『エクソシスト』考察|冒頭イラクの「にらみ合い」は何だったのか【先生、あれ何だったんすか?】
映画を観た後、ずっと気になっていた「あの場面」の意味。 全ての映画を観た男「シネマ先生」(55)と、配信世代の大学生「トック」(19)が、たった一つの問いを掘り下げます。
🎤 トック:先生。『エクソシスト』の、いちばん最初。イラクの砂漠で、老神父のメリンさんが、発掘現場を歩いて、最後に丘の上の悪魔の像と、にらみ合うじゃないすか。あの場面、少女もカラス神父もまだ出てこないし、本編とほぼ繋がってないのに、やたら長い。あれ、何だったんすか?
🎬 シネマ先生:多くの観客が、そこで一度、置いていかれる。「早く本編を始めてくれ」と。——だが、あれは、この映画でいちばん大事な前置きだ。ヒントは前に出したな。あの像と、メリンの最後の死に方を、並べてみろ、と。
🎤 トック:並べて……。メリンさん、最後、悪魔祓いの途中で、心臓発作で死ぬんすよね。
🎬 シネマ先生:そうだ。では聞く。冒頭のイラクで、メリンは何をしていた? 神父なのに。
🎤 トック:……発掘。考古学者みたいに、遺跡を掘ってた。
🎬 シネマ先生:そこが第一の鍵だ。メリンは、信仰の人であると同時に、科学の人——考古学者でもある。神を信じ、かつ、土を掘って事実を確かめる男だ。その彼が、発掘の中で、古代の悪魔の護符を見つける。そして、丘の上の像と、対峙する。——あのにらみ合いは、ただの観光じゃない。再会だ。
🎤 トック:再会? 初めて会うんじゃなくて?
🎬 シネマ先生:メリンは、ずっと昔に一度、この悪魔を祓ったことがある。遠い国で。あの像を見た瞬間、彼は悟るんだ。「あれが、また来る」と。冒頭の彼が、妙に怯えて、不吉な汗をかいているのは、そのためだ。彼は、これから自分に起きることを、予感している。
🎤 トック:……あ。だから、あんなに表情が暗いのか。
🎬 シネマ先生:そして、第二の鍵。あの場面で、メリンは何度か、薬を飲んでいる。
🎤 トック:……心臓の薬?
🎬 シネマ先生:そうだ。彼は老いて、心臓を患っている。長くない体だ。さらに、博物館の場面で、時計が、止まる。あれは古典的な、死の予兆の演出だ。——いいか、トック。並べてみろ。彼は、また悪魔と対峙することを予感している。自分の心臓が、もう長くないことも知っている。
🎤 トック:……あ。待って。じゃあメリンさんって——
🎬 シネマ先生:言ってみろ。
🎤 トック:最初から、知ってたんすか。あの悪魔ともう一回やったら、自分の心臓が止まるって。——知ってて、それでも、ワシントンに来た?
🎬 シネマ先生:——それが、答えだ。冒頭のイラクは、「メリンが自分の死に方を、半ば知った」場面なんだ。彼の死は、本編での突然の事故じゃない。あの砂漠で、すでに決まっていた。自分を殺すと知っているものに、自分から会いに行く。あの長い前置きは、その覚悟を、観客の体に刻むためにあった。だから、本編でメリンがあっけなく死んだとき、観客は、どこかでそれを知っていた気がするんだ。冒頭で、見せられていたから。
🎤 トック:……うわ。あの一見いらない15分が、メリンさんの「死ぬと分かってて行く」っていう覚悟の、助走だったのか。
🎬 シネマ先生:そういうことだ。——もっとも、これは私の読みだ。あの像が何を象徴するか、メリンが何を見たのか。明確な答えを、映画は言わない。
🎤 トック:じゃあ、他の見方も?
🎬 シネマ先生:ある。あれは、善と悪が永遠ににらみ合ってきた、という人類史そのものの象徴だ、という読みもできる。古代から現代まで、ずっと続く戦いの、ほんの一場面として、メリンと悪魔がいる、と。——君の読みがあるなら、それが君にとっての正解だ。コメントで、聞かせてくれてもいい。
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ファクトチェック
✅ 冒頭のイラクの場面は、メリンが発掘現場で古代の悪魔(パズズ)の護符・像と対峙する場面。メリンは聖職者かつ考古学者で、過去に同じ悪魔を祓った経験を持ち、再会を予感する(原作小説・映画設定) 出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Lankester_Merrin / https://www.artofthetitle.com/title/the-exorcist/ ✅ メリンは高齢で心臓を患い、劇中で薬を服用している。博物館で時計が止まる演出は死の予兆として読まれる 出典:https://rennyo01.wordpress.com/2017/02/09/exorcist-iraq-prologue-its-purpose/ ✅ 冒頭の悪魔は劇中では名指しされず、脚本・続編で「パズズ」と特定される。メリンと像の対峙は西部劇的な「対決(stand-off)」構図で撮られている 出典:https://www.revenantjournal.com/contents/the-demon-pazuzu-as-noise-in-the-exorcist-michael-brown/ 🔍 「冒頭イラク=メリンが自分の死に方を半ば知った上で対峙しに行く覚悟の前置き」という読みは本記事の解釈。劇中で明示的に語られるものではない 🔍 「善悪が永遠ににらみ合う人類史の象徴」という別解も、複数の批評で示される読みの一つ
