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#115:「書くこと」から振り返る「楽しさ」の再構築

文章を書く楽しみを見つけることができたのはいつからだっただろうか。この問いに対する僕の答えは明確にあって、それは、高校1年生の時の、交換留学を賭けた課題作文だった。


運動音痴で部活に所属することもできず音楽に浸る生活を送る中学生活。Avril Lavigneの"Let Go"やSimple Planの"Still Not Getting Any"、(邦楽だけど)ELLEGARDENの"Riot on the Grill"に魅了され、海外への憧れを高めていた。

ただ、部活にも所属せずヘッドホンをして音楽を聴いてばかりの日々はいわゆる「陰キャ」の王道。友人が多いとも言えず、好きだった子に告白して完全に玉砕したりしていた。

当時山田詠美さんの『僕は勉強ができない』や金原ひとみさんの『蛇にピアス』がすごく好きだったことも、「海外文化を愛する陰キャ」具合を加速させていたとも思える。

僕はそんな捻くれた陰キャだったわけだが、もう一人、交換留学の候補として手を上げたのは、色黒で爽やかなテニス部、友人も多く運動神経も良い、さらには成績も僕より良いイケメンだった。

半分引きこもりで運動音痴、友だちもそんなに多くなく成績も微妙なブ男v.s.アクティブで運動神経◎、多くの友人に恵まれた好成績イケメン。

これはあかん、勝ち目がない」と即座に思った。あまり多くない友人にも「応援はするけどその戦いはさすがに無理があるんちゃうか」と同情される始末。出だしは暗雲が立ち込めてしかいなかった。


僕は課題である作文と、英語での面談の準備に全エネルギーを注ぎ込むことにした。人生ではじめて作文を前にして構成を考え、一つ一つの単語に対してよりフィットするものがある可能性を検討した。

ロジカルさを維持しつつも、「海外に行きたい」気持ちを、その情熱を、どう感情的に描き、どう読み手を揺さぶるか。そのことについてとにかく考える日々を過ごした。

もう20年も前のことなので詳細を覚えてはいないが、タイトルを『野心の塊』としたことだけは明確に覚えている。いくつかの段落で、わざと冷静な文体を崩して情熱的に表現する、みたいな手段を使ったことも覚えている。

英語での面談の準備も念入りだった。その交換留学についての気持ちは事前に英作文し、全て暗唱していた。その時もいくつか"フック"になる単語はこれだと考えていたものもあった。

これらのことが奇跡的に全てうまくいき、僕は先生たちから大絶賛を受けることになった。作文はすごく気持ちがこもっていて感動したと褒められ、英語での面談もすごく良い受け答えだったと褒められた。"フック"になると選んでいた単語は、「あの単語が出てきたのがすごくよかった」と真正面から褒められた。

そして、交換留学生として選ばれたのは僕だった。ニューヨークの少し田舎で過ごした2週間は、人生の大きな宝物となった。またどこかでこの経験について書ければなと考える。


元々文章を書くことがとても苦手で読書感想文や作文課題(特に「将来の夢」)をうまく書けた試しがなかったから、作文課題がとてもうまくいったことに自分自身で驚くとともに、色んな発見をしていた。

単語をどのように選択するか、使用可能な助詞が複数ある時にはどのようにニュアンスが変わるか、句読点を打つ箇所が複数ある場合にはどのようにリズムや印象が変わるか。

こういったことを一つ一つ念入りに検討することで、文章は自分の気持ちを一気に増幅させて伝える手段にもなるし、雰囲気を一変させる手段にもなる。本来であれば読みづらい長文も使用タイミングによっては大きく効果を発揮する場合もあるし、ほんの数文字の短文もタイトに引き締める効果を持つことがある。

こういったことを実感し「文章を書くことって楽しいな」と思えたのはこの時が初めてだった。


今回のエピソードでの気づき①

歌の巧拙というのは天性の才能によって決まるものと考えていたが、オーディション番組やYoutubeにあるボーカルレッスン動画を見ることで印象が大きく変わったことを思い出す。

一流の歌手は一音一音の発声も本当に細かく選び抜いているし、歌詞も内容から音韻までこだわっている、そしてパフォーマンスする時の表情も同様だ。思った以上にたくさんの細かな選択の積み重ねの先に感動的な歌があると知った。

非常に過酷なレースであるスパルタンレースでも、上位のエリート選手たちはただただ体力的に優れた人なのだと考えていたが、障害物を超えるときの動きについて、体力を削られないように本当に細かくシミュレーションしていることを知った。

自分のあまり知らないこと/できないことに関してよくできる人を見ると「才能」とざっくり片付けてしまいそうになるが、実はその根底には本当に多くの細かい分析と細かい調整があることを忘れてはいけない、ということを今回のエピソードで改めて思い直した。

僕自身についても、文章を書くことが楽しいと感じているし文章によって気持ちを伝えることが相対的に得意とも思っているが、文章をフィーリングだけでサラッと書いてしまうことは稀で、一度書いた後に何度も読み直す。

何度も読み直して、リズムの悪い文章は調整するし、より良い単語がフィットするのではないか、より適切な助詞、接続助詞を使用したほうがよいのではないか、と検討する。

これらの細かい調整がワークして「良い文章ですね」と言ってもらえることが楽しいのだと、そしてそれが「文章を書くことが楽しい」なのだと気づいた。


今回のエピソードでの気づき②

また、この高校一年生の時の課題への向き合い方は、我ながら仕事に通じる部分があるように思う。

長年の労働による疲労からか、チャレンジングな仕事に対して前向きになれない状態が続いているが、この時の自分のように、その時にできる全力を尽くすことがとても大切だと、書いていて思えた。

難しいなと思える仕事にあたった時はこの体験を思い出していきたい。


「楽しいこと」を思い出すと、実は意外と細かいことにちゃんと取り組んでいるのではないだろうか。ご自身の「楽しいこと」を振り返ってみて、その中の「細かいこと」に焦点を当てると、意外と新しい自分や知らない才能についての発見があるかもしれない。

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