お嫁に行くの!

お嫁にいくの!

登場人物
●娘 十六歳
●省吾(しょうご) 二十五歳
●娘の母
●娘の父

(場面 娘、母、父の家、居間)

母  あんた……今なんて? もう一回言
   って?
娘  省吾さんとこにお嫁に行くの、もう決
   めたの
母  ……ちょっと、お父さんテレビは消し
   て……
父  ああ、すまんすまん
母  お嫁に行くって決めたって、相手の気
   持ちもあるでしょう?
娘  もう決めたの! 省吾さんも良いっ
   て言ってくれた
父  ……彼は、何歳なんだい?
娘  二五歳。
母  そもそも付き合ってないんでしょ
   う? どうして結婚まで話が飛ぶの
娘  早く結婚しないと他の人に取られち
   ゃう……早くしないと
母  そうは言ったってねえ
娘  お母さんはどうしたら納得してくれ
   るの?
母  そうねえ、その「しょうごさん」とや
   らと、お話してみないことには
娘  だったら呼ぶわ!(ケータイを取り出
   し)もしもし? 省吾さん? 今から
   ウチ、来られます? 住所、メールで
   送っておくね、じゃあね
父  もう来るのか? 早すぎないか?
娘  だってお母さんが言ったんだよ、会い
   たいって
母  会いたいとは言ってないわ! 会っ
   てみないとわからないとは言ったけ
   ど……
父  ネクタイ……ワイシャツ着た方がい
   いか?
母  ちょっとお父さん、お見合いでもない
   んだから
父  そうか……そうか
娘  私は省吾さんとこのご両親にもう会
   ってるよ、かわいいねって言われたよ
母  あんたは世間を知らなさすぎる
娘  そんなことないよ、社会のテストは点
   数いいよ
父  やっぱりネクタイの方が……
母  二人とも落ち着いて
娘  落ち着いてないのはお母さんだよ、さ
   っきから、くどくどくどくど…
母  とにかく、省吾さんが来るのね! あ
   たし口紅つけてくる!
娘  ちょっと、お母さん……あ、お父さ
   ん! ネクタイじゃなくていいから
   ね!
父  はい……

 (暗転)
 下手より省吾入場。
 家にやってくる
 お辞儀をして居間の椅子に座る。

省吾 お邪魔します…
母  初めまして
父  娘がお世話になっております……
娘  ようこそ! いらっしゃい我が家
   へ!
母  娘から話は聞いておりますが……
省吾 え! 話ってもしかして結婚すると
   かですか? (娘の方を見て)だから、
   気が早いって
娘  (省吾を見つめ返して)決まっている
   ことなのに早いも遅いもないでしょ
   う?
省吾 ちゃんと考えないとダメだって。まだ
   一六歳だろ、楽しいのはこれからだよ
娘  省吾さんといるのが一番たのしい
省吾 視野がせまいよ、だめだって
母  あんた、相手は良いって言ってるって
娘  条件付きでね
父  そもそも、二人はどこで知り合った
   の?
娘  それは……
省吾 言いにくいだろうし、僕から言うよ。
   ……娘さんと出会ったのは、電車でガ
   ラの悪い男性に絡まれていて、困って
   いた様子だったので話しかけたんで
   す
母  あら
父  そうですか……
娘  さっき言ってた条件っていうのは、学
   業を優先させること、親を心配させな
   いこと、付き合い始めるのはせめて高
   校を卒業してから。
母  全然守れてないじゃない
父  ホントだね
娘  だから、それは。省吾さんが他の人に
   取られちゃうかもしれないから。何が
   起きるかわかんないんだから
母  省吾さんは、娘をどうお思いなんでし
   ょうか?
省吾 そうですね、かわいらしいと思ってお
   ります
娘  省吾さんは、どうしたら結婚してくれ
   るの?
省吾 さっきの条件をちゃんと守ったら、か
   な。まだまだ若いんだから、気持ちな
   んてどう変わるか、わからないよ
娘  若いから、一途でいられるかもしれな
   いんだよ? スレちゃった私になん
   て、私、なりたくない
省吾 それは生き急いでるよ、大人になって
   も素直な人はいくらでもいると思う、
   (父と母の方へ身を向きなおして)…
   …まあ僕もまだ若輩者でわからない
   ですが
母  思っていたよりまともな方で安心し
   ました
父  ホントだね
省吾 それで、呼ばれた用事はなんだったん
   でしょうか?
母  ……ただお会いしたかっただけです
娘  さっき言ってたのとちょっと違う!
省吾 ちょっと都合で外に出ていたんで、も
   う戻らないといけないんです
娘  駐車場まで送っていくよ
省吾 あ、そういえば、シュークリーム。お
   好きだっておうかがしていたので、持
   ってきたんです。おすそ分けなんです
   が、よかったら召しあがってください
母  あら、あらあら……
父  そんなそんな
娘  じゃあちょっと送ってくるね!
省吾 それでは、失礼しました

