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『ブゴニア』を観て考えた。「信じること」と「疑うこと」の難しさ

少し前になりますが、今年2月に『ブゴニア』を映画館で観ました。

ヨルゴス・ランティモス監督作品ということで公開前から気になっていた作品です。

観終わった直後は正直、

「面白かった」

というよりも、

「とんでもない映画を観たな……」

という感想でした。

でも不思議なことに、その後も何度もこの作品を思い出します。

数か月経った今でもこうして記事を書いているのだから、きっと私の中に何かを残した映画だったのでしょう。


■ ネタバレなしのあらすじ

物語の中心にいるのは、陰謀論を信じる二人の男。

彼らは巨大企業のCEOである女性を、

「彼女は人類を支配しようとしている宇宙人だ」

と信じ込み、誘拐してしまいます。

設定だけ聞くとかなり突飛です。

しかし映画を観ていると、不思議と笑えなくなってくる。

なぜなら彼らなりに「そう信じる理由」があるからです。

そして観客である私たちも、

「本当に彼らは完全に間違っているのか?」

という気持ちに少しずつ引き込まれていきます。


■ ヨルゴス・ランティモス作品らしい居心地の悪さ

『女王陛下のお気に入り』や『哀れなるものたち』が好きな方なら分かると思いますが、

ヨルゴス・ランティモス監督の作品には独特の違和感があります。

会話のテンポ。

人物の表情。

少しズレた価値観。

どこか現実のようで現実ではない世界。

『ブゴニア』もまさにそんな作品でした。

ずっと不穏な空気が流れていて、

観客に安心する時間を与えてくれません。

その居心地の悪さこそが、この映画の魅力なのだと思います。


■ 情報が多すぎる時代を生きている

映画を観ながら何度も思ったことがあります。

それは、

「今の時代は本当に情報が多い」

ということです。

SNSを開けば、

専門家の意見もある。

一般人の意見もある。

陰謀論もある。

正しい情報もある。

間違った情報もある。

しかもそれらは同じような形で流れてきます。

だからこそ、

自分が信じたいものだけを信じることも簡単にできてしまう。

『ブゴニア』に登場する人物たちは極端かもしれません。

でも、その構造自体は決して他人事ではないように感じました。


■ FPとして感じたこと

FPの仕事をしていると、

お金に関する情報でも同じことが起きていると感じます。

「絶対に儲かる投資」

「今すぐ買うべき株」

「これだけで老後は安心」

そんな情報は毎日のように流れてきます。

もちろん参考になる情報もあります。

でも最終的に判断するのは自分です。

誰かの意見をそのまま信じるのではなく、

自分で考える。

『ブゴニア』はそんな当たり前のことを改めて思い出させてくれる映画でした。


※ここから先はネタバレを含みます

未鑑賞の方はご注意ください。


■ 本当に異常なのは誰だったのか

映画を観終わったあと、

私が最初に考えたのは、

「結局、誰が正しかったんだろう」

ということでした。

陰謀論を信じる男たちは明らかに危険です。

しかし映画は彼らを単純な悪役として描いていません。

彼らなりの不安や怒りがあり、

社会への不信感がある。

そしてその感情が暴走した結果として行動してしまう。

それどころか一見悪役で荒唐無稽に思えていた彼らの考えが真実でした。

一方で、

社会的に成功した側の人間たちも決して完璧ではありません。

巨大企業。

権力。

資本。

そこには冷酷さや傲慢さも見え隠れします。

だから観客は誰か一人を悪者にできない。

その曖昧さが、この映画の怖さでもあり魅力でもありました。


■ 資本主義の冷徹さ

この映画を観ていて印象的だったのは、

資本主義社会の厳しさでした。

どれだけ成果を出しても、

どれだけ優秀でも、

ある日突然立場が変わる。

トップが変われば組織も変わる。

昨日まで価値があったものが、

今日は不要になる。

映画の中で描かれる出来事は極端ですが、

その根底にある感覚はとても現代的でした。

終身雇用が当たり前ではない今、

誰にとっても他人事ではない話だと思います。


■ AIという新しい脅威

そして今の時代を語る上で欠かせないのがAIです。

映画の中で直接AIが主役になるわけではありません。

しかし作品全体からは、

「時代についていける人と、取り残される人」

というテーマを強く感じました。

AIによって仕事が変わる。

求められる能力も変わる。

これから先、巨大な資本主義社会の中で

私たちは何度も変化を求められるはずです。

だからこそ、

この映画が描いていた不安は非常にリアルでした。


■ 多様性の時代に生きるということ

映画の中では、

変化に適応している人と、

過去の価値観のまま生きている人の違いも印象的でした。

昔の成功体験。

昔の常識。

昔のルール。

それらが通用しなくなった時代。

今は働き方も生き方も、

ひとつの正解があるわけではありません。

多様性という言葉が広がったことで、

選択肢は増えました。

でもその分、

自分で考え、自分で選ぶ責任も増えた気がします。


■ 数か月経っても忘れられない理由

正直に言うと、

『ウィキッド』のような感動はありません。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のような爽快感もありません。

でも、

数か月経った今でもこうして思い出します。

なぜなら、

この映画は答えをくれないからです。

答えをくれない代わりに、

問いを残していく。

何を信じるのか。

何を疑うのか。

変わり続ける社会の中でどう生きるのか。

その問いは映画館を出たあとも残り続けました。

だから私は、

『ブゴニア』を「大好きな映画」とは言わないかもしれません。

でも、

「観てよかった映画」

であることは間違いありません。

そしてきっと数年後も、

ふとこの映画のことを思い出す気がしています。

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