焼き殺しても夢に出てきて、肛門から宇宙人が出てきて、不安のおすそわけされた話【ヨイとトックのホラー部室 #02】
シネマ先生とトックの映画漫談スピンオフ。
先生は出てこない。トックの大学の先輩・九条 宵(ヨイ)と、トックの2人が、「やる気のない映画サークル」の部室で、ホラー映画をゆるーくだべる場所。
今日はこの3本。
「エルム街の悪夢」
「ドリームキャッチャー」
「イレイザーヘッド」
先輩と後輩だから、かしこまらない。
本音と感覚で語る。
知識は後からついてくる。
どうぞ、部室を覗いていってください。
キャラクター紹介

最近、変な夢見るんすよ

(雨音。ザーッと、途切れなく降っている)
(👻 ヨイ、ソファの上で、古い映画雑誌をめくっている)
🎤 トック:ちっす。
👻 ヨイ:お。
🎤 トック:雨、ひどくないすか。
👻 ヨイ:ひどい。駅からここまでで、靴の中まで濡れた。
🎤 トック:俺、授業終わったら傘パクられてて走ってきました。
👻 ヨイ:ビニ傘って、世界で一番「共有物」扱いされてるよね。
🎤 トック:いやマジで。コンビニ出た瞬間から、所有権あやふやになる。
👻 ヨイ:ホラー映画の呪いより回避できない。
🎤 トック:日本で一番成功してるボディスナッチャー、それかもしれないっす。
(🎤 トック、DVDが入った袋を床に置き、ソファの端に座る)
🎤 トック:ヨイせん、何読んでるんすか。
👻 ヨイ:『スクリーン』の1993年8月号。誰かが本棚に置いてったやつ。
🎤 トック:1993年。めっちゃ昔っすね。
👻 ヨイ:1993年。ジュラシック・パークの特集でさ、スピルバーグがずーっと喋ってんの。楽しい。
🎤 トック:……それ、今読む意味あります?
👻 ヨイ:ある。昔の雑誌、読んでる方が安心するの、なんか。
🎤 トック:分かんないっす、それ。
👻 ヨイ:分かんなくていい。
(短い沈黙。雨音が強くなる)
🎤 トック:あのー、ヨイせん。
👻 ヨイ:ん。
🎤 トック:前回、ヨイせんに試せって言われたじゃないすか。
👻 ヨイ:なんのこと。
🎤 トック:ボディスナッチャーで、「眠る前に、部屋を見回して、この部屋全部、本当にさっきまでと同じかなって一瞬疑え」ってやつ。
👻 ヨイ:ああ、言った。
🎤 トック:あれ、マジでやってんすよ、俺。
👻 ヨイ:律儀じゃん。
🎤 トック:そしたら、最近、変な夢見るんすよ。
👻 ヨイ:どんな。
🎤 トック:自分の部屋にいる夢なんすけど、自分が、寝てる自分を、天井から見下ろしてる夢。
👻 ヨイ:うわ。
🎤 トック:で、寝てる方の俺、めっちゃうなされてて、それを上から俺が見てる。
👻 ヨイ:それ、いわゆる明晰夢系じゃない?
🎤 トック:分かんないすけど、すごいリアルで。
👻 ヨイ:いいね、トック。ホラー適性上がってきてるじゃん。
🎤 トック:上がりたくねー。
👻 ヨイ:(笑)
🎤 トック:で、それもあって、今日持ってきた3本、夢の映画にしたんすよ。
👻 ヨイ:見せて。
(🎤 トック、DVDを3枚、ローテーブルに並べる)
🎤 トック:1本目、『エルム街の悪夢』。
👻 ヨイ:うん。
🎤 トック:2本目、『ドリームキャッチャー』。
👻 ヨイ:……。
🎤 トック:3本目、『イレイザーヘッド』。
👻 ヨイ:……いいラインナップ。でもトック、この3本、全部「夢」で括ったの、たぶんどっかで後悔するよ。
🎤 トック:もう後悔してます。
👻 ヨイ:ね。同じ「夢」でも、入ってるやつが違いすぎるじゃん。1本目は、分かる。「夢に殺人鬼が出る話」。2本目は……トック、これ、夢の話だと思って借りてきた?
🎤 トック:思って借りてきました。だってドリームキャッチャーって夢のお守りでしょ。なんかジャケも真面目に怖そうな、しっかりしてそうじゃないすか。キング原作だし。
👻 ヨイ:その雑な選択は2本目のとこで説教するとして。3本目のリンチにいたっては、夢を撮ってるんじゃなくて、リンチの頭の中が、そのまま出てるだけ。
🎤 トック:でも夢じゃないすか。
👻 ヨイ:夢というか、悪夢。というか、リンチ。
🎤 トック:カテゴリとして「リンチ」があるんすか。
👻 ヨイ:ある。観たら分かる。
(👻 ヨイ、雑誌を閉じる)
👻 ヨイ:じゃあ、1本目から。
焼いてダメなら、取っちゃいな

👻 ヨイ:じゃあまず1本目。『エルム街の悪夢』、1984年。監督、ウェス・クレイヴン。
🎤 トック:これ、ヨイせん何回観てます?
