アマノ文筆クラブ 『これっきりですか?』
僕に背中を向けて、君が去ってゆく。
あんなに真剣に、僕に想いを伝えてくれた君が、寂しげに肩を落として、僕から遠ざかってゆく。
もう、これっきり?
これっきりですか?
もう、会いに来てくれることはないのだろうか。
あんなに熱い思いをぶつけてくれたのに。
何時間だって君の話を聞いてあげたのに。
他の人の視線なんか気にせずに、自由奔放に振る舞う君だったのに。
一線を越えちゃいけなかったんだ。
どれだけ心が燃え上がっても、越えちゃいけないラインがあった。
それは、互いの身体に触れること。
触れたい気持ちを抑えて、見つめ合って話すことしか許されていなかった、君と僕。
そうしないと、歯止めが利かなくなってしまうから。
どうしても我がものにしたくて、その手でつかんでしまうから。
なのに君は、欲望を抑えることが出来なかった。
僕に触れようと、その手を差し出して……お互いが痛みを伴う結末となった。
だがきっと、僕を組み敷いた君は、大きな快楽も手に入れたのだろう。
僕の体の上に跨った状態の君は、恍惚な表情を浮かべていたね。
そして、そこに邪魔が入った。
いや、僕にとっては救いの手。
赤い光とサイレン。
店に踏み込んできた男達は、僕から君を引き剥がした。
店の中心で、君は僕に何かを叫びながら、その手に商品ならぬ銀のリングをかけられて、背中を見せて連れられてゆく。
寂しげに肩を落として、僕から遠ざかってゆく。
これっきり?
もう、これっきりですか?
もう二度と来ないと約束してもらえますか?
他のお客様の迷惑になりますので。
たちの悪いクレーマーにはウンザリです。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
