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白河の清きに魚も棲みかねて

~白河の清きに魚も棲みかねて
   もとの濁りの田沼恋しき~

「松平定信の質素倹約による厳しい財政改革で、経済は停滞、文化も廃れた事を憂い、たとえ腐敗した政治でも以前の田沼政治が懐かしい」

これは松平定信(井上祐貴)の「寛政の改革」を批判した狂歌なのですが、詠み人が不明なのは、公共の場に庶民の誰かが掲示した落首だからです。

 これは漢書「宋名臣言行録そうめいしんげんこうろく」の、
~水至って清ければ、則ち魚なし。
  人至って察なれば則ち徒なし~
を引用したもので、あまりにも綺麗な水には魚は住めず、潔白すぎて他人を咎めてばかりだと孤立してしまうという教訓なのです。

現に松平定信(井上祐貴)は四角紙面過ぎる「こうあるべき」という考えから絶対にブレないので、時には空回りしている事にさえ気付けていません。
それどころか蔦屋が皮肉を込めて売り出した「文武二道万石通ぶんぶにどうまんごくどおし」を読んで、大喜びして「蔦屋大明神」と言うほどの勘違いぶりです。
陰で「ふんどし野郎」と言われている事も知らずに。

まさしくこの狂歌のような世になると予見したのが蔦重(横浜流星)で、まだ気付いていない庶民たちへのメッセージも込めて出したのが「文武二道万石通ぶんぶにどうまんごくどおし」だったのですが、それは全く伝わっていませんでした。

冗談ひとつ許されず何の楽しみも持つことなく、”分相応をわきまえて己の職務を全う”することを強いられたのが松平定信による「寛政の改革」でした。


危険すぎる挑戦

「これはあまりにからかいが過ぎるのではないでしょうか」

てい(橋本愛)は危険すぎると警告したのが次に出した「鸚鵡返文武二道おうむがえし ぶんぶのふたみち」でした。

前回の「文武二道万石通ぶんぶにどうまんごくどおし」は遠慮しすぎたのか皮肉は全く通じず、それどころか一番のターゲット・定信も喜ぶ始末。
それでは今回は、もっと露骨にと攻めた内容にしたのでした、

鸚鵡言おうむのことば」のパロディ

基本的にこれは定信の徳・学問・君臣・まつりごとなどを基本とした著書・「鸚鵡言おうむのことば」を完全にネタにしたパロディでした。

鸚鵡返文武二道おうむがえし ぶんぶのふたみち」の大まかな内容は以下の通りです。

ある若者が、人から言われたことをそのまま鸚鵡返しする癖を持っていて、
文の道では、和歌や漢詩のやりとりの場に出ると、相手の歌を鸚鵡返しするだけで「深い意味がある」「風雅だ」とされてしまう。
武の道では、剣術で、師匠の「こう構えよ」「こう打て」という言葉を鸚鵡返して動くので、形が決まり、強いと評判になる。

ChatGPTより要約

結局、何の創意工夫もないまま「文武両道の才人」ともてはやされるというオチで、ただの鸚鵡返しをしただけなのに世間からは立派だと受け取られれ、つまり「鸚鵡返しでも、世間は立派だと受け取ってしまう」という風刺が効いた話です。

文武を奨励する為政者である定信の政策に、公卿から庶民に至るまで励む姿が
さらに定信の本作では、凧をあげると、「鳳凰が舞い、麒麟が躍るようだ」というみやびな形容も、凧をあげれば吉兆を呼ぶと勘違い解釈してしまい、これもまたパロディにして鳳凰や麒麟も実際に飛来させ、人々もうっとりと見物していたというラストは、完全に行き過ぎた皮肉たっぷりの落としどころでした。

学力低下の一途をたどる武士たち

関ケ原の戦い~大阪の陣から175年も経ち、もはや武士たちの向学心も薄れて久しく、武芸だけではなく、基本的な語彙力や読解力も失くしてしまい、せっかくの教訓もその意味すら伝わらないようになっていました。

そこにさらなる文武の奨励は、一層の誤解を招き核心を取り違えてしまうという現状を皮肉ったものでした。

実際に、江戸に限らず地方のあちこちでも「寺子屋」が発達し、庶民や特に商人層や百姓の者たちも学ぶ機会ができて知識を得る者が多く、ちょうどこのころから武士層の精神そのものはすでに堕落していたようです。

