからないため(しょーもない理由)

これより本筋!


秋向けの話題が多くなったなぁ。
夏の名残を惜しむよりは涼しさや日の暮れ方の変化にまだ追いついていけないような季節になっていた。

しかし、まだ夏はまだ終わっちゃいない!
と言わんばかりの暑さもあったりする。

どうやったっていずれは寒くなるのは間違いない、備えはしないといけないよなぁと諦めのような気もする。
丁度良いって時期はあっという間なんだよなぁ。

なんて言ってるうちに季節はズンドコと深まっていく。
本当にあっという間だ。


寒い時期の楽しみもある。
私の場合は焼き芋だ。
色んなタイプを食べ比べもするが、
焼き芋をするためキャンプ場に行くこともある!

今どきの品種で甘くて柔らかいものも、
昔ながらのポクポクしたものも好きだ。

友人知人が一緒にいる場合は苦手な人のためにジャガイモも焼く。
もちろん自分も好きだからだが。

じゃがバターは言うに及ばずだが、ちょっとお高い塩をかけて食べるのもお酒に合うので大変に喜ばれる。

余った場合はどちらのお芋もつぶしてサラダにしたりお菓子にしたり、スープに入れたりもできる。

偏愛ではないが重宝しており、とにかく好きであるのは間違いない。
人に自分の愛情を押し付けるような真似だけはしないのがポリシーではある。


そんな私が去年の冬に忘れられない焼き芋に
出会った。
出会ってしまった。
出会えた?

よくわからないが…、とにかく美味かった。

ちょっと足を伸ばした出先で「ピーー〜」と
音を立ててゆっくり目に走るトラック。
『ははん、このスタイルね。』と
何を気取っているのかわからない。
どれ、いっちょみてやりますか…なんて気持ちで先回りして待つ。
手を振り、流し売りの焼き芋トラックを停める。

詳しいやり取りは覚えていない。
その後に食べた時の衝撃で記憶がすっかり上書きされたようである。

覚えているのは私がトラックを停めたら、
他の車もコレ幸いとばかりに集まって来たこと。
後はトラックのリヤゲートにあった看板、

『ケンちゃん焼き芋』

これだけだ。

そしてとにかく美味かった!

また食べたい、しかし初めて行った場所でよくわからない。
覚えている看板を頼りに検索してみた。


軽トラより大きい貨物車を使っている。
神出鬼没、どこにくるのかわからない。
たまたま買えたらラッキー!
音が聞こえたので財布を持って外に出たらすでに通過した後だった…。

地元民も安定して買うことは難しいようであった。

『旅先で食べたが是非もう一度!』

私と似たような思いの方もいた。

昨シーズンの年度末あたりから見ていない、
どうしたのだろうと心配している書き込みが多く見受けられた。

昔、漫画などの定番で焼き芋屋さんを走って追いかけるというのがあったような気がするが…。
私は実際のところ、
違う形で追いかけることになっている。

さてどうしたもんか…。

キャンプ仲間であり同級生であり友人であり、バンドメンバーであるセーコに話をしてみた。
私達は女性4人で活動しているバンド、
『街で噂のパリジェンヌ』のメンバーだ。

解決してもらおうとは思っていない。
彼女は足が速いので一緒に買いに行くことがあれば活躍してくれるかもな…なんて思っただけの発想。

「ゔー、この辺だとピーじゃなくで音声だよねえ。
確かに食べたい時に丁度よく通りかかってくれるってのはあんまりないよねえ。
アタシなら追いつく自信はあるけど、見つからないんじゃ難しいねえ。」

やはり追いつく自信はあるのか…。
軽音部に所属しながら陸上部に貸し出された猛者は違うな。

セーコのお父さんが作ってくれたスイートポテトを食べながら考える。
喫茶店で出す前に試食して欲しいと頼まれてセーコの自宅が経営する喫茶店、風来坊で試食を行っている。

ん?バターや他の材料も入っているからわかりにくいが、お芋本体の味は私が求めているものに近い⁉️

「お父ちゃん、今年はなんで急にスイートポテトを出すことになったの?」

セーコが良いタイミングでお父さんに聞いてくれた、さて何故?
ヒントになれ!

