アマノ文筆クラブ 『猫にこんばんは』
にゃあ。
お、どうした?
いつもは素っ気ない、公園の野良猫。
ベンチに座る俺にすり寄ってくる。
時刻は深夜二時。
にゃあ。
お腹空いてるのか?
今、何にも持ってないんだよな。
部屋に一人でいたら、なんでかやたらと寂しくなっちゃって、思わず外に出たんだ。
だから何も持ってない。
悪いな。
にゃあ。
あれ?お前さ、いつももう一匹とつるんでなかったか?
あの、白黒の、痩せててちっちゃい子。
今日はいないのか?
お前も一人になっちゃったのか?
にゃあ。
なんか、俺と話してくれてるみたいだな。
ちょっとだけ寂しくなくなった気がするよ。
やっぱりさ、何かを返してくれる存在って必要なんだよな。
言葉が通じなくてもさ、そこにいて、聞いてくれてるだけでいいってゆーか、返事をしてくれたらもっとあったかい。
にゃあ、にゃ。
うん。彼女と喧嘩してさ。
まあ、俺が悪いんだけどさ。
でも、どーしても謝れなかったんだよな。
謝ったら負け、みたいな気がしてさ。
バカみたいだろ。
お前には、分かんないだろーな。
にゃーあ。
にゃーあ。
お、白黒ニャンコ。
いたんだ。
良かった、良かった。
ちょっと心配しちゃったよ。
……あれ?
お前、なんかお腹大きくなってない?
にゃ。
……そっか。
お前達の子供が出来たんだな。
お前、お父さんになるのか。
大丈夫かよ、ちゃんと育てられんのか?
親になるってな、大変なことなんだぞ。
彼女にさ、家庭を持つ覚悟すら持てないの?って怒られた俺だけどさ。
正直、怖いんだよな。
親になるって、大変なことだろ?
にゃー。
にゃ?
そんなこと、考えてない顔だな。
まあ、お前らはどうにかするんだろうな。
たくましいもんな。
ただ、がむしゃらに生きてくんだろうな。
羨ましいよ。
にゃ、にゃ、にゃ。
あ、なんか、コンビニで買ってきてやろうか。
猫缶とか、腹減ってるだろ?
お前、お母さんになるんだからな、栄養付けないとな。
待ってろよ。
美味いもん、買ってきてやるからよ。
公園を出て、近くのコンビニに向かう。
そっか、あいつも親になるのか。
もしかしたら、素っ気なさを捨てて俺にすり寄ってきたのは、家族で生きていくためなのかもしれないな。
……考えすぎかな?
俺には何が出来る?
彼女と、これから出会えるかもしれない新しい命のために。
そこにはきっと幸せがある。
それは分かってるけど、この社会に「家族」として組み込まれることに抵抗がある。
そこには責任が生まれるから。
きっとそれは、あの猫達には感じることのないもの。
コンビニで猫缶を買った。
レジでお金を払いながら、「俺、こんな時間に何やってんだ?」と自問自答する。
答えは、
「猫に『こんばんは』したら、何か大事なものに気付かされたから、お礼にご馳走することにした」
そんなところか。
明日の朝、彼女に電話してみよう。
家庭を持つことに不安はあるけど、家族になることは幸せの一歩だと思う。
その気持ちを伝えたい。
それでもし余裕があったら、猫も家族に加えたいな。
責任はもっと増えるけど、幸せもそれ以上に大きくなると思うんだ。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
