期間限定の姉妹
「わたし、もう小学生だよ!」
「ちがうちがう、まだ3月だから。4月になったら小学生料金ね」
サンリオピューロランドのレストランの入り口で、姪っ子とそんなやり取りをした。「もう小学生だよ!」と主張する姪の可愛らしい自我を満たしてやったほうが良かったのかもしれないけれど、未就学児と小学生とでは70分制ビュッフェの値段がえらく違うのだから、ここはおとなしく未就学児ということでお願いしたい。ただでさえピューロランドは、あちらでも課金、こちらでも課金……と、課金スポットが多いのだ。
3月の春休み、初めて姪とふたりきりで外出をした。
レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』に感銘を受けている身としては、海のほとりや森の中で子どもと一緒に五感を研ぎ澄ませ……といった時間にもちろん憧れがある訳だけれども、初の外出でそんな慣れないことをして何かあったら恐ろしい。ということで、どう頑張っても自然の驚異に脅かされそうになく、怪しい人間も少なそうな屋内型のエンタメ施設、サンリオピューロランドを目的地とした。電車で行けるし。
はじめての外出を屋内型施設にしたのは大正解で、小雨の降る寒い日だったけれども、姪と私は午前中から閉館時間までずっと、ピューロランドの中で楽しく過ごした。想定外だったのは「クロミ」もしくは「シナモン」のコスプレをしたかわちいJK、JDがあまりにも多く館内のあらゆる箇所が長蛇の列……という点だったけれど、幸いにも長蛇の列の起点はSNS映えフォトスポットであり、トランポリンではない。「トランポリンやりたい!」という主張が2時間待ちの列によって折られることもなく、10分並んでから楽しそうにピョンピョン飛ぶ姪の姿を見て私は安堵した。
──
「まいちゃんは私のおねえちゃんだよね?」
「違うよ、おばさんだよ」
「おばさんじゃない!おねえちゃん!」
待ち時間や移動時間、姪っ子は何度も私が「おねえちゃん」であることを確認してくる。どうやら一人っ子の彼女にとって「おねえちゃん」という言葉の持つ響きは格別であるらしい。「そうだね、まぁお姉ちゃん……みたいなもんだね」と私は折れながら、なにかクソでかいものが満たされていくような感覚になった。あぁそうだ。私もずっと、妹が欲しかったのだ。
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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。
