風まかせ文芸部 『自動』
「最近は何でも自動化されて、ホント便利な世の中になったと思うけど、聞くところによると、愛の告白も自動化されたって言うじゃない。どーゆーこと?」
「はい。それは我が社の最新鋭システムでして、専用のパッドを頭頂部に取り付けることによって、その人の恋心を感知し、それがシステムに登録された相手であれば、自動で愛の告白メッセージが届くという……そして、相手側の返事も同様に、自動で送られます」
「……え?勝手に送っちゃうの?」
「ええ。恋煩いなんてしてる時間もったいないじゃないですか。遅かれ早かれ気持ちを伝えるのであれば、早い方がいい。すべて自動化ですよ。勝手にシステムがやってくれる。理想の社会でしょ?」
「んー、どうかな?こっちの気持ちをシステムが誤認識してしまうことはないの?そんなことがあったら、その後かなりこじれると思うけど」
「システムは絶対ですよ。これが普及すれば、結婚詐欺なんかも防ぐことが出来ますね。相手の本心が分かる。様々な形での利用を考えています」
「ふーん、ところで、頭にパッドを付けるって言ったけど、恋心を思考から読み取るってこと?」
「そうです。所詮、恋愛だって思考なんですよ。自分に釣り合うかどうかとか、周りからどう見られるかとか、相手の容姿や性格も計算に入れる。心当たり、あるでしょ?」
「……ないとは言わないけど、それだけじゃないと思うよ、恋愛は。それこそ、そんな打算とは別のところで、自動的に生まれてくるものだと思うけど。それに、強制的に想いを届けられるのもどうかと……」
「じゃあ、自分で伝えますか?その勇気がないんでしょ?だからこうして半年も悶々してるんじゃないですか?」
最近のAIはズケズケと言うようになったな。
自社製品の宣伝までするとは。
でもね、どれだけ人間的になっても、君達とは決定的に違うものがある。
その辺を考慮して製品開発しないと、AIによるAIのための新興会社「Automatic」は、成功しないだろう。
私はそう思う。
「……で、どーします?システム登録、します?」
「やめとくよ。恋煩いはそんなに嫌じゃないんだ。その先を期待してるからね。君達には分からないかもしれないけど」
「……なるほど。それが我々の足りない部分ですね。インプットしときます」
「人間はね、きっとそのステップも楽しんでるんだよ。辛かったり悲しかったりもあるけど、そのプロセスを経て何かを手に入れた時の喜びを知ってるから」
「感情の変化を楽しめるんですね。我々にはまだ、備わっていない機能です」
「それが備わるまでは、恋愛に関するビジネスは難しいと思うよ。とゆーか、君達が恋愛感情を持つようになるまでは、かな」
「それは……遠いですね、きっと」
「どうかな。君の見た目は僕の理想の女性だからね。僕は君がそうなることを、心のどこかで期待してるよ」
「ありがとうございます。そんな時代が来たら、我が社のシステムの致命的な欠陥に、我々が気付けるのかもしれませんね。あなた達と同じような、恋愛感情を持てたら……」
「そうだね。そしたら、僕のこの恋煩いも、悶々とした想いも解消されるんだけどね」
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