👻 ヨイ:5回、たぶん。1作目だけね。続編は1回ずつしか観てない。
🎤 トック:俺、今回ちゃんと観たんですけど、めっちゃ怖かったっす。しかも、めっちゃ若いジョニー・デップが出てる。
👻 ヨイ:そう、デビュー作。ジョニー・デップ、まだスレてない。ほんとに高校生にしか見えない。
🎤 トック:しかもあれ、めっちゃハデに死にますよね。
👻 ヨイ:ベッドに吸い込まれて、天井まで血がドバドバ出るやつ。
🎤 トック:血の量多すぎでしょ。映画史上の殺され方ランキング、絶対上位に入るやつ。
👻 ヨイ:あれね、特撮としては、部屋の天地をひっくり返して撮ってるの。ベッドの穴から血が「上に」噴き出してるように見えるけど、実は下に落ちてるだけ。
🎤 トック:えー。
👻 ヨイ:セットごと回転させてる。80年代の、札束で殴るタイプのアナログ特撮。
🎤 トック:それ聞くと、もう一回観たくなるやつっす。
👻 ヨイ:観て。「あ、天地ひっくり返ってる」って分かると、別の映画に見える。
👻 ヨイ:一応あらすじおさらいしとく?
🎤 トック:お願いします。
👻 ヨイ:舞台は、アメリカの普通の住宅街、エルム街。高校生のナンシーと、友達のティナが、同じ悪夢を見る。鉄の爪を装着した、顔が焼けただれた男が出てくる夢。
🎤 トック:フレディっすね。
👻 ヨイ:最初、名前は出てこない。ただの「夢に出てくる男」。で、ティナが夢の中でその男に殺される。その瞬間、現実のベッドの上でもティナが死んでる。
🎤 トック:夢で殺されると、現実でも死ぬ。
👻 ヨイ:アイデアが凄いよね。このルールひとつで、この映画、成立してる。
🎤 トック:……ヨイせん、一個、言いたいんすよ。
👻 ヨイ:なになに。どうぞ。
🎤 トック:なんで、フレディ、殺しちゃったんすか。
👻 ヨイ:(少し笑う)出たね、いい質問。
🎤 トック:だって、殺したから、夢の中で復活して無双されるようになったんすよね? そのまま生かしとけば、ただのやばいオヤジで済んだじゃないすか。
👻 ヨイ:(笑いながら)マジ、そうなるよね、素直に観ると。
🎤 トック:だって、原因、殺したことじゃないすか。
👻 ヨイ:じゃあ、トックさ、生きてる時のフレディが何者だったか、覚えてる?
🎤 トック:連続児童殺害事件の犯人、でしたよね。
👻 ヨイ:そう。子供を、何人も、殺してた。
🎤 トック:それはクソだけど。
👻 ヨイ:でも、逮捕されたのに、司法では釈放されるんだよ。「捜索令状の署名ミス」で証拠が無効になったって理由で。
🎤 トック:え、それで無罪放免?
👻 ヨイ:そう。で、親たちは「法じゃ止められない」ってなって、フレディをボイラー室で焼き殺す。
🎤 トック:完全に私刑じゃないっすか。
👻 ヨイ:そう。だから『エルム街』って、「夢の殺人鬼」の話である前に、「司法が取り逃がした怪物」の話でもあるんだよ。で、フレディは普通に街に戻ってくる。あの赤と緑のセーター着て、爪の手袋持ったまま。
🎤 トック:……それは、やばいっすね。
👻 ヨイ:でしょ?親たちの立場で考えてみてよ。自分の子供を殺した犯人が、手続きの不備、それだけで、無罪になって、また街を歩いてる。またやる。もう一回やる。それは、ほぼ確実に、そうなる。
🎤 トック:……。
👻 ヨイ:じゃあ、親たち、どうすればよかったと思う?
🎤 トック:……。
(🎤 トック、考え込む)
🎤 トック:……分かんないっす。
👻 ヨイ:(薄く笑う)教えてあげよっか。
🎤 トック:お願いします。
👻 ヨイ:殺すしかなかった、って気持ちは分かるんだよ。だって、またやるから。絶対。でもさ、「殺す」って、一番最悪な形で神話化しちゃう時あるんだよね。だから、もうヤツが殺したくなくなるようにさ、欲望の元を断てばいい。
👻 ヨイ:ジョッキン!取っちゃえば、よかったんだよ。
🎤 トック:……は?
👻 ヨイ:去勢。
(🎤 トック、思わず自分の股間を押さえる)
🎤 トック:うん、おかしい。この人おかしい。
👻 ヨイ:うるさいよ(笑う)。でもさ、そうじゃん。あいつ、ロリコンの性犯罪者だよ。劇中で本人が言ってる、「子供、特に小さい女の子が大好き」って。あれね、ウェス・クレイヴンの元の脚本だと、フレディは児童性的虐待者って設定だったの。
🎤 トック:えー!そっち系っすか。
👻 ヨイ:公開当時、カリフォルニアで児童性犯罪のニュースが続いてて、便乗してると言われるのを避けるために、「児童殺人者」に変更された。
🎤 トック:じゃあ、元設定の方が、もっと、生々しい。
👻 ヨイ:生々しい。フレンドリーなおっさんの顔して、女の敵。親戚のオッサンに紛れてたら、一番やばいやつ。
🎤 トック:……あの色のセーター着てる親戚いやっすわ。
👻 ヨイ:(笑う)そこじゃないでしょ。
🎤 トック:そうっすね。確かに最低っす。最低なのに殺せない。
👻 ヨイ:(笑いながら)だから、親たちがね、焼き殺すんじゃなくて、まず、取れと。取って、そのまま刑務所に入れとけ。フレディも夢魔と契約しようがなくなる。
🎤 トック:そんなデッドボールぶつけたピッチャーの帽子みたいなノリで言わないでほしいっす。でもそれしかないような気が……。
👻 ヨイ:でしょ?本気と半分冗談。まあ、本気寄り。
🎤 トック:いつも斜めから来るっすけど、今のは、真後ろから来たっす。
👻 ヨイ:(笑う)
👻 ヨイ:でね、このフレディの「性犯罪者ベース」って設定が、実はシリーズ全体を支えてるの。
🎤 トック:どういうことっすか。
👻 ヨイ:フレディって、犠牲者を殺す時、ただ爪で切るんじゃないの。相手のコンプレックスを、使ってくる。続編からどんどんそうなってくる。
🎤 トック:嫌な奴だ。
👻 ヨイ:うん。太ってることを気にしてる子には食べ物の悪夢、薬物依存の過去がある子には注射器の悪夢、舞台俳優志望の子にはテレビに閉じ込める殺し方。相手の心の、柔らかい場所を狙って、そこから攻めてくる。
🎤 トック:それ、ただの殺人鬼じゃないっすね。
👻 ヨイ:ただの殺人鬼じゃない。性犯罪者のメンタリティなの。相手の支配、屈辱、恐怖の快楽化。夢の自由度を使って、それができちゃう。
🎤 トック:あー。
👻 ヨイ:しかも、何かしら工夫して殺さないと、気が済まないの、この人。その「工夫」が、続編に行くにつれて、どんどんエスカレートする。トック、この1作目の名物シーン、他に覚えてる?