「あー、屋台の大将がな、最近焼き芋に凝り始めたのよ。
『私の屋台はラーメンだけじゃないんです!』
とか言ってたが、アレだろ。
見合い相手に焼き芋が好きとか言われたんじゃねえのか。」

セーコのお父さん、マスターに話を聞くと、
私も話だけは知っている軽トラを改造した屋台の店長。
焼き芋のノウハウを同級生に教わってきたのは良いのだが、
凝り性がゆえに道具や焼き加減の工夫で試作品が大量に出たそうであった。
フードロスにならないよう協力を頼まれ、
季節限定で喫茶店のメニューにしてみることにしたそうだ。
冷凍庫に試作品が大量にあるので、なんならお土産に持っていけとも言われた。


試食者として感想を伝え、屋台の店長を紹介してほしいと頼む。

今日はスナックに出るのか?との確認を娘にしたマスター。
セーコは時々お姉さんの手伝いで夜の部であるスナックに出ている。
私の様子を見て時間が必要だと感じたのだろう。


「今日も試作してるはずだからな。
セーコ、大将のアジトに案内してやんな。
あと、試作もほどほどにしとけって伝えてこい。」

私の車にセーコを乗せ、案内をお願いする。
お店からそう遠くはない場所にアジトはあった。
看板は出ていないが何らかの修理工場なのはわかる。
よくわからない物は沢山あるが雑然とはしておらず、廃棄品もキチンと分別されていた。
怪しいけど怪しくない、そんな印象。

「あ、セーコさん、いらっしゃい。
どうしましたか?」

「源さん、お疲れ様です!
あのね、ウチのメンバーのみっちゃんが探してる焼き芋があって、店長が作ってる焼き芋に近いみたいなんだって。」

「どうも、ライブでは観客席から見させて頂いております。
ベースの方ですよね。
自分は源と言います。
よろしくお見知りおき下さい。」

挨拶を交わす。
セーコからは対バンの
『(有)不老長寿研究会』通称フロ研の
リーダーであるヒメさんの婚約者であると紹介された。
そう言えば見たことある顔だった。
はじめましてと迂闊に言わなくて良かった。

「店長〜!お客さんですよ!」

香ばしく甘い匂いを放つ軽トラの荷台で作業をしていた男が手を止めた。

「あー、いらっしゃい!
丁度ね、今焼けたとこなんですよ!
是非食べてみて下さい!」

荷台の焼き釜から二本取り出し、包丁でスパスパと斜めに切っていく。
切ったものを茶色い紙袋に入れ、
事務所らしき場所に手招きをされた。

中に入ると簡易的な応接セットがあり、
「どうぞお座り下さい。
焼き芋が苦手でなければ味見してもらえませんか?
いや、実はですね今試作中でして、
でも今日のはなかなか良いデキだと思うんですが、なにしろ食べ過ぎてしまって私は正確な判断がですね…、
あ、すみません話が長くなっちゃあダメですよね。
ひとまずどうぞ!」

紙皿を出され、茶色の紙袋から切り分けた焼き芋をのせてくれた。

色、形、匂い、記憶にある物と類似している。
ステージに上がる前のようなドキドキと高揚感が湧いてきている!

いただきます!と店長に伝え、皿に手を伸ばす。

皿ごと持ち上げ、噛み切ったところから崩れたものが落ちないように口元へ持ってくる。
しかしカケラは落ちず、舌と上顎だけでなく口中全体に絡みつくように心地良い感触を与えてくれた。

味はもう…しばらくポヤーンとしていた。
ハタから見たらかなりのアホヅラに見えたかもしれない。
ふと横のセーコを見ると無言でモグモグニコニコしており、2個目に手を伸ばすところだった。


「気に入っていただけたみたいですね。
いや、ほっとしました。
あ、飲み物は何が良いですか?
緑茶、コーヒー、紅茶、牛乳もありますよ。」

やるじゃない!
思わず声を上げそうになった。

私もセーコも迷わず牛乳をコール!

源さんが冷蔵庫からよく冷えたビン牛乳を二本出してくれた。

ビンというのがまた良い!フタを開けるのがもどかしく感じるのも、なにを小癪な!と楽しんでしまった。

気がつけば人の事務所に急に来て何やってんだというような反省はあるが、素晴らしい充実感に包まれていた。

店長は源さんから話を聞いて説明する準備をするかのように本棚から地図を出して来ていた。

「同級生から習ったんですが、今の試作品を食べて認めてもらえたなら彼に教わったコツはなんとか掴めたようです。
ケンちゃん焼き芋って言うんですけどね、
親父さんの名前からきてる屋号なんですよ。
彼が引き継いでから何年経ちますかねえ、
地元の人気は高いですからノウハウは完全に引き継がれているってことでしょうねえ。」

