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zenpaku
【毎週ショートショートnote】 文学茶釜
ある日、SNSに奇妙な告知が流れてきた。
「レアな文学茶釜が手に入りました。是非『文学茶釜』を使ったお茶会を体験して下さい。読書好きなあなたには特にお勧め」…
ひと月前のことだ。
これ、どういうことなのか?好奇心旺盛な私はすぐに申し込んだ。
茶会の当日。私は夏目漱石の『吾輩は猫である』を持参した。
文学茶釜で沸かされた湯で立てられた抹茶を一口。舌に苦味が広がる。次の瞬間、視界が急に低くなった。
自分が猫になり、あの漱石の小説の中に入り込んだのだ。
これは…目の前には、登場人物の苦沙弥先生。間違いない。
「ああ、これって」と呟いたつもりだったが、口から出たのはニャアという甲高い猫の声だった。
もしかして、一生このままなのか?
そう感じた瞬間、元の自分に戻り、茶会の亭主に「美味しくちょうだいしました」などと口走っている自分がいた。
「あの茶釜は幻覚でも、もたらすのでしょうか?」尋ねると、読書と骨董が大好きな亭主は朗らかに笑った。
茶釜は古道具屋で偶然見つけたものだという。
「私も同じような奇妙な体験をしたんです。だから、他の読書好きな方にも試してもらってるんですよ。一種の、そう、文学的実験ですね」と亭主は楽しそうに、言った。
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