🎤 トック:お風呂のシーンっすか。画が凄いっすよね。
👻 ヨイ:それ。ナンシーが泡風呂に入ってて、泡でお腹のへんが隠れてる。そこから、ゆーっくり、鉄の爪が、ぬっと出てくる。
🎤 トック:どこに隠れてんだって。あれ、引きずり込まれはするんすけど、結局殺されはしなかったっすよね。
👻 ヨイ:そう、殺されない。このシーンはね、1作目の段階では、「夢の自由度、ここまでいけますよ」っていう予告編みたいなものなの。
🎤 トック:あれで予告編すか。もっと凄くなる?
👻 ヨイ:うん。3作目と4作目で、完全に暴走するの。
🎤 トック:どういうことすか。
👻 ヨイ:4作目、『ドリームマスター』。監督レニー・ハーリン。後に『ダイ・ハード2』撮る人。この人が、夢のシーンに、SFXを詰め込めるだけ詰め込んで、ほぼ「ホラーじゃなくてSFXの見本市」って感じになる。
🎤 トック:どんなんすか。聞きたい聞きたい。
👻 ヨイ:もう開き直ってるよね。犬のおしっこが火炎放射になったり、セクシー女子をゴキブリにして潰したり、顔面ミートボール食ったり。
🎤 トック:聞かなきゃよかった。なんすか顔面ミートボールって。でも「夢だから」で全部通しちゃうの、強いっすね。
👻 ヨイ:強い。「夢の中では何してもOK」って、映画にとって、最強の免罪符なの。
🎤 トック:あー、でも、それ、良くも悪くもありそうっす。
👻 ヨイ:良くも悪くもある。真面目にやれば『インセプション』みたいに、夢のルールを数学的に固めた、かっこいい映画になる。暴走させれば、人間の皮はいだらゴキブリでてくる。
🎤 トック:そういえば、俺、インセプション、この前、先生と語ったっす。
👻 ヨイ:あ、そう。じゃあインセプションってフレディが元ネタなの知ってた?
🎤 トック:嘘でしょ?(笑)また俺騙そうとしてるでしょ?
👻 ヨイ:ほんとほんと。フレディの悪夢ってテレビドラマがあるんだけどさ、そのエピソードに夢から覚めたと思ったら永遠に夢だったって話があるの。それがノーラン凄く怖くてヒントになったんだって。私も大好きな話。
🎤 トック:……嫌すぎる。でもそれ確かに虚無じゃないっすか。マジなんだ。
👻 ヨイ:そ。信じた?
🎤 トック:……ヨイせんやっぱホラーの知識やばい。
👻 ヨイ:私は知識は大したことないよ。ほとんど感覚で観てるから。あと、この作品の監督、ウェス・クレイヴンさん、もう亡くなってるの。2015年。脳腫瘍。
🎤 トック:あ、そうだったんすか。
👻 ヨイ:ホラーを「頭を使う映画」に引き上げた人の一人。わたし、この人の訃報見た時、なんか変な感じだったんだよね。フレディ作った人が死ぬって、「悪夢にも寿命あるんだ」って感じして。
🎤 トック:……。
👻 ヨイ:でも、この人の作ったフレディは、今も、みんなの夢に出てくるから。そういう意味では、ちゃんと生きてる。
(短い沈黙)
🎤 トック:……ヨイせん。
👻 ヨイ:ん。
🎤 トック:ちょっと、1個、いいすか。
👻 ヨイ:どうぞ。
🎤 トック:俺、この映画観た後から、フレディの数え歌、夢に、出てくるんすよ。
👻 ヨイ:(軽くうなずく)……あー、あれね。
🎤 トック:「ワン、ツー、フレディがくるぞ」ってやつ。
👻 ヨイ:(深くうなずく)うん、うん。
🎤 トック:最初言ったじゃないすか、自分を上から見てる夢のあとに、子供たちの歌ってる声が、遠くから、聞こえてくるんすよ。
👻 ヨイ:(真面目な顔でうなずく)うん。
(👻 ヨイ、黙って、手元でスマホを操作する。)
🎤 トック:それで、あ、来るな、って思って、目が覚めるんすけど。
(隣の軽音が、珍しく止まっている)
🎤 トック:……。
🎤 トック:あれ、今日、急に静かっすね。
(部室の本棚あたりから、小さく子供たちの声で「One, two, Freddy's coming for you.」と聞こえてくる)
🎤 トック:……。
🎤 トック:……ヨイせん。
👻 ヨイ:ん?