店長の説明でわかったこと。
彼が営業している場所は広範囲なのだそうで山をぐるっと回る日があったり、海沿いに行く日があったり、日毎に複雑なルートがあるのだそう。
彼なりの基準があり、しばらく出向いていないエリアに行くこともある。
病院や老健施設などでは彼が来るのを待っている人も多いそうだ。
しかし、売り切れになっては予定エリアの最後までたどり着けず、早じまいになることもある。
そういう時は蒸気で鳴らすピーの音も出さないようにして、そそくさと帰るそうである。
なので、パターンが掴めない原因になっているのだろうとのこと。

なるほど、合点がいった。
しかしそうなると確実に買う方法は…。

「明日ですが彼にコツを掴んだ報告と、
お礼にマスターのピザを届けるつもりなんですが買って来ましょうか?
やはり年季がちがいますからね、
本物にはとてもかないませんよ。」

「でも、みっちゃんは焼きたてを食べてみたいんだよね?アタシも食べてみたいなぁ。
一緒に着いて行ったらダメかな?
あ、でもルートが…。」

「なあに、ちょっと反則ですけどね。
家から出発する前に買いに行くんですよ。
本人にも一番確実だって言われてますから。」

「やったあ!それなら確実も確実じゃん!
みっちゃん、やったね!」

「ただし、ご内密にお願いしますね。
情報が拡散しちゃうと遠くの人に行き渡らなくなっちゃいますから。
来るのを待ってる年配の方もいますし、
小麦アレルギーで甘いものをなかなか食べられない子も焼き芋は大丈夫なんだそうでして、
楽しみに待ってるんですよ。」


いくら探しても焼き芋屋さん自身のSNSが無いのはきっとあえてのことなのかもしれないなと思っていた。
謎の人でいることを選んだんだな。
だからスピーカーで流してる曲が
デビル◯ンのエンディングなワケだ…。

「さて、私の屋台には彼のトラックに無いものがあるんですが試してみませんか?
トッピングでバターとクリームチーズと
小豆餡もあるんですが、
冷たい物もありましてバニラアイスとホイップクリームもですね…。」

私とセーコは悲鳴を上げた!
この店長、人をどうする気なのだ!
なんて酷い人だ!
そうかマスターがスナックに出るのか聞いていたのはこうなる事が予想ついたのか。
明日の事を考え、
必死にセーブする私だったが
セーコは、甘い、しょっぱい、熱い、冷たい
無限ループの世界へ自らハマりに行ったきりしばらく帰ってこなかった。

次の日、
前日にお腹いっぱいに食べたが、朝には私もセーコもすっかりとリセットされていた。
凄い効果だ、体が軽い!
体内で停滞していたヤツらには、すっかりお引き取りいただけた!
おかげでお肌のツヤもハリも上々!


セーコに昨日の無限ループを聞いたら、
ゴールが見えない1人リレーをやってるようだったが多幸感に包まれて幸せな気分だったそうである。
まだ思い出してはニコニコしているセーコを助手席へ乗せ、後部座席に店長と源さんを乗せて焼き芋屋さんの自宅へ向かう。

道中で店長から謎についての補足があった。

「営業車に車をぶつけられて、しばらく営業できてなかったんですよ。
まあ、営業できないんでしばらく1人旅に行ってたのが姿を見せない理由でもありましたね。
独身の気楽さってのも考えもんでしょうかねえ?」

「店長もすでに半分以上独身じゃないですけど、相変わらず自由ですよね。」

「うーん、籍を入れても離れて暮らすことになるでしょうからね。
お互い通い婚みたいな方が良いのかもしれないので模索中ってとこですねー。」

「源さんもほぼ既婚者じゃん、ヒメさんとまだ入籍しないの?」

「自分はヒメさんから古傷の具合をみてOKが出たら撮影所に復帰することになってまして、
復職してからとの話になってますね。」

「源さんに着いていくなら鍼灸院は閉めちゃうの?」

「いえ、困ってしまうじーちゃんばーちゃんが沢山いるから閉められないってことでしたよ。
単身赴任の形は最初から承知の上だって言ってましたしね。」

色んな形があるもんなんだなあ、まあ、近くにいるだけが正解じゃあないんだろな。

車中で店長が話すお芋にまつわる話で、
さつまいものツル、イモガラを縄として使い、味噌を染み込ませ身につけ、戦の際には食料にしたとか。
イモガラを漢字で書くと芋乾や芋柄になる。
人柄も同じ字が入る。
同級生の彼の焼き芋の素性、いやこの場合は芋柄でも良いと思うし、彼自体の人柄も店長が話すエピソードを聞いた私は興味を持った。

目的地が見えた、娯楽施設の敷地に隣接しており、住宅地とはちょっと違うかな?という感じの場所。
入り口から奥が見えにくいため、焼き芋トラックが停められているようには見えない。