 娘、省吾、下手へ退場

父  いいんじゃないか?
母  そうねえ、あ、仕事何してるか聞きそ
   びれたわ
父  後で娘に聞こう
母  それにしても……結婚だなんて
父  まあ僕たちも早くて、反対されたよね
母  同じ血が流れてるのねえ……
父  僕はお義父さんのように、殴ったりは
   しないからね
母  そうねえ、じゃあ手を出すとしたら私
   かしら
父  いや、いやいや……そうなってほしく
   はないけれども

 娘、下手から、戻ってくる。椅子に座る。

娘  どう? 省吾さん、いい人でしょ?
母  ご職業は? 何をされているの?
娘  調理師。マルノってイタリアン、聞
   いたことない? うちからちょっと
   南にある……そこで働いてるって
母  料理ができる男はいいわね
父  ……ごめんて……
母  あら、何も言ってないわよ
チ  え気のせい?
母  気のせいではないわね
父  えっ
母  さっきから言ってる、他の人に取られ
   ちゃうかもっていう心配は一体何な
   の?
娘  この間、女の人と仲良さそうに駅前歩
   いているの見つけて
父  あらら彼女さんがいるんだね
母  あんた、遊ばれてない?
娘  それで、今さっき確認したら妹さん
   だって。パティシエでシュークリーム
   作ってるらしい
母  それでこのシュークリーム……
娘  たぶんね
父  あ、おいしいよこれ
母  もう食べてるの?
娘  ん! ホントだおいしい!
母  ……ほんと、おいしいわ

 (暗転)

 居間。省吾、父と母

省吾 先日は突然お伺いして、すみませんで
   した。
母  呼んですぐ来るのは、よっぽど好きか
   軽いかのどちらかですもんね
父  ちょっと、お母さん
母  あら、本当のことでしょう?
省吾 彼女とは歳が離れているのもそうで
   すが、目の前のことに一直線という感
   じがして、危なくて、心配で
父  昔っからそうでして
省吾 そうなんですか……
母  私たち二人だけでも、話をしたんです
   がね、結婚してもいいんじゃないかっ
   て
省吾 え!
父  ただ、省吾さんが言うことも最もです。
   それでこれは僕の……ただの勘なん
   だけど、すぐに結婚できない理由って
   省吾さん側にあるんじゃないかって
母  私はそうは思わなかったんですけど
省吾 ……
父  娘から伺いました。一八歳で調理師に
   なられたと。もしかしてだけど、将来
   のことで結婚を保留にしているんじ
   ゃないかって……
省吾 ……
母  将来のことって言ったって、いつかは
   結婚も考えるでしょう?
父  省吾さん、この先、自分の店を持ちた
   い、みたいなことを考えてはないか
   い?
省吾 ……夢はもちろんあります。
父  それは、娘には伝えてありますか?
省吾 まだ……
父  じゃあ僕たちが先に聞くのもね
母  あら、いいじゃないですか
父  あの子は嫌がるだろう
母  そうかしら、教えなければいいじゃな
   いですか
父  お母さんはすぐに顔にでるから
母  ……隠し事できないって良いことで
   しょう?
省吾 ……あの、もしかして、いま、喧嘩さ
   れて……ますか?
父  ちょっとだけ、ね(母の顔を見る)
母  ……
省吾 彼女にはちゃんと伝えます、すぐに結
   婚できない理由。あと、順番がなんだ
   かめちゃくちゃですが、……娘さんを
   僕に下さい!
母  (父の方を見て少し抑えた小声で)…
   …やっぱり、ちょっと、一発殴りたく
   なってきた
父  (小声っぽく)えっなんで⁉
母  (小声っぽく)娘が、もう嫁に行くな
   んて……、寂しいからよ……
父  (小声っぽく)……んー、殴るのはよ
   くないよ、デコピンくらいに、したら
   どう?
母  (省吾の視線に気が付く)……あ、あ
   ら、聞こえてました? 冗談ですよ。
   本気になさらず
省吾 ははは……