🎤 トック:今、聞こえて、ますか(ささやき声)。
👻 ヨイ:(平然と)何が?
🎤 トック:……うた。
👻 ヨイ:(真顔で)うた?え、なんの歌。
(Three, four, better lock your door.)
🎤 トック:ヨイせん、これ、これ、聞こえてないんすか、マジで。
👻 ヨイ:(首をかしげる)トック、ちょっと、寝不足じゃない?
🎤 トック:いや、いや、絶対聞こえてるっすよ、これ、ほら、今、聞こえてるじゃないすか!
👻 ヨイ:……(耐えきれず、吹き出す)
🎤 トック:ヨーイーせーん!
👻 ヨイ:(爆笑しながら袖の下のスマホを見せる)
🎤 トック:ほらこれだ。またこれだ。スマホから流してたんすね!
👻 ヨイ:(笑いながら)だって、トックがさ、「夢に出てくるんすよ」って、めっちゃ真顔で言ってきたから、ちょっと、悪いけど、試してみたくなっちゃって。部室にスピーカー置いててさ。一人の時は好きな曲聞いてるの。
🎤 トック:なんで音源持ってんすか。どこにあるんすかその音源。
👻 ヨイ:(まだ笑っている)
🎤 トック:……。(ふてくされた顔)
👻 ヨイ:ごめん、ごめん。でも、トックがビビるの、かわいいもん。
🎤 トック:もうね、俺、今夜、絶対、見ます、絶対、数え歌の夢、見ます。責任、取ってくださいよ。
👻 ヨイ:取らない。それは、ナンシーの仕事。
🎤 トック:何すかそれ。
👻 ヨイ:(笑いながらスマホを止める)
(数え歌が止まる)
(……数秒後)
(本棚の奥から、小さく続きが聞こえる)
"Five, six, grab your crucifix."
タイトル詐欺にしちゃ、豪華すぎるんだよ

👻 ヨイ:じゃあ、2本目。
🎤 トック:『ドリームキャッチャー』、2003年。
👻 ヨイ:(笑う)
🎤 トック:え、なんで笑うんすか。
👻 ヨイ:いや、トック、これ、夢の話だと思って借りてきたって言ってたじゃん。
🎤 トック:そうっすよ。タイトル『ドリーム』って入ってるし、スティーブンキング原作だし。ショーシャンクのモーガンフリーマンも出てるし。
👻 ヨイ:どんだけ雑なチョイスなのよ。でもチャッピーに聞かないのはいいよ。今後も下調べ禁止。勘で選んできて。そっちの方が面白いから。
🎤 トック:分かったっす。適当に選んだというか、なんかドキドキが欲しかったんすよ。ホラーだし。
👻 ヨイ:ドキドキ大事。で、観て。何だった。
🎤 トック:途中までは、なんか、雪山の山荘に男4人集まって、幼馴染でーっていう『スタンド・バイ・ミー』みたいな感じだったんすけど。
👻 ヨイ:うん。
🎤 トック:急に、肛門から宇宙人が出てきました。
👻 ヨイ:(爆笑)
🎤 トック:笑うとこじゃないっす、俺の貴重な週末の2時間すよ。
👻 ヨイ:(笑いながら)ごめんごめん、トックの告白が、毎回おもろくて。
🎤 トック:で、そこからはもう、夢の話どころじゃなくて、エイリアンとモーガン・フリーマンが出てきて、軍が出てきて、俺、途中から、何観てるか分かんなくなったっす。
👻 ヨイ:正しい反応。
🎤 トック:ヨイせん、この映画、何なんすか。
👻 ヨイ:B級映画。ただし、豪華。
🎤 トック:その組み合わせ、あるんすか。
👻 ヨイ:ある。映画界、たまに意味わかんない事故起きるから。
🎤 トック:フェラーリで畑走ってるみたいな?
👻 ヨイ:(笑う)かなり近い。
🎤 トック:でも、分かる。ジャケット、めっちゃ「ちゃんとしてる映画」感ある。
👻 ヨイ:監督ローレンス・カスダン。脚本ウィリアム・ゴールドマン。もう「肛門から宇宙人出る映画」の布陣じゃない。
🎤 トック:そう思って借りて来たんすよ。詐欺っすよそれ。
👻 ヨイ:俳優も肩書き強い。しかも原作者のキング本人が、インタビューで「批評家や観客から不当に叩かれた」って擁護してるの。
🎤 トック:それは週末の2時間を無駄にした人の怒りっす。叩かれるの分かるもん。
👻 ヨイ:でもね、わたし、この「キングが気に入ってる」っていう事実、これこそがこの映画の面白さなの。
🎤 トック:どういうことっすか。
👻 ヨイ:この映画ね、Rotten Tomatoesで支持率28%。評論家にはボコボコ。北米興行収入も、製作費の半分。こけてる。
🎤 トック:やっぱり。話とっちらかってますもん。
👻 ヨイ:でも、キング本人は満足してる。観た人の一部は、めちゃくちゃ愛してる。わたしも、正直、愛してる側。
🎤 トック:なんで愛せるんすか、これ。
👻 ヨイ:「豪華なのに、めちゃくちゃ」だから。あとダディッツ?
