アシㇼパが尾形へ毒矢を放った後、なぜ杉元は目を輝かせて微笑んだのか?
『ゴールデンカムイ』上等兵ズ考察-勇作02
この記事では、杉元の視点を通して勇作とアシㇼパを対比しながら、両者の人物造形について考察していく。
東京愛物語編では、杉元と勇作の衝突が明かされる。杉元が「本音を知って おきたい」と問うた時、勇作の答えはなお父の態度と一致していた。杉元は怒り、「本当はエビフライじゃねえのかよこの野郎ッ、 何だと? 知らねえ の!? じゃあ食ってこいや!!そんで、どっちか選べよ!!」と言う。その後、夢が醒める直前、杉元は遠くの勇作の遺体を黙って見つめ、目を開くとアシㇼパの青い瞳があり、そこで驚いて目を覚ます[276][279]。
杉元の見方は、勇作は師団長の子として渦の中心にいながら、連隊旗手になることについて自分自身の考えを持たず、エビフライも食べたことがない。つまり十分な選択肢を持たず、自分で道を選ぶこともなく、父たち世代の意志に従って戦場へ入り、そして戦死した。
これが、杉元の回想における勇作の目が描かれない理由なのかもしれない。
ただ、選択肢があったにせよなかったにせよ、誰もが時代の奔流の中で戦場へ向かった。深く考えないまま高潔に死ぬことと、一杯の白米のためにもがきながら生き延びること、そのどちらがより良いのだろうか。
同時に、杉元のアシㇼパへの態度と合わせて考えると、杉元は勇作が自分で選ばず父の考えを繰り返したことを軽蔑していたわけでも、ただ憐れんでいたわけでもないと思う。ただ彼は、目に見えて現れた事実とその結末を踏まえて、アシㇼパに同じ轍を踏ませたくなかったのだろう。
金塊争奪戦の中でアシㇼパを見て勇作を連想するのは、尾形だけではない。杉元もまた勇作を思い出している。
アシㇼパもまた、事あるごとに「全部 アチャが 教えてくれた」と言葉にする、そんな子供であった。
江渡貝編で、土方とのっぺら坊が協力していると知ったアシㇼパは、のっぺら坊がアチャなのではないかと不安になる。杉元は、のっぺら坊に確かめたいことがあると言う。渦の中心にいること、子ども本人が何も知らないこと、上の世代によって戦場に巻き込まれること。これはまさに勇作ではないか[81]。
怒りチャージ
網走監獄編でのっぺら坊を見た杉元は、金塊の問題を後回しにして、まず問い詰める。杉元は、アシㇼパがずっと怯えていた、アイヌを殺して金を奪ったのが本当にアチャだったらどうしよう、と言う。お前たちが勝手にやるのはいい、なぜアシㇼパを巻き込むのか。ウイルクが「アシㇼパは(略)戦えるよう(略)育てた(略)アイヌを導く」と返す場面は、勇作の「日本のためにこの命(略)父に言われてきました」を直接連想させる[136][276]。
怒り値+1
あの子をアイヌのジャンヌ・ダルク(略)…あの子じゃなくたっていいだろう?(略)脳みそを食べて(略)ヒンナヒンナ していて 欲しいんだよ 俺はッ!!
旗を掲げる勇作=ジャンヌ・ダルク。アシㇼパに脳みそを食べていてほしい=別の道を選ぶこと。これは、勇作がエビフライを食べられなかったこと=別の道を選べなかったことに対応している。
怒り値+1
杉元から聞いた「父上の言葉」は、兵士たちのよすがになるというものだった。勇作が戦場で人を殺さなかったことを知っていたかどうかは分からない。
樺太へ出発前、杉元と鯉登の父は、音之進、アシㇼパ、勇作という三人の父親の話題について話している。「可愛い子には前をさせよ(略)死体で返ってくるかもしれない」といった発言で、杉元はおそらく勇作のことも思い出している。[139]
活動写真編で、アシㇼパは民族文化を守るためにどうすべきかを考える。キロランケとアチャ(年長者)が言ったように、守るためには自分も立ち上がって戦わなければならないのか。杉元はその様子を見つめ、髪が逆立つほど怒っている。[206]
怒怒怒+1
杉元は「それはアシㇼパさんじゃ なくたって いいじゃないか」と言う。
アシㇼパは、キロランケが自分のために命を落とした以上、自分だけ無関係ではいられない、と言い、さらに杉元に対して、杉元は失った自分の純真を守り、救うために自分を守っているだけではないのか、と問いかける。杉元はまず、その面もあると認めるが、その後、網走監獄でのっぺら坊が言ったことをアシㇼパに伝える。
杉元は、のっぺら坊が何も知らないアシㇼパを金塊争奪戦に強引に巻き込んだことを許せない。キロランケの行動もまた、アシㇼパに戦うという道しか残さない状況へ彼女を追い込んだ。
父たち世代の意志を押しつけられ、何も知らないまま戦争に入り、一本道しか残されない。これはまさに勇作のことでもある。
怒怒怒+1
杉元は、二人がアシㇼパに呪いをかけたのだと言う。アイヌの指導者となって戦死するのか、それとも戦場で人を殺すのか。その後、鯉登の父の考えにも触れている。
アシㇼパがアイヌの指導者となって戦死することは、勇作が軍隊の高潔な旗手となって戦死することに対応している。
怒怒怒+1
杉元は、自分は父親になったことがないため武家の事情は分からないとしつつ、自分自身の経験から、人を殺せば戻れなくなる感覚、そしてアイヌ文化における不殺の伝統について語り、アシㇼパに問う。「アシㇼパさんは本当にそうしたいのか?」
杉元は、アシㇼパが本当に自分の考えを持ったうえで決断しているのかを確認したかった。
杉元は一貫して、アシㇼパに勇作と同じ道を辿らせたくないと思っており、そのためにずっと怒っている。同時に、アシㇼパに対して非常に優しく、彼女を最後まで見届け、守ることを決めている。その中には、二人分の怒りと優しさが含まれている。
杉元はアシㇼパ個人のことだけを気にしているように見える。なぜなら杉元にとって、戦争で最も利益を得るのは主に武器屋だからである。鶴見も実はそれを理解している。ただ、二人の選択はまったく異なる。
杉元自身は、戦場が個人の肉体と精神をどれほど壊すかを示す、最大の象徴である。戦争は杉元の内なる怒りを増幅させたが、それでも杉元は非常に優しい本性を保っている。杉元の父はお節介なほど他人を気にかける優しい人であり、杉元に自分の幸せを探しなさいと言った人物だからである。一方、鶴見は戦争に壊された後もなお戦争を選び、戦争の象徴となった。
アシㇼパは前半から中盤にかけて勇作とよく似ている。しかし彼女には、山へ帰ってチタタㇷ゚を食べるという選択肢がまだあり、完全には戦場に入っていない。また多くの出来事を経験し、ずっと考え続けている。
その後、アシㇼパは尾形の道理に部分的に同意し、杉元のために一緒に地獄へ堕ちる覚悟を決める。
そしてアシㇼパの未来の選択を後押ししたのはソフィアである。
最後にアシㇼパが毒矢を放つのを見た時、杉元は驚く。しかしその後、目がきらきらと輝き、少し複雑な微笑を浮かべる。アシㇼパには山へ帰ってチタタㇷ゚を食べる選択肢があったにもかかわらず、自分で考えた末に、杉元と一緒に地獄へ堕ちると決めたからである。そして最終的には、和平交渉という未来を選び、生き残った。
これが杉元の認識における、勇作とは異なる結末を得たアシㇼパである。
