ご自愛の用法用量
33歳になった。
かつて嘲笑しながら読んでいた東京タラレバ娘の主人公の年齢に追いついたらしい。子どもの頃は「20代のうちに結婚するし、 子どもは3人がいいし……」とか当然のように思い描いていたのに、まさか33歳にして再び独身になり、ふらふらと東京をサバイブしているとは思いもしなかった。いや別に独身が悪いとか、離婚が恥だとかはこれっぽっちも思っていない。タラレバ3人娘たちのように自己卑下する気持ちなんて一切ございません!と誇り高く思いながらも、分厚い人生経験は身体にしっかり刻まれていく。老けた。
笑うときなんかに目尻がクシャっとなるのは良いとして、びっくりしてしまうのはマスクですっかり油断をしている顔の下半身。表情筋を動かす機会が減った故か、すっかり重力に負けてだらんとしている。同世代の友人はみんな口を揃えて「出産すると体型変わるよ〜」と言うけれど、こちとら少子化対策にも子育て事業にも貢献しないまま顔も身体もだらんとしてきている。
「子どもお風呂入れてると、化粧水すら塗る暇ないから!カッサカサなるで!」と嘆いていた友人の言葉を思い出しながら、エイジングケアだなんて書かれた化粧水を執拗に染み込ませるだけの時間的余裕はある自分に、心許なくなってくる。というか少し前まで、「ありのままの年齢を受け入れて……」とかほざいていたはずなのに、いざ変化が顕著になればこうして愚かな抵抗を始めてしまう。高い理想に下衆な現実。私はいつもそうなのだ。
いや別に、33歳1本目に書きたいのはアンチエイジングの話じゃなかったわ。お誕生月らしく今年の目標。33歳は「運命に抗う」ことにしたいのだ。そりゃもう全力で。というのもここしばらく、運命に従ってばかりで、その結果、すっかり痩せ細ってしまったものでして……。
──
私にとってのどうしようもない運命の一つは、365日中、360日は体調芳しくない我が身体。もう、この身体に生まれてきてしまった因縁だと半ば諦め、仕事の数を絞り、人に会う頻度も減らして、とにかく身体の声を聞きながら細々とやってきた。それは間違いだったとは思わない。さらに、そうした姿勢を全肯定してくれるように、世を席巻してきたご自愛ブーム。リトリート。メディテーション。セルフプレジャー。有り難いことに、自らを労ることはもはや、怠けることではなくなったらしい。そんな世の中も、間違いだとは思わない。
さらに、追い打ちを掛けるように
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暮らしや営みの中で零れ落ちそうなことを掬い上げたり、心や脳に浮かんだ閃きを忘れないよう書き留めたりする、思考や思想の直売所のようなものです。
新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。