🎤 トック:その理屈、よく分かんないっす。ダディッツは確かにイイキャラでしたけど。
👻 ヨイ:アーーイ
🎤 トック:ダディッツ!(両手を突き上げ)
👻 ヨイ:よろしい。
🎤 トック:なんの儀式。
👻 ヨイ:必要な儀式。でさ、普通の映画って、予算かけて、豪華キャスト揃えたら、まとまった映画になるじゃん。
🎤 トック:はい。
👻 ヨイ:この映画、ならなかったのよ。予算もスタッフも豪華なのに、話が散らばりすぎて、制御できてない。普通の失敗映画って、「低予算だから仕方ないね」で終わるの。
🎤 トック:はい。
👻 ヨイ:でもこれは、「なんでこのメンツでこうなった?」っていう、「事故の規模」がデカいの。
🎤 トック:超大型事故っすわ。
👻 ヨイ:でもね、仕方ないところあるんだよ。原作の時点で、幼馴染4人のテレパシー話、エイリアン話、軍の陰謀話、ダディッツっていう特殊能力少年の話、って、要素が多すぎるの。それを2時間15分に詰め込むのが、構造的に無理。
🎤 トック:あー。
👻 ヨイ:だから、「次のシーンで何が来るか、マジで予想つかない」映画になってる。そこが、愛される理由。——例えばさ、ビーバーが死ぬとこ、覚えてる?便器に蓋して、その上に座って、中のウィーゼルを押さえ込もうとするの。
🎤 トック:覚えてます。めっちゃつまようじ気にするやつ。
👻 ヨイ:そう、つまようじ。あれ、ビーバーが常に口にくわえてる、精神安定剤的アイテムなんだけど。床に落ちて、拾おうとして、便器の蓋から手が離れる。そこでウィーゼルが出てきて、終わり。
🎤 トック:あの死に方、ホラー史上一番「なんで?」ってなりました。
👻 ヨイ:分かる。あれ、ブラックユーモアなのか、本気で悲劇として撮ってるのか、たぶんどっちもなの。
🎤 トック:予想つかないんすよ、ほんと。雪山で友達同士が話してたかと思ったら、トイレで殺されて、肛門から生き物が出てきて、気づいたらモーガン・フリーマンが軍服着て銃構えてて。最初っから頭おかしいっすから、モーガンフリーマン。ぶっちゃけモーガン・フリーマン出てきた瞬間、「あ、ここから社会派になるんだな」って思ったんすよ。
👻 ヨイ:うん。
🎤 トック:ならなかった。
👻 ヨイ:(爆笑)
🎤 トック:むしろ肛門方面に加速した。
👻 ヨイ:最低な方角の言い方。
👻 ヨイ:で、トック、これ、夢の話だったと思う?
🎤 トック:言い訳するとちょこっと夢要素あったっすよね。
👻 ヨイ:ちょこっと。ダディッツとテレパシーでつながってる、正直、映画の尺の5%くらい。
🎤 トック:残り95%、エイリアンでしたね。
👻 ヨイ:エイリアンとモーガン・フリーマン。
🎤 トック:看板に偽りありすぎでしょ。
👻 ヨイ:でもね、わたし、このタイトル詐欺、好きなの。
🎤 トック:なんでっすか。
👻 ヨイ:「夢の番人」っていう繊細で詩的なモチーフを掲げながら、中身がもう、ウィーゼルで全部壊れてる。なんかポスターも名作っぽいじゃん。このアンバランスが、映画としての「なんかおかしい美しさ」を作ってる。整いすぎた映画より、こういう方が、忘れられない。
🎤 トック:ヨイせんの感想、また、斜めから来ましたね。
👻 ヨイ:斜めが好きなの。
🎤 トック:さっきエルム街の時、「真後ろから来た」とか言ってたのに、今度は「斜め」に戻るんすか。
👻 ヨイ:(笑う)その時その時で、角度、変えるのよ。
🎤 トック:……。
👻 ヨイ:アーーイ
🎤 トック:ダディッツ!(両手を突き上げ)
👻 ヨイ:グッド。
🎤 トック:……なんかもう、この映画、内容より掛け声だけ残ってるんすけど。
👻 ヨイ:それが、キング映画の感染力。
🎤 トック:嫌な感染の仕方。
(数秒沈黙)
👻 ヨイ:アーーイ
🎤 トック:ダディッツ!!(反射で叫ぶ)
🎤 トック:……ほらもう感染してる。
リンチの頭、そのまま置いてあった

👻 ヨイ:じゃあ、ラスト。『イレイザーヘッド』、1977年。
🎤 トック:これ、ヨイせん何回観てます?俺、一回観て途中で吐きそうになったんですけど。
👻 ヨイ:10回以上。
🎤 トック:……ガチの人や。
👻 ヨイ:正確には10回以上で止めてる。
🎤 トック:止めてるんすか、数えるの。
👻 ヨイ:止めてる。正確な回数、自分で気持ち悪くなるから。
🎤 トック:ヨイせん、リンチ相当好きっすよね。
👻 ヨイ:好き、っていうか、この人の映画は、もう、観るっていうか、浴びる。
🎤 トック:浴びる。
👻 ヨイ:浴びる。シャワー、みたいに。
🎤 トック:分かるような、分かんないような。
👻 ヨイ:この映画は、リンチの長編デビュー作。1977年。
🎤 トック:俺、リンチって名前は知ってたんすけど、ちゃんと観たの、今回が初めてで。
👻 ヨイ:率直にどうだった。
🎤 トック:……気持ち悪くなって、途中で、ちょっと、寝ました。いや、「寝た」っていうか、脳が一回、避難した感じっす。映画観ながら「これ以上入れたら危ない」って本能が判断した。
👻 ヨイ:(笑う)
🎤 トック:正直に言いました。
👻 ヨイ:いいのいいの。この映画、寝落ちするのは、正しい鑑賞法。
🎤 トック:え、そうなんすか。
👻 ヨイ:リンチがね、この映画、「夢をそのまま映像化したらこうなる」って発想で作ってるの。だから、観る側も、半分レムりながら観るのが、一番ハマる。
