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新聞を取る世帯は僅か14%に-2035年の新聞購読状況を予測する


1.新聞購読世帯の割合は36%

総務省が実施する全国家計構造調査(5年に1度実施)は、新聞にたいする世帯当たりのひと月の支出額を集計している。最新の2024年調査によると支出額は1612円である(図表1の列A)。これを5年前と比べると▲301円の減、1994年の3308円の半分以下になっている。

新聞の世帯購読率の推移
図表1 新聞の世帯購読率の推移

一方同じく総務省の小売物価統計調査は、各年の新聞購読料(定価)を調べている(列B、単純化のために全国紙のセット版と統合版の平均値を使用)。ここで列Aの数値を列Bの数値で除した数値(列C)は、新聞の世帯購読率(何割の世帯が新聞をとっているか)を示すと考えることができる。

その推移を見ると1994年には97%と、新聞はほぼ全世帯で購読されていたが、21世紀に入り下落を続け、2019年時点で過半数を割り込んだ。直近の調査時点では36%と4割弱にまで減っている。

2.30歳未満世帯は新聞に平均86円しか使わず

新聞について全国家計構造調査は、世帯主年齢別の支出額も算出している。それを直近3回の調査について示したのが図表2である。2024年(棒グラフ緑色)では、世帯主が30歳未満の若者家庭は新聞に月86円しか支払っていないことが示されている。講読率に換算するとわずか2%にとどまる。30-39歳も187円(講読率4%)で新聞を取る世帯はまれ。60-69歳まで上がってようやく講読率が約半数に達する(支出額2160円)。

世帯主年齢別の新聞への支出額
図表2 世帯主年齢別の新聞への支出額

またある年代層の2014年(橙色)、2019年(水色)、2024年(緑色)の数値を比べると80歳以上をのぞき、時間経過とともに支払額が下がる傾向が見て取れる。たとえばかつては読者の主力と思われた中堅世代の40-49歳では1803円(講読率51%)→1174円(30%)→633円(14%)と大きく落ち込んでいる。

3.加齢とともに紙をやめる流れも

図表2のグラフの横軸の30歳未満の項の左側には、まだ統計の対象にならない潜在的な世帯が隠されている。この層が現在の若年層よりも多く新聞にお金を使う可能性はほとんどない。今後の時間経過とともに、右端の最高年齢層は退出し、グラフの形は左側から低くなっていくのは確実である。

注意したいのは、ある世帯層の年齢が上がっていくときに、新聞を購読し続けるかという点である。図表2でみると40-49歳の層の支出額は、2014年には1803円だったが、彼らが50-59歳になった2024年には1363円に減る。講読率はこの間に51%から30%に下落した。新聞を読んでいた世帯が年齢が上がるにつれ、新聞離れしていく動きも無視できない。

4.2035年の新聞購読部数は足元の4割弱に

新聞の世帯購読率の将来推定
図表3 新聞の世帯購読率の将来推定

では将来の世帯購読率はどのように変化するのか。ここでは講読率の時系列数値をロジスティック曲線に回帰し、その外挿から将来を予測する(図表3)。それによると購読率は2030年に22%と、4分の1を割り込んだあと、減少率を緩めつつ2035年には14%まで落ち込む。

それぞれの時点における、世帯総数に世帯購読率を掛け合わせることで、新聞を購読する世帯の実数を求めることができる。具体的には2024年の日本の世帯数は5895万(総務省、日本人+複数国籍)で、これに36%を乗ずると、2116万世帯が新聞を取っていることになる。

将来については社会保障・人口問題研究所が日本の世帯数の将来推計(2020年国勢調査ベース)を行なっている(図表4)。世帯数は2030年は5773万、2035年は5726万と推移する。これに上記の講読率をかけると、新聞購読世帯数は2030年が1285万、2035年は808万となる。

1世帯1部と考えれば世帯で購読される新聞部数は2024年2116万部、2030年1285万部、2035年808万部と推定される。2024年を100とすると、2030年は61とおよそ4割減、2035年は38と6割以上も落ちる計算になる。

日本の世帯数の推移(社人研)
図表4 日本の世帯数の推移(社人研)

5.日本新聞協会発表数値との突き合わせ

日本新聞協会は毎年新聞の発行部数を公表している。2024年の一般紙の発行部数は2661万部で、上記で算出した世帯購読部数2116万部をかなり上回る。だが協会発表の数値には企業や団体が購読する分や、実際は配達されない在庫紙も含まれることを考えると妥当な数値と評価できそうである。

6.2035年の新聞業界

全体の新聞部数の動向を機械的に各新聞社のABC部数に当てはめたものが、図表5(全国紙5紙と地方紙の部数上位下位各5紙)である。

全国紙では読売新聞は220万部、朝日新聞は127万部となり、おそらくかろうじて全国紙としての体裁は保ちそうだが、その存在感は大きく低下しよう。毎日新聞、日経新聞、産経新聞は現在の地方紙程度の部数まで縮小する。DXに成功している日経を除く2紙は事業基盤をどこに求めるかが問われることになる。

全国紙と地方紙の将来部数予測
図表5 全国紙と地方紙の将来部数予測

地方紙はいずれも厳しい。中日新聞はブロック紙の地位は維持できそうだが地域性は限定されるだろう。中国新聞ほか有力な地方紙といえども部数が20万部以下となり、現在の小部数県紙と同程度の規模に縮む。部数の少ない高知新聞以下の地方紙はさらに厳しく、5万部以下の部数に沈む。

新聞業界は戦時統合で全国紙5紙+1県1紙の体制が成立し、戦後もその業界構造は基本的に維持されてきた。しかしおよそ10年で部数が6割減るといった厳しい状況の中で、経営基盤の弱い会社は、同業他社との統合や異業種企業への傘下入り、場合によっては事業停止といった選択を迫られることになる。長く続いた新聞業界の「1940年体制」はこの期間に大きな曲がり角を迎える可能性は高い。

7.注記事項

上記の予測には何点かの問題点が含まれている。それを下記に列挙する。

1世帯に1部までという仮定 1.で世帯購読率を計算する際に、支払額を新聞の購読料で単純に除しているが、ある世帯が複数の新聞をとっている場合、この数値は新聞購読率を正しく反映しない。また4.でもこの仮定を用いて新聞購読世帯イコール新聞購読部数としている。

新聞購読料の仮定 1.で新聞購読料として全国紙のセット版と統合版の平均値を用いているが、サンプル世帯の一定部分は地方紙を購読している可能性が高い。実際小売物価統計調査から都道府県内の有力地方紙の購読料も得ることはできるが、それを推計に反映させるのはあまりにも煩雑である。

供給側の数値とのずれ 世帯の支出額をもとにした考察は需要側の推計であるが、日本新聞協会がまとめている発行部数は販売店に搬入する部数の数値で、供給面を表している。新聞発行部数がピークをつけた1997年以降の数値を、上記と同じようにロジスティック曲線に回帰したのが図表6である。ここから予測される発行部数は2030年が1396万部、2035年が701万部となる。在庫紙などの存在を考えると2030年はともかく、2035年の数値は食い違い大きくなっている。

一般紙の発行部数
図表6 一般紙の発行部数(日本新聞協会)

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