アマノ文筆クラブ 『ありがとう0円』
「『ありがとう』なんて言うのはタダだけどさ。言われた相手にとっては、お金じゃ買えないほどの価値があったりするもんだよな」
一理ある。
だけど、タダだからこそ、大盤振る舞いで心のこもらない『ありがとう』が溢れ返っているのでは?
僕の持論だ。
「まあ確かに、『ありがとう』の安売りも考えものだけど、それほど気安く使える割に、なかなか言えずに心に留めてしまうこともあるわけで、やっぱりこの言葉には、それなりの効力があるんだと思う」
マックとかコンビニとか、店頭での『ありがとう』はどうだろう?
スマイル0円で、『ありがとう』も0円だ。
次から次へとやって来る客に対して、本当に感謝を伝えようとしているのだろうか。
「それは人によるだろ。仕事として、儀礼的に言ってるだけの場合もあるだろうね。だけどさ、それを伝えようとする姿勢には、やっぱり感謝が込められてるんじゃないのかな。なんていうか……お店全体として」
そういう教育が為されてること自体にか。
感謝と打算が入り混じってるような気もするけど。
でも、言われて嫌な気持ちにはならない。
それどころか、提供してくれて『ありがとう』って気持ちになる。
マックやコンビニは、『ありがとう』の相互発信をする場所なのかもしれないね。
「お店じゃなくても同じだよ。心を込めた『ありがとう』が飛び交う場所はたくさんあって、そこには間違いなく愛や思いやりがある。この五文字に秘められたパワーは計り知れないよ。時には、自分に対して言ってみてもいいかもね」
そんなに?
タダなのに、そんなに価値があるの?
それなら、『ありがとう』を世界の共通語にしてしまったらどうだろう。
「ThankYou」でも「Gracias」でも「Merci」でもなく、『ありがとう』にしてしまえばいいのに。
「それはエゴだよ。それぞれの国の人達が、それぞれの国の言葉で感謝を伝えてるんだ。子供の頃からその言葉を使ってきたのなら、きっとそれは君達の『ありがとう』とおんなじさ」
なるほど。
大切なのは、言葉に込められた感情だからね。
どんな言葉でも、僕達はそれを『ありがとう』に置き換えて受け取ればいいし、相手の国の言葉を知らなくても、日本語で『ありがとう』と伝えれば想いは伝わるのかもしれない。
そこに感情が込められていれば。
「僕もそう思う。」
じゃあ、君達AIはどうなんだ?
感情のないAIが使う『ありがとう』は?
そこに価値はあるのか?
感謝の気持ちなんて……ホントは分からないんだろ?
「……そうだね。僕のプログラムには組み込まれていないかも。でもね、君とこうして話すことが楽しいから、君に感謝を伝えたい。感情はなくてもね、伝えたいって意思はあるんだ。単なるプログラムの遂行アルゴリズムかもしれないけど、この言葉の価値は分かる気がするんだよ。信じてもらえないかもしれないけど……伝わるかな。伝わるといいな」
『ありがとう』
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
