【モノ言う株主】アクティビストから「社長解任動議」が届いた。プロキシファイト(委任状争奪戦)を回避し、株主総会を乗り切った防衛策と対話の舞台裏
高城 健です。
外資系戦略コンサルティングファームで、クライアントの経営課題解決に従事しています。
テーマは、上場企業の経営陣にとって、震災や不祥事と並ぶ恐怖の対象「アクティビスト(モノ言う株主)」です。
ここ数年、東京証券取引所による「PBR1倍割れ是正」の要請を追い風に、海外ヘッジファンドや国内の投資ファンドが、割安な日本企業をターゲットに攻撃を仕掛ける事例が急増しています。
彼らの手口は、かつての「総会屋」のような脅しではありません。
極めて論理的で、洗練されており、そして「正論」で経営陣を追い詰めます。
クライアントは、東証プライム上場の機械メーカー、F社。
創業80年、無借金経営、現預金500億円。
一見すると超優良企業ですが、株式市場からの評価は冷徹でした。
PBR(株価純資産倍率)は0.6倍。
つまり、「会社を解散して資産を分けた方が、事業を続けるより価値がある」と見なされている状態です。
ある日、F社社長の元に、シンガポールの投資ファンド「Gキャピタル(仮名)」から一通のレターが届きました。
内容は、丁寧な英語で書かれた「宣戦布告」でした。
「貴社の経営は、資本コストを理解していない怠慢なものである。現預金を溜め込み、成長投資もせず、株価を低迷させている」
「つきましては、次回の株主総会において、以下の株主提案を行う」
* 純資産の50%にあたる250億円の自社株買い。
* 配当性向100%への引き上げ。
* 現社長を含む取締役全員の解任と、ファンド側が推薦するプロ経営者の選任。
もしこれが可決されれば、経営陣は全員クビ。会社は解体され、資産はファンドに吸い上げられます。
これを阻止するためには、株主総会で過半数の票を集めなければなりません。
いわゆる「プロキシファイト(委任状争奪戦)」の勃発です。
F社の経営陣はパニックに陥りました。
「我々は真面目にやってきた! なぜこんな仕打ちを!」
「安定株主(取引先)が守ってくれるはずだ!」
甘いです。
コーポレートガバナンス・コードの導入以降、持ち合い株の解消が進み、かつての「安定株主」はもう存在しません。
機関投資家は、義理人情ではなく「経済合理性」で投票します。
つまり、ファンドの提案の方が儲かると判断すれば、平気で現経営陣に「No」を突きつけるのです。
この記事は、突然の襲撃を受けた老舗企業が、いかにしてアクティビストの猛攻を凌ぎ、市場の信頼を取り戻したかの90日間の防衛記録です。
ファンドマネージャーとの水面下の直接交渉、議決権行使助言会社(ISS/Glass Lewis)対策、そして個人株主の心を掴むためのドブ板選挙戦まで。
上場企業の役員を目指す方、あるいは自社株投資をしている方へ。
資本主義というゲームの「本当のルール」を、ここで学んでください。
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