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mi_do_green8
題名しりとり 第一話 種
題名しりとり
第一話 種
世界には、誰にも植えられていない種がある。
畑にも、庭にも、山にも落ちていない。
人の会話の途中。
読みかけの本の余白。
飲みかけの湯飲みの底。
そんな場所にだけ、ひっそり転がっている。
その種は、土では育たない。
「あれ?」
という、小さな違和感を栄養にして芽を出す。
誰かが立ち止まる。
誰かが首をかしげる。
誰かが、意味もなく笑う。
すると、見えない芽が一本だけ伸びる。
その芽は花にならない。
実もつけない。
ただ、人の心の中に、新しい問いを一本だけ残して去っていく。
ある日、老人がその種を一粒拾った。
「これは何の種ですか」
と尋ねると、種は答えた。
「まだです。」
老人は笑って、胸ポケットへしまった。
それから町では、不思議なことが起こり始めた。
誰も答えを急がなくなったのである。
世界は、少しだけ静かになった。
種は、その静けさの中で、また一粒増えた。
そして、その最後の一粒には、小さくこう書かれていた。
「ね。」
(つづく)
