アマノ文筆クラブ 『ミイラ取りはミイラになれ』
私が開発したタイムマシンで、まずは部下を過去に送った。
そしたら、帰ってこない。
織田信長の写真をスマホで撮ったら、すぐに帰ってくるように言ってあったのだが。
それほど難しい任務とは思えない。
時間旅行に失敗したのだろうか。
しかし、タイムマシンの管理コンソールには、安土桃山時代に無事到着しているとの情報が。
なのに何故?
次の志願者には、現存するミイラの、生前の姿をカメラに収めてくるよう依頼した。
人物や時代を調べ上げ、ピンポイントで送り込む。
志願者はまだ若く、意気揚々と出発したのだが……やはり帰ってこない。
私のタイムマシンは乗り物ではなく、時空間の転送を行うカプセルのようなものなので、旅行者が帰ってこなかったからといって次のタイムトラベルに支障が出るわけではないが、志願とはいえ、こうも部下を失うと自責の念に耐えられなくなる。
私は自らタイムマシンに入る。
過去がダメなら未来に行ってみよう。
過去がダメと決まったわけじゃないが……ミイラを撮りに行った若者は帰ってこない。
……いや、その時代にはまだミイラではないか。
マシンの起動スイッチを入れる。
彼と同じ時代に行って彼を救うことも考えたが、二人で同じトラブルに巻き込まれ、共倒れになることは避けたい。
まずは自分で体験して、知識を得ることから始めよう。
マシンが唸りを上げる。振動を感じている。
私のこのタイムマシンに、何か問題があるのだろうか。
設計は完璧なはずだ。時間旅行を可能にした。
間違いなくその時間、その場所へ転送されたはずだ。
ならば、いったい何が……あ。
時代を遡る。
到着しても、その時代に自分はいないはずだ。
まだ存在していない。
するとどうなるのだろう。
傍観者にすらなり得ずに、存在しないものとされるのでは?
その辺の考慮がなされていないことに気付いた。
では、未来ならどうだ?
しかも、設定は50年後。
私はその頃……生きているのか?
いや、もうこの年だ。ほとんど望みはない。
私の研究対象でもある、ミイラとなって保存されているかも……。
いずれにせよ、このタイムマシンには致命的な欠陥がある。
今すぐ脱出して、破壊しないと。
体が急速に老いてゆく感覚。
時間旅行とともに、私の中でも時が経過してゆく。
もう、ミイラの腕では何も出来やしない。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