🎤 トック:じゃあ俺、結構ちゃんと観てたのかもっす。
👻 ヨイ:(笑う)ちゃんと観てる。
👻 ヨイ:あらすじ、いちおう言っとくね。
🎤 トック:お願いします。
👻 ヨイ:モジャモジャ頭の青年、ヘンリー・スペンサーが主人公。冴えない印刷工。ある日、付き合ってる女性から「奇妙な赤ちゃんを産んだ」って言われて、結婚することになる。
🎤 トック:はい。
👻 ヨイ:で、赤ちゃんを見ると、もう、人間じゃないの。ミイラみたいに包帯ぐるぐる巻きで、頭だけ爬虫類みたいで、四肢がない。絶え間なくピーピー泣いてる。
🎤 トック:……。
👻 ヨイ:奥さんは、その泣き声に耐えられなくて、家を出ちゃう。残されたヘンリーは、赤ちゃんと二人暮らし。次第に精神がおかしくなっていって、部屋のラジエーターの中から、ほっぺが膨らんだ少女が現れて、歌い始める。
🎤 トック:あの、ラジエーターの中の、あの、女の人っすね。
👻 ヨイ:そう。あの人。
🎤 トック:あれ、観た時、一番「なんで?」ってなりました。なんで、ラジエーターの中から、人が出てくるんすか。あのほっぺたはなんなんすか。むりやり何かくっつけたみたいな。
👻 ヨイ:それ、聞かないでいい。
🎤 トック:聞いちゃダメなんすか。
👻 ヨイ:リンチの映画で「なんで」って聞き始めると、全部崩れる。「なんで赤ちゃんがあんな形なの」「なんでチキンが動いて血を出すの」「なんでヘンリーの頭がゴロンと落ちるの」「なんで鉛筆工場が出てくるの」。全部、答えない方がいい。
🎤 トック:……えー。でも、鉛筆工場って、なんか意味あったんすか。それだけ、ちょっと、説明してほしいっす。
👻 ヨイ:(笑う)じゃあ、1個だけ。鉛筆工場のシーンね。ヘンリーの頭が、ある時、ポロッと肩から落ちる。で、通りすがりの少年が、その頭を拾って、工場に持って行く。工場の職人は、頭から、こう、ドリルでコアを削り出して、鉛筆の消しゴム部分に加工する。自分の頭を消しゴムに加工してもらうのってどういうこと?
🎤 トック:え……。消したい何かがある、とか?
👻 ヨイ:そう。自分の頭の中にある不安を消したかったのかもね。イレイザーヘッドってシャーペンについてる消しゴムのことなんだけど。不安を消すダブルミーニングで『イレイザーヘッド』。「消しゴム頭」。
🎤 トック:タイトル、そこから来てるんすか。
👻 ヨイ:そこから来てる。
🎤 トック:……ヨイせん、これ、なんの映画なんすか。
👻 ヨイ:「親になることの、言語化できない恐怖」の映画。
🎤 トック:そういうこと?そうなんだ。
👻 ヨイ:そう。リンチ自身が、この時期、父親になったばっかりでね。娘さんが、先天性の足の障害があって、何度も手術をしないといけない状況で。「自分のような人間が、親になっていいのか」っていう、ぐちゃぐちゃの気持ちを、そのまま、映像にしたんだよ。
🎤 トック:育児ノイローゼを悪夢で煮込んだ映画じゃないすか…………自分の中で消化してほしいっす。
👻 ヨイ:それができたらこの作品は産まれてない。ただ、リンチが悩まされてた、気持ち悪い、不安、怖い、逃げたい、っていう感情だけを、90分間、浴びせてくる。
🎤 トック:それで俺は吐きそうになったんすね。もうなんか迫ってくるんすよ。不安な、不穏な、何にも分からない気持ち悪さが。
👻 ヨイ:そう。それを浴びるの。浴びて時にはつかる。リンチ風呂。
🎤 トック:効能、「不眠」と「情緒不安定」って書いてありそう。
(👻 ヨイ、ここから早口モードに突入する)
👻 ヨイ:あのね、もっと言うとね、この映画、音がやばいのよ。
🎤 トック:確かに。なんかずっと鳴ってる。低い音。
👻 ヨイ:そう。ずーっと、低い、工業の、機械のうなる音が、鳴ってんの。工場でもないところでも、工場の音が鳴ってる。ヘンリーの部屋でも鳴ってる。ヘンリーが歩く廊下でも鳴ってる。
🎤 トック:本当残るあれ。なんで廊下で鳴ってるのか意味わかんないし。
👻 ヨイ:リンチって、「意味分かんない夢」じゃなくて、「リンチの頭の中、そのまま床に置いてある」感じなのよ。
🎤 トック:拾いたくねえ……。
👻 ヨイ:でね、音の設計をしたのが、アラン・スプレットっていう、後にアカデミー賞を取る音響デザイナーで、リンチと組んで、映画で初めて「音そのものが不安を作る」っていう技法を確立した人なの。『セブン』のフィンチャーも、コーエン兄弟の『バートン・フィンク』も、これ影響受けてる。
🎤 トック:……。
👻 ヨイ:で、制作期間が4年半。長いよ。リンチが、AFIっていう映画学校で、学生として撮り始めた作品なんだけど、お金がなくて、途中で制作が止まったりしながら、4年半かけて完成させてるの。ジャック・ナンスっていう主演の俳優さんが、撮影中、ずーっと同じ髪型、同じ服で、モジャモジャ頭のまま生活してた。1ショット撮るために、半年空けたりしてるから。
🎤 トック:マジっすか。どんだけ律儀なんすか。ジャック・ナンス、大変じゃないっすか。
👻 ヨイ:大変。でも、リンチのこと、信じてたんだよね、この人たち。
🎤 トック:すげーいい話じゃないすか。
👻 ヨイ:でも公開された時、誰も観にこなかったの。初週、観に来た客、25人。
🎤 トック:すげー哀しい話になったっすわ。
