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エリック・サティの7本の同じ傘

エリック・サティの7本の同じ傘

傘は、閉じたままだった。
エリック・サティの部屋は散らかっていた。積まれた楽譜、空の瓶、誰かからの手紙——封が切られていないまま、山をなしていた。その混乱の中で、唯一整然と並んでいたのが、全く同じデザインの7本のコウモリ傘だった。
彼は毎日そのうちの1本を手に取り、パリの街へ出かけた。土砂降りの雨が降っても、傘を開こうとはしなかった。
「いいかい。傘というものは、広げて使うものではない。脇に抱えて歩く時の『角度』こそが、音楽の核心なんだ」
真顔でそう言い、びしょ濡れになりながらモンマルトルの坂道を歩いた。
楽譜の端には、こう書かれていた。「歯痛のように弾け」「自分を隠すようにして」。演奏家たちは譜面を前に、途方に暮れた。
ある時、彼は「家具の音楽」を思いついた。食事の邪魔にならない、誰も聴かないための音楽。演奏が始まると、客たちが感銘を受けて静まり返った。
サティは烈火のごとく怒り、会場を走り回って叫んだ。
「聴くな! おしゃべりを続けろ! 飯を食えと言っているだろう!」
客席は、また静まり返った。
7本の傘は、少しずつ変わっていった。
柄が手の脂で黒ずみ、布に雨の跡が白く残り、石畳を打つたびに石突きが削れた。それでも傘は、一度も開かれなかった。
サティは黙って新しい1本を選び、また街へ出た。
彼が亡くなった後、誰も入らせなかった部屋を、人々は初めて開いた。
山のような未開封の手紙。そして、7本の同じ傘。
どの傘の中にも、誰にも見せるつもりのなかった未発表曲のメモが、びっしりと詰め込まれていた。
窓の外では、雨が降っていた。

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