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掟シリーズ第六話:「深夜二時、踏切の数を数えてはならない」

掟シリーズ
第六話:「深夜二時、踏切の数を数えてはならない」
その町には、 使われなくなった貨物線が残っていた。
錆びた線路。
草に埋もれた枕木。
そして、 二キロほどのあいだに、 異様な数の踏切が並んでいる。
全部でいくつあるのか。
誰も正確には知らない。
なぜなら町には、 古い掟があった。
―― 深夜二時以降、あの線路の踏切を数えてはならない。
大学生の夏樹は、 都市伝説系の動画を撮っていた。
再開発で消える前に、 「呪われた踏切群」を記録したい。
そう考えた。
「今日は、実際に踏切を数えてみます」
スマホの録画が始まる。
時刻は午前一時五十分。
同行しているのは友人の圭介だけ。
「マジでやるの?」
「ただの噂だろ」
夜風が冷たい。
遠くで、 カン……カン……と、 踏切警報機の音が鳴っている。
列車など、 もう何年も通っていないはずなのに。
最初の踏切。
一。
次。
二。
三。
四。
線路沿いを歩く。
だが妙だった。
踏切の間隔が、 少しずつ短くなっている。
住宅街だった景色も、 いつのまにか知らない路地へ変わっていた。
圭介が立ち止まる。
「……なあ」
「ん?」
「さっき、“七”やらなかったか?」
夏樹は笑う。
「気のせいだろ」
だが自分でも、 数が曖昧になっていた。
八。
九。
十。
十一。
踏切が増えている。
ありえない密度で。
警報音も近い。
カン、カン、カン、カン……
まるで、 どこかへ誘導しているみたいだった。
午前二時。
その瞬間。
すべての踏切が、 一斉に鳴り始めた。
ギャン!! ギャン!! ギャン!!
異常な音量。
赤い警告灯が、 闇の中で無数に点滅する。
そして。
線路の向こうに、 “列車”が見えた。
真っ黒だった。
窓がない。
先頭も最後尾もわからない。
ただ、 異様に長い。
音もなく、 こちらへ近づいてくる。
圭介が叫ぶ。
「逃げろ!!」
だが夏樹は動けない。
気づいてしまった。
踏切の数。
今、 十三を超えている。
この線路に、 そんな数は存在しない。
そのとき、 背後から声がした。
「十四番目、見つけた?」
振り向く。
踏切の遮断機のそばに、 駅員が立っていた。
古い制服。
帽子で顔が見えない。
男は静かに言う。
「数え終わった人は、乗るんだよ」
黒い列車が、 踏切へ到達する。
その瞬間、 全ての警報音が止んだ。
静寂。
列車の扉だけが、 ゆっくり開く。
中は暗い。
だが、 無数の人影が座っていた。
全員、 こちらを見ている。
夏樹は後ずさる。
すると人影たちが、 同時に口を開いた。
「次は、あなたが数える番」
翌朝。
線路沿いで、 夏樹のスマホだけが発見された。
動画には、 途中まで踏切を数える声が残っていた。
「十一」
「十二」
そして最後に、 知らない声で、
「十四」
と録音されていた。
その日から町では、 深夜二時になると、 どこからともなく踏切の音が聞こえる。
使われていないはずの、 あの貨物線から。

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