サティホームセンター
サティホームセンター
「バッハホームセンター」から国道を数キロ離れた、人気のない裏路地にその店はある。看板は色褪せ、文字はなぜか鏡文字で書かれている。
「サティホームセンター 〜買わなくてもいい、ただ居てくれれば〜」
店主エリック・サティは、毎日同じ灰色のベルベットのエプロンを完璧に着こなし、客が来ても挨拶をしない。カウンターでじっと、動かない扇風機の羽根を見つめている。
用途のないネジと釘
この店に「サイズ別」の棚はない。サティ店主はネジを、大きさではなく「手触りの寂しさ」や「転がる時の音の軽さ」で分類している。
「店主、このネジに合うナットはどこだい?」
サティはゆっくりとモノクルを直す。
「それを探すことに、何の意味があるのですか。ネジはネジとして、そこに転がっているだけで十分に美しい。無理に何かを締め付けるのは、音楽に対する暴力と同じですよ」
客は目的のものを買えず、代わりに「洋ナシの形をしたドアノブ(ただし穴がない)」を買って帰っていく。
家具のための音楽(または家具そのもの)
サティホームセンターの目玉は、DIYコーナーではない。「ただ座るための椅子」と「ただ置くだけの板」の展示コーナーだ。
「この板は何に使うんですか?」
「何にも使いません。ただの板です。背景です。あなたがこの板の前で溜息をつくとき、この板は完成します」
店内の電動工具の騒音を彼は「オーケストラ」と呼ぶ。サンダーの削り音に合わせて、古いピアノで同じ和音を840回、弾き続ける。
枯れていく色彩
裏手の園芸コーナーに、派手な花は一切ない。色を失ったサボテンと、名前も知らない地味な苔だけが置かれている。
サティはジョウロで水をやりながら呟く。
「花は、咲き誇ることで自分を主張しすぎる。私は、枯れていく瞬間の、あの控えめな色彩を愛しているのです」
彼が独自に開発した肥料「冷たい小片」を与えると、植物は成長を止め、そのままの形で静止する。
閉店後の白い静寂
閉店時間になっても、彼は「閉店です」とは言わない。ただ、店内の照明を一段階ずつ、気がつかないほどゆっくりと暗くしていく。
レジを締め、売上金——ボタンや貝殻が混ざっている——を数えることもせず、カウンターに突っ伏して眠る。
「……明日は、もっと透明な釘を仕入れよう」
翌朝、入り口に新しい貼り紙がある。
『本日、店主は外出しています。ただし、店主の影はレジの後ろに置いてありますので、ご自由にご相談ください』
客は首を傾げながら、誰もいない店内へ入っていく。