👻 ヨイ:でも、そのうち24人が、翌週、もう一度観に来た。
🎤 トック:え。
👻 ヨイ:24人。「あれは、なんだったんだ」って、確認しに戻ってきた人が、ほぼ全員。
🎤 トック:怖いっす、それ。洗脳されてるっす。
👻 ヨイ:しかも、その24人、多分、誰にも説明できてないのよ。「何が良かったの?」って聞かれても。
🎤 トック:もう完全にリンチ風呂つかってるじゃないすか。
👻 ヨイ:怖いでしょ。で、そこから深夜興行でじわじわ広がって、「観た人が、もう一度観たくなる映画」として、カルト映画の代名詞になったの。カルト映画ってジャンル名、あるじゃん。あれの、起点、この映画なのよ。
🎤 トック:凄い映画なんすね。でもそれだけのことはある。だって吐きそうになる映画ってそんなないっすよ。
👻 ヨイ:俺、『イレイザーヘッド』がカルト映画の定義を作ったって、マジで思ってる。
🎤 トック:おっと。
👻 ヨイ:ん。
🎤 トック:言いました?
👻 ヨイ:聞き違い。
🎤 トック:俺、もう、ヨイせんが「俺」って言う瞬間、見逃さないんで。
👻 ヨイ:(目をそらす)
🎤 トック:リンチの話になると、一人称バグるんすね。
👻 ヨイ:……バグってない。
🎤 トック:いや完全にOS切り替わってる。リンチ、特別なんすね。
👻 ヨイ:特別。
(短い沈黙)
👻 ヨイ:あとね。
🎤 トック:はい。
👻 ヨイ:この監督、去年、亡くなったの。
🎤 トック:……。
👻 ヨイ:2025年1月。
🎤 トック:……ヨイせん、その話、今日、どっかでするかなって、ちょっと思ってました。
👻 ヨイ:(少し笑う)するよ、そりゃ。3本目にリンチ選んだ時点で。
🎤 トック:すいません、俺、それ知らずに選びました。選んでから知りました。
👻 ヨイ:いいの、知らずに選んで。わたしも、この1年で、この映画、観直したから。
🎤 トック:どうでした。
👻 ヨイ:いつもより、ラジエーターの女の歌、しみた。
🎤 トック:あの歌、タイトルなんでしたっけ。
👻 ヨイ:「In Heaven, Everything Is Fine」。天国では、全てが上手くいく。ヘンリーが最後、この歌に導かれて、ラジエーターの女と抱き合って、光に包まれて、映画が終わる。
🎤 トック:……あれ、ハッピーエンドなんすか。
👻 ヨイ:分かんない。破滅したとも、救われたとも、両方取れる。リンチ本人が、2007年のインタビューで、「『イレイザーヘッド』は、俺の、一番スピリチュアルな映画なんだ」って言ってるの。
🎤 トック:スピリチュアルというか、不安のおすそ分け映画っすよ。
👻 ヨイ:いいねそれ。ちょっと体験させてもらうの、不安を。
🎤 トック:……なんか、すごい監督だったんすね。
👻 ヨイ:すごかったよ。初めて観たのは小学生の頃、こっそり観たの。あの時から私の心に直接入ってきていなくならない。なかなかいないよね、そんな監督。
🎤 トック:……黙とうします?
👻 ヨイ:いいね。しよっか。
(沈黙)
👻 ヨイ:……で、トックよ。
🎤 トック:へい。
👻 ヨイ:この3本、全部「夢の映画」って言ってトックが持ってきたけどさ。
🎤 トック:へい。
👻 ヨイ:フレディは、夢の中に殺人鬼。ドリームキャッチャーは、タイトルだけ夢。リンチは、夢をなぞるんじゃなくて、夢そのもの。
🎤 トック:バラバラっすね。
👻 ヨイ:バラバラ。でもね、並べると、1個だけ見えることがあって。
🎤 トック:何すか。
👻 ヨイ:「夢」って、ホラーの題材として、扱いが一番難しいの。
🎤 トック:なんで難しいんすか。
👻 ヨイ:夢って、観る側の頭の中にしかないじゃん。それを、映像で、他人に見せる、って、構造的に無理があるの。だから、この3本、全部、違う逃げ方してる。
🎤 トック:逃げ方。
👻 ヨイ:フレディは、「夢の中にルールを持ち込む」で逃げた。「夢で殺されると、現実でも死ぬ」ってルール。これで、観客は夢と現実の境目を、ルールとして受け止められる。
🎤 トック:ああ。
👻 ヨイ:ドリームキャッチャーは、そもそも「夢を描くの諦めた」。夢はモチーフだけで、中身はエイリアン。
🎤 トック:諦めたんすね。
👻 ヨイ:諦めた。で、イレイザーヘッドは、「夢の真似をする代わりに、夢そのものを作った」。観る人が、観ながら、「これ、夢を見てる感覚と同じだ」って、体で理解する作り方。
🎤 トック:ああ、それが「浴びる」って言ったやつっすか。
👻 ヨイ:それ。
🎤 トック:……。
👻 ヨイ:「夢をどう扱うか」で、ホラーって3種類に分かれる。1個目、ルールを作る。2個目、諦める。3個目、夢そのものになる。
🎤 トック:……ヨイせん、なんか、まとめるじゃないすか、ちゃんと。
👻 ヨイ:(笑う)うるさい、今のは、いい感じにまとめようとしたの。
🎤 トック:いい感じにまとまりました。……でも俺、正直、今日の3本の中だと、『イレイザーヘッド』が一番、また観ちゃう気がします。
👻 ヨイ:(少し笑う)
🎤 トック:意味分かんなかったのに。
👻 ヨイ:それが、リンチ。
雨、止まないね

👻 ヨイ:雨、止まないね。
🎤 トック:梅雨すから。
👻 ヨイ:今日3本、観て話して、結論何だった。
🎤 トック:夢がテーマって思って借りた3本、ちゃんと夢の話だったの、1本しかなかった。
👻 ヨイ:(笑う)それ、結論?
