アマノ文筆クラブ 『したたかに笑って』
もしも、入浴中に大地震が来たら?
困るよね。裸だしね。
すぐには表に出られない。
まあ、表へ出ることが必ずしも安全ってわけじゃないけど、落下物から身を守るべくテーブルの下に避難も出来ないし、バスタブのお湯がグラングラン揺れて恐怖を煽る。
もうこの際、腹を決めてゆっくりと脱衣所へ。
そんで、グラングラン揺れる中で踏ん張って、慌てることなく体を拭く。
拭き終わって、脱衣所を出る頃には、まあ、地震も終わって穏やかな日常。
こんなことなら、波の出るお風呂にでも浸かっている気分で、しっかり入浴を楽しめばよかったかな……となるのでは?
先日、そんな時間帯に地震があった。
次女が入浴中。
彼女は幼い頃から地震を怖がっていて、それは今でも変わらない。
それなりに大きな揺れがあって、何台ものスマホからの緊急地震速報、そして市の防災行政無線が鳴り響く。
まあこれが恐怖を煽ってくる。
あ、入浴中の娘は大丈夫かな?
ふと気付いて、妻に様子を見に行くように伝える。
その頃には揺れは治まっていた。
風呂の方から妻の笑い声が聞こえ、戻ってきた妻に聞くと、娘は脱衣所でうずくまっていたという。
裸でびしょ濡れで、頭にはシャンプーの泡を山盛りに乗せて。
うん、怖かったのは分かるが、それでは何の避難行動にもなってない。
その格好で表に出るのは、何らかの犯罪になるし、今後の人生に大きな汚点を残すだろう。
そう言えば、娘は雷への恐怖も強く、まさに「地震、雷、火事、親父」を地で行っている。
あ、いや、「親父」は優しさに満ちあふれているから除外だが。
いずれにせよ、この地震大国ニッポンで、起きるすべての地震に震え上がっていては、身が持たないだろう。
雷だって夏の風物詩だ。
娘には、そんな時でもしたたかに笑って、乗り切れる度胸を持ってもらいたい。
そもそもね、地面が揺れることの何が怖いんだ?
遊園地のアトラクションなんて揺れるのばっかじゃないか。
それにお金を払って楽しんでるじゃないか。
アトラクションだって事故は起きる。
何をしてたってその可能性はあるんだよ。
雷だって、空が光って音を出してるだけじゃないか。
落雷が自分を直撃する確率なんて、自動車事故に遭うより遥かに低い。
この際、自然が織りなす壮大な音と光のショーを楽しんでしまっては?
……なんてことを言って娘を落ち着かせようと試みるが、怖いものは怖い、らしい。
そりゃそうだ、俺だって怖いもん。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