(暗転)
 居間。娘と省吾

娘  今日はお父さんもお母さんもデパー
   ト行ってるの! 二人っきりだね!
省吾 ……
娘  私といるの……うれしくない?
省吾 親御さんがいないのに、男性を家にあ
   げちゃいけないよ……あがっている
   僕が言ってもあれだけど
娘  省吾さんといられるなら、他に誰がい
   てもいなくても、気にならないよ!
省吾 …君は周りの目をもっと気にした方
   がいい。自分が自分が、で、人の気持
   ちを考えられないのか、と思われてし
   まうよ。
娘  私は、自分が我慢して悲しい思いをす
   るくらいだったら、自分を押し通して
   でも幸せになりたいだけだよ
省吾 ……僕の気持ちは、考えてくれた?
娘  省吾さんのこれからのこと? もち
   ろん考えたよ。再来月の妹さんの結婚
   式が無事終わるまで、自分の夢と向き
   合うのをやめてたんでしょ
省吾 妹は両親の忘れ形見だから……
娘  それも聞いたよ! で、結局、省吾さ
   んはどうありたいの?
省吾 君と……今は付き合えない。僕は……
   海外の大学に留学したいんだ
娘  ⁉ それは聞いてない!
省吾 うん。……伝えるのはのは今の今まで
   悩んでた。
娘  自分も結婚したいって! 言ってた
   じゃん! 妹を見てると幸せそうだ
   って!
省吾 ……僕たちさ、他人に、戻らない……
   かい? よくよく、本当によく考えた
   んだけど、君と一緒にいる覚悟ができ
   ないんだ

 (間)

娘  わたしのこと、遊んでたの?
省吾 そう思われても仕方がないと思う
娘  覚悟なんて後で付いてくる、……省吾
   さんは結局、私のことを恋愛対象とし
   て見れないから、いろいろ言い訳して
   るだけじゃないの?
省吾 付き合うことや結婚がすべてじゃな
   いよ。…君は 真っすぐすぎる。そし
   て結果が出ないと癇癪(かんしゃく)
   を起こす。たしかに恋愛対象としては
   見れないくらい子供だと思う
娘  だったら、出会ったときから優しくし
   ないでよ……好きな気持ちは止めら
   れないのに!
省吾 ……でも同時に君はとっても、魅力的
   だとも思ってる。男性に絡まれて時も、
   穏便に済ませようと、気を払って困っ
   ていたんだもんね
娘  私のこと子ども扱いしたり褒めたり
   ……省吾さん一体何なの! さっき
   から!
省吾 僕は……僕は女性と、親しくなること
   は……初めてなんだ! だから……
   どうやって相手を扱えばいいか、正直
   わからないんだ

 (間)

娘  ……。ふ……ふふ
省吾 僕、おかしいこと言った?
娘  私も……男性と親しくなるのは初め
   てだよ。好きな人はいたけど何も起き
   なかったし。お互い初めてで、どう向
   き合えばわかんないだけだったんだ
   ね、なーんだ
省吾 ……一緒に居れば緊張もするよ
娘  省吾さん、もっと私をたよっていい
   よ? 責任取れなんて言ってない。私
   と一緒にいたいって、それだけでも思
   ってくれないの?
省吾 僕で……いいの? 本当に?
娘  省吾さんがいいの!
省吾 どうして、そんなに好きでいてくれる
   んだい?
娘  ガラの悪い人を追い払ってくれた時、
   省吾さんホントはちょっとビビって
   たでしょ? でも、助けてくれた。そ
   の時、私も守ってあげたいなって思っ
   たの
省吾 ……僕は、君のことが全然わかってな
   かったんだね。
娘  男の人ってそういうこと言われたら、
   引くかと思って、だまってたんだ
省吾 いやむしろ……いますごくドキドキ
   してる
娘  え⁉

 (暗中)

省吾  本日はご来場くださり、ありがとう
    ございます。この日を迎えるまでの
    準備期間、今まで一緒に過ごしてき
    た日々を思い返し、今はホッと、安
   心しております。妹の門出を一緒にお
   祝いしてくださる方がこんなにもい
   てくださることを誇らしく思います。
   優しい方々との出会いに感謝です。ど
   うぞこれからも彼らを温かく見守っ
   ていただければ幸いです。
   ……どうか幸せに、なるんだよ。

 (明転)
 居間。
 立っている省吾。
 椅子に座っている娘、父、母

省吾 ……どうですか?
母  まあ、二十五歳で1人で考えたなら十
   分な挨拶かしら?
父  もうちょっと長いといいよね、あと内
   容がなんとなく薄いかも
娘  ホントに私たちも参加していいの?
省吾 僕たちも将来経験するんだから、勉強
   も兼ねて、ね。
娘  たのしみ~!
母  ああ、美容室! 行かなきゃだわ!
父  ネクタイ……ネクタイ……

 (暗幕)



********

提出後、参加者に朗読してもらったんだけど。15分から20分のあいだくらい。よみおわるまでにかかった時間が。けっこうかかるもんだよね。

もし余裕ありましたら、ご意見ご感想をば!
ここまで読んでくれて、ありがとうね(*^^)v

戯曲はもう一作、のせられろうなのがあるから。それもまたいつか載せられたらいいな!



ああ、23時22分だっ! もう寝たい。
明日の準備して寝ます。

じゃあおやすみ!

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