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【ショパンの系譜第18】ショパン幻想曲 作品49 ヘ短調(3):伴奏の魅力

 前回の記事で、中期のショパンの大曲である幻想曲作品49の特に序奏部に関して調べた結果をアップした。今回は、幻想曲の主要部の主題群の伴奏に関して、少し調べてみたいと思う。

譜例4

 譜例4は、幻想曲の主要部の第1主題①を再掲したものである。ヘ短調の第1主題①は、前々回に述べた通り、序奏部の下降基本音列Aでメロディが構成されているのだが、リズム的にはすべてシンコペーションで、4分音符と8分音符で構成されている。一方左手の伴奏は、すべて3連符で、右手のリズムの世界とは全く異なった世界を提示している。この第1主題①は、序奏部と第1主題をつなぐ3連符の基本音列Bからなる経過部が終わり、64小節からフォルテッシモで急降下するパッセージに接続されて現れるのだが、その雰囲気は、この左手の激しい動きの伴奏部に引き継がれている。具体的には、まず68小節(譜例4の1小節目)で、変ホの持続音の上のトリラー風の3連符ではじまり、69小節の後半からは、へートー変イーロと上昇するベースの上で、二―変ホーホーへと上昇する内声で2度の山形の折り返しを持つ伴奏音型に接続される。この怒涛のような流れの上で、シンコペーションの順次進行を基調とする右手のメロディが演奏されるのだが、伴奏の効果は絶大である。第1主題①の後半部は、右手が重音の音型に変わるのに合わせ、2拍の中で大きな分散和音を描くショパンの愛用した伴奏形に変わる。

譜例5

 譜例5に示す変イ長調の第1主題②は、単音の順次下降音型からなっていた第1主題①とうって変わって、重音の(演奏が難しい)美しいメロディとなる。このメロディも基本は8分音符の音列Aからなる下降音型なのだが、左手の伴奏はやはり3連音符で、激しい動きの曲調が維持されている。伴奏音型自体は、第1主題①の伴奏音型と似ているが、細かく見ると、各拍の第1音のベースが和声の骨格を作り、また3連符の2拍目に、かならず最高音が置かれ、各拍ごとに折り返す山形音型に変えられている。この伴奏音型は、例えば即興曲第1番作品29にあらわれたもので、流麗な第1主題②に見事な躍動と彩りを加えている。右手のメロディでは、77小節(譜例5の1小節目)の3拍目に、ショパンが偏愛した変二―変ホの2度(属7和音の中の2音)が挿入されているところにも注目されたい。この第1主題②の部分は幻想曲で私の最も好きな部分の一つである。

譜例6

 第1主題②が確保された後、再び基本音列Bからなる3連符のパッセージからなる経過部を経て、譜例6のハ短調の第2主題①が現れる。この主題は、オクターブの半音階の下降を基調とした前半部と、重音の和音を基調とした後半部に分かれるが、リズム的にはやはり8分音符が中心となっている。他方、左手の伴奏はここでも3連符となっており、前半部分は第1主題①の伴奏形と同じく2度の山形の折り返しをもつ音型であるのに対し、後半部は、2拍ごとの分散和音音型に変わるのだが、よく見ると、各拍で上行下降が右手の重音と対称形になっており、両手の動きで、「開いて閉じて」を繰り返す運動が表現されるという見事なものだ。

 ショパンは、幻想曲において、主要部の律動の基本を3連符とし、それを経過部のパッセージでは右手が、そして各主題の提示では左手が、絶え間なく受け継いで全曲の運動を統一的に制御する一方で、多様な伴奏音型を展開することで、局所的な律動の制御や主題の彩りの変化を与えている。全体構造だけでなく、伴奏音型など曲の細部まで行い届いた見事な作曲技法、やはりショパンこそ史上最高の天才作曲家の一人と言えるのではないかと思う。

 次回は、幻想曲の中心部におかれた、あの静謐なコラール部分について、少し詳しく調べてみたい。

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