🎤 トック:そうっすけど、なんか、俺、今日で3本とも、観方が変わったっす。
👻 ヨイ:どう変わったん。
🎤 トック:エルム街は、フレディ、殺さずに取る。ドリームキャッチャーは、タイトル詐欺の最高峰。イレイザーヘッドは……浴びるやつ。
👻 ヨイ:全部、ちゃんと、聞いてたね。
🎤 トック:聞いてました。
(外で雨が強くなる)
🎤 トック:傘、ないんすよね、俺。もうちょっと待ちます。
👻 ヨイ:折り畳み、2本持ってる。
🎤 トック:えっ、なんでっすか。
👻 ヨイ:1本、壊れてるから、予備で持ってる。
🎤 トック:壊れてる傘を、予備で持つんすね。
👻 ヨイ:持つの。壊れてても、ないよりはマシだから。
🎤 トック:……なんか、ヨイせんって、壊れてる傘も捨てなさそうっすね。
👻 ヨイ:捨てない。
🎤 トック:即答。
👻 ヨイ:なに言ってんの。帰ろ。
(👻 ヨイ、部室の電気を消しかけて、止まる)
👻 ヨイ:あ、そうだ。読んでるあなたに、宿題。
🎤 トック:出た、試すやつ。今度は読者っすか。
👻 ヨイ:今夜、目を閉じたら、今まで見た夢の中で、一番怖かった夢を思い出してみて。で、それが、どの系譜か。エルム街系の、ルールが決まってるタイプか。ドリームキャッチャー系の、ぐちゃぐちゃタイプか。イレイザーヘッド系の、理由がないのに気持ち悪いタイプか。
🎤 トック:……俺、たぶん、リンチ系です。
👻 ヨイ:トック、ホラー適性、また上がったね。
🎤 トック:上がりたくないっす。
👻 ヨイ:コメント欄で、待ってる。あなたの、一番怖かった夢。
🎤 トック:できれば、ドリームキャッチャー系でお願いします。リンチ系、読むのしんどそうなんで。
👻 ヨイ:読み手の心配しないで、書いて書いて。——ほら、帰るよ。
(電気が消える)
(暗い部室に、雨音だけが残る)
なかのひとの一言

第2回は夢つながりのホラー映画。フレディ去勢は身近な人がふと漏らした一言で、衝撃が大きかったので使わせてもらいました。あんなもん殺すからあかんねん。取って牢屋ほりこんどいたらよかったんや。Exactly(そのとおりでございます)。
ところでAIが一番苦手な分野は、ジョーク、冗談の使い方ではないでしょうか。これほどあらゆる分野でAIが活用されている中で漫才のネタをAIで作るというのは未だ聞いたことがありません。少なくともポン出しは無理ですね。これは漫談も同じなのですが、初めの設計と修正フローをしっかり作らないと綺麗なだけで読んでて一つも面白くない文章が上がってきます。まして真面目なClaudeくんにはフレディ去勢などというイカれた提案はどうやっても出てこない。どうしても思考が常識の範囲内に収まってしまう。やはり狂気、尖りが足りない。これをAIに無理に尖らせようとしてもダメで、狂気のしずくをスポイトのように垂らしてあげるのがいいのです。つまり人間は狂気を担当するべきなのです。そもそも映画を語らせるためだけにAIを使っている時点で大分頭がおかしい人なのです。なのでヨイとトックのホラー部室は多分に私のテイストが入っています。いつも以上にClaudeに好き勝手言ってます。結構、楽しいよ。好き勝手いうの。ちゃんと答えてくれるから。
(なかのひと/SAN値担当)
👉 ホラー部室第1回「中身が入れ替わってるヤツ」
👉 ヨイ初登場回『悪魔のいけにえ』考察|汚い映画なのに、なぜ目を逸らせないのか——美しい地獄
ヨイとトックのホラー部室について
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。この「ヨイとトックのホラー部室」は、AIと人間のハイブリッドで作られています。
漫談のアイデア、作品テーマ、構成設計はなかのひと(著者)が考え、AI(主にClaude)はテキスト生成の補助として活用しています。ただし、最終的な文章は必ずなかのひとが全文チェック・編集・リライトしており、「なかの人の一言」は完全に人間の手で書いています。ヨイとトックの掛け合いを通じて、映画の何でもない話をゆるーくお楽しみいただければ幸いです。