「中は広いのでこの車でも余裕ありますよ。」

敷地内には畑と倉庫と母屋があり、確かに方向転換に困らないぐらいのスペースがあった。

母屋に近い場所にトラックが停められており、
幌のかかった荷台ではすでに釜が稼働していた。

「あれ?キョウから聞いてたけど、プレジの娘とは思ってなかったわ!
わざわざありがとうね〜!
車の調子はどう?」 

覚えていてくれたのだ!
車まで、いや車のおかげか?
叔父からもらった初期型プレジデント、
確かに運転している女性はあまりいないだろう。
古めかしいが気に入っている。
小さい頃からの馴染みがあり譲ってもらったものだ。
叔父も喜んでくれたので、時々叔父夫妻を乗せて出かけている。

「いやあ〜去年買ってもらった時に白手袋して初期型プレジを運転してる女性なんてインパクト強くて、また会えないか探しちゃったよ。
今日は後ろに乗ってた社長さん達のご要望?」

叔父夫妻であることや運転手的なスタイルは叔父夫妻を喜ばせるためやっていることなどを説明したら大いに笑ってくれた。

「そういうワケか、キョウの周りには昔から色んな人が不思議に集まってくるなあ。
ま、俺もそうかもね。」

試食にと焼きたてを包丁でスライスしてくれたものを皆んなに配ってくれた。
私の求めたものはコレだった!
店長の焼いたものも美味かったが、やはり年季が違う!

「やっぱりとてもかないませんね、親父さんのと比べても変わらなく美味いですよ。」

「まあ、数えると50年続けてるワケだしな、
それに釜だって自作だし、小型トラック使ってんのも釜の容量をかせぐためだからな、熱の入りが違うのはあるよなぁ。」

「軽トラなら経費は安くなるんでしょうけどね、荷台の広さも味の秘密なんですもんねえ。」

「俺が身長あるから軽トラはキツいってのもあるけどな、プレジデントでなくセンチュリーで焼き芋売ってるのはあるらしいけど、
ありゃあ俺にはできんわー。」

話しながらそれぞれの分を紙袋に入れてくれた。
「冷やしても美味いからね!試してみて!」

店長が技術指導のお礼にと風来坊のピザを渡すとトラックの助手席にしまった。

「サンキュー!今日の昼飯はピザだな!
釜であっためて食うよ!
前に食べて美味かったから楽しみでさ!」

あ、それなら焼かないピザを持ってきたら自前の釜で焼きたてが食べられるのではなかろうか?

「いいねえ!でもタイミングが合えばだよなぁ。」

私が運ぶと手を挙げた。
お互いに焼きたてを食べるためにと利害が一致したので協定を結ぶ形になった。

連絡先を交換してお互いベストなタイミングを図ることにした。

それからは、
焼き芋釜で新鮮な具材のピザを焼くために
私は通い、キープしてもらった焼き芋を受け取ることができている。

今度は彼が私達のライブを見に来てくれることにもなった。

プレジデントを運転してみたいと言うので、
私が後部座席に座り送迎ごっこもしてみた。

お互い行き来しているうちに季節は変わり、
初期型プレジデントの電動三角窓から入る風が暖かくなる頃には焼き芋のシーズンは終わった。

恋のシーズンも同時に終わりを告げ…なかった。

夏に向けてはトラックをスイカ販売用に模様替えするそうだ。

私はスイカも大好物だ!

しかし通う理由なんてのは、
もう、お互いどんな些細なことでも良くなっていた。

2人の相談の結果、お互い実家住まいの私達は中間地点に住まいを借りて拠点とした。
私はベースの練習場所として。
彼は趣味のレコードを聞く場所として。

お互いに興味を持ち、利害が一致したため
お付き合いが始まり今では月の三分の一程を
一緒に暮らしている。
単身赴任でもなく、通い婚でもなく、週末婚とも違う、名称はわからないが2人のベターな環境になっている。


その後、私は彼の焼き芋トラックと店長のマルチな屋台に影響を受け、プレジデントで使えるピザ釜を店長に依頼した。
トレーラーの形を取るらしい。

センチュリーで焼き芋売ってるならプレジデントでピザ売ったって良いじゃないか!

さて夏は何を売ろうか、スイカを使ったスムージーかシャーベットか…。

焼き芋とピザとラーメンで並んで売ったら面白そうだな…、

プレジデントの電動三角窓で季節の風を感じながら私は思案するのだった。






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ドライブイン ニューアジト 天井裏から愛をこめて! ナイタラダメヨ  (元ネタはアンジーです、知らない方すみません…。)