結局、これから80年も満たないうちに徳川幕府は消滅することになるのですから、これらのパロディとしての滑稽本は核心を衝いていたのかもしれません。


黒幕・治斉はるさだは政治より趣味が大事

治斉はるさだと定信のやり取りに注目

治斉はるさだ(生田斗真)が現将軍・家斉の舅である島津重豪しまづ しげひでが趣味に興じているところにカチコチ頭の定信が政の話を持ち込みます。
治斉はるさだ袖の下●●●を差し出すと、烈火のごとく怒った定信でした。

この治斉はるさだの様子は、まさしく物事の本質を取り違えたなれの果てであるように思います。

そして、その対極にいるのが定信です。
誰に対しても自分の正義は曲げないところは良いと思いますが、田沼意次(渡辺謙)の死に、冷たい言葉を吐き捨てたり、元々世の中の噂を気にしてエゴサーチしたりしているのを見ると、なりふり構わない頑固一徹というわけでもなさそうです。

質素倹約も下々の者だけではなく、身分の上下に関係なく実践させようという意気込みは、ある意味公平だと思います。

この二人の関係は今後の展開を見るには、非常に重要です。
定信はいつも治斉はるさだを警戒しながら政治を進めていたことが見て取れ、そしてそれは予感的中となるのです。
それもまた後日書きたいと思います。

早熟!?子だくさん将軍

日本史上だと言い切ってよいぐらい沢山の子を成したのが、黒幕・治斉はるさだの子である11代将軍・徳川家斉いえなりです。
少なくとも側室が16人おり、53人もの子供がいたと伝わっています。

今回の放送で、侍女に産ませた第1子がすでに誕生しましたが、この時家斉いえなりは15歳。
当時でもこれは早熟だったのではないでしょうか?

他の時代物ドラマや歴史小説で知ったのですが、将軍の跡継を生む母の実家は幕府にとっては重要でした。

これは昨年の「光る君へ」で藤原氏が権力を持ち、摂関政治のようなことを繰り返さないように警戒していたようです。

公家の子が将軍となると、朝廷が幕政に介入する。
外様大名の娘が産んだ子が将軍になることはさらに厄介でした。

後々、幕政に支障がないように幕閣の人々は、将軍が設けた子らの養子縁組先には頭を悩ましたといいます。
家斉いえなり本人は、おそらく本能の赴くままに子作りに励んだのだと思いますが、その後始末は実際には大変だったのです。

この諸大名や御三家や御三卿への「養子押し付け」は強引で、悪い印象が尾を引いて幕府滅亡への一因となったのかもしれません。

それにしても子がないと困るのですが、多すぎても困りもの。
家斉いえなりチルドレンの53人全員が成人したわけではなく、実際にはその約半数の26人しか成人できなかったのですが、それでも多いので、幕府内の苦労は並大抵ではなかったでしょう。


これから気になるところ色々

出版関係者の処罰

予告編でもチラリと出ましたが、今回の皮肉いっぱいの滑稽本はていの予感が的中し、手痛い処罰を受ける事になります。
蔦重自身も財産の半分を没収されますが、彼の場合は歌麿が開化したことで取り戻せます。

しかし、その他の関係者はひどい目に遭う事になります。
現在まで、気の向くままに意見交換をしながら面白可笑しく制作に携わっていた仲間たちも見納めになりそう。

松平定信失脚の原因

前述しましたが、また一橋治斉はるさだは暗躍しそうです。
定信政権も6年で終焉するのですが、その原因もまた治斉はるさだであり、定信とのバトルは密かに楽しみでもあります。

定信は自分の正義からはみ出せないため、悪の治斉はるさだに対して小気味良い返答シーンがあるかもしれません。
しかしながら結局は治斉はるさだを警戒するあまり、失脚してしまうのですが。

それでもせめて、あの治斉はるさだに一泡吹かせるようなシーンが少しでもあれば嬉しいのですが、どうでしょうか。

北斎がくっきー!?

ネットニュースの見出しに固まってしまいました!
いやいやいや~!
くっきーは違うでしょう??
私のイメージする北斎は、映画「HOKUSAI」の柳楽優弥なのですよ!
あまりにもかけ離れたキャストに固まってしまいました。

くっきーが好きとか嫌いとかではなく、どんな北斎を描こうとしているのかまったく想像がつかなくなりました。


さて、蔦重自身の寿命が短いだけに、これから後半に向けて怒涛の展開が予想されます。
あとは写楽が誰か?
もしかしてすでに登場している誰かなのか?

とんでもない創作が期待できますね。


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