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ブレない「兄弟」というテーマと安土城に遺る信長の夢

今回の小栗旬さんの信長はかなり見応えがありました。
すでに4年前になる「鎌倉殿の13人」での北条義時も素晴らしかったのですが、それに匹敵する主役級の演技をしっかり見せてくれました。

すっかり魅入ってしまい、自然と小栗信長が主役だと勘違いしてしまうほどでした。

「信長協奏曲コンチェルト」での小栗信長もとても魅力的でしたが、今回の王道●●路線の信長も完全に自分のものにして、役者として確実な成長が見られます。

主役・北条義時以前の小栗旬さんの大河出演をざっと調べてみると、脇役でも重要な役柄ばかりでした。

・2018年『西郷どん』坂本龍馬
・2013年『八重の桜』吉田松陰
・2009年『天地人』石田三成
・2005年『義経』梶原景季
・【初】1995年『八代将軍吉宗』:徳川宗春の少年時代

だいたい4~5年おきに大河に登場し、もはや押しも押されぬ大河俳優となりました。
今後も時代のキーパーソン的な役柄で登場しそうですね。

新解釈の「本能寺の変」

何度も何度も映像化されてきた「本能寺の変」。
その起因や経緯には、幾通りものストーリーが存在しています。
そう。結果は同じでもそこに至るまでのプロセスの違いにそれぞれ特色が見られます。

当然ですが、現代人の誰も見たことがない世界なので、文献や史跡から想像するしかなく、脚本の解釈も人それぞれ違ってきます。

ましてや本能寺の変の最中、その建物内でいかなる人間ドラマが展開されたのか、目撃した者は誰一人としていない。
それを取り巻く者たちの真の意図もまた、歴史の闇に埋もれたままなのです。

だからこそ、今回の大河における解釈も、あり得ることだと思いました。

長宗我部ちょうそかべが絡む四国政策

今回も本能寺の変への伏線らしきものが出るたびに、何度も身構えてきました。

長宗我部元親(磯部寛之)が登場した瞬間、気の早い私はこの説を採用するのか!とちょっと心が躍りました。
というのも、今までは、説の一つとしてはあげられるものの、メインになったことはありません。

信長の気分による勝手な長宗我部の領地削減は、交渉役の光秀(要潤)の努力を無にするもの。
本能寺の変を起こす起因は、
この長宗我部元親のためか?
それとも自分の面目を守るためか?

どちらにせよ、これを機に長宗我部と結束して本能寺の変に至ったのも有り得ることではありますが、これだけでは理由として弱い。
これをきっかけに、どのように展開させるのかと、楽しみになったのです。

積年の恨み、20年

何より意表を衝かれたのは、信長自ら葬った実弟・信勝の実子である信澄の動向です。

まさか、そうきましたかー。

信澄といえば、優秀な武将で織田の家のために尽くしながらも、光秀の娘を娶ったばかりに共謀を疑われ、自刃に追い込まれた不幸な武将だという認識でした。

その”疑惑”を事実として採り上げるとは、さすが八津弘幸さんだと感心せずにはいられません。
「半沢直樹」を手掛けた脚本家だけに、どんでん返しが上手いと納得してしまったのです。

幼いころより、母・ちよ(樋口日奈)から信長への復讐心を叩き込まれて育ったのであれば、それが深く根付いてしまうのも無理からぬことです。

長年積み上げてきた恨みは信澄の心中で、大きく成長していたようです。

幻は信長の懺悔の現れ

いよいよ最期を迎えるという時、次々と現れた「幻」は、信長にとって自らの生涯を振り返る走馬灯のようなものでした。

戦いに明け暮れた信長の生涯は、膨大な犠牲の上に成り立っていました。

彼はその事実を、心の奥底で常に自覚していたはずで、世に語り継がれる非道な振る舞いも、実は誰より彼自身がその罪深さに苛まれていたようです。

それでもなお、彼を突き動かし続けた大義とは、一体何だったのでしょうか。

その答えは、この一言に凝縮されているように思えてなりません。
「もうよいか、疲れたわ……」

類まれな決断力で乱世を駆け抜けた信長が、なぜあの時、生き延びる道を選ばなかったのか。
その疑問がずっと私の胸に突き刺さっていました。

逃げなかったのではなく、逃げる理由を失ったのではないか―。

死を前にして現れた幻影たちが、彼が命を懸けて奪い合ってきたものの虚しさを、静かに物語っていたように思えました。


信長の夢を引き継ぐ者

信長が最期に見た幻の一つである明智光秀(要潤)に、
「お前じゃない!」と言い放ったのは、この後の自分の後継者のことだと解釈すべきでしょうか。

秀吉(池松壮亮)・秀長(仲野太賀)兄弟も現れていることから、次の後継者を予見していたと取れます。

身も蓋もない言い方をすれば、そりゃ主役ですから、これからの世の安寧の基礎作りは、全て彼らの手柄となるでしょう。

信長の心は本当は清らかだった?

実際、秀吉が「人たらし」だったから信長にも気に入られたという印象が強く、今も暗黙の通説となっています。

しかし今回は信長と信勝という「織田兄弟」の関係性を前面に押し出すことで、従来の信長像とのギャップを描いていました。

もしかしたら、実弟を殺した時に、すでに信長の精神は壊れていたのかもしれません。
残虐な所業も、人を過度に信用して裏切られることも、すべては弟との因縁が正常な判断を欠く原因となっていたのかもしれません。

だからこそ、その後の苛烈な振る舞いは、本来の心を覆い隠す鎧だったか。

「第六天魔王」と自ら名乗っていた信長ですが、死ぬ間際まで弟との因縁に苦しんでいたとしたら、実際には誰よりも「清らかな心」を持っていたということになります。

実は黒い●●はずの豊臣兄弟をどう描く?

本能寺の変以後の史実をみると、豊臣兄弟は決して「白」ではないのが、私の考えです。
というより、これ以後一番得をしたのはやはり豊臣であるのは事実です。

ネタバレになりますが、「信長協奏曲」「へうげもの」でも、この事件の首謀者は秀吉です。
もちろん双方での秀吉のキャラは大きく違いますが、どちらも信長を慕うのは仮の姿であり、内心は欲や復讐で渦巻いているという設定でした。

これは「豊臣兄弟!」ではあり得ないですので、逆にどのように正当化していくのか、脚本家・八津さんのお手並み拝見というところです。

信長の壮大な”夢”が詰まる安土城

夢半ばで斃れた信長の安土城は遺跡として今も琵琶湖に面した安土山にあります。

天正10年(1582)の本能寺の変で、完成からわずか3年後に焼失したため、史料がほとんどなく「幻の城」とも呼ばれています。

特別史跡・安土城跡として、滋賀県近江八幡市と東近江市により現在「令和の大調査」が進められ、あらたな痕跡の発見もあるようです。

今後の発掘で史実を覆すことに繋がるかもしれません。

2023年4月23日撮影

この大手道の階段の下に立った時、思わず涙があふれた感動は今も忘れられません。
何度も映像や画像で見ているのに、実際に目にするとこみあげてくる感情を抑えられませんでした。

頂上から見えた絶景よりも、なぜかこのふもとでの光景の方が深く胸に残っているのです。

理由を考えてみると、ここから見上げた光景に、信長の壮大な夢と無念を一瞬にして感じ取ってしまったとしか言いようがありません。

この安土城は、人の手で破城された痕跡があり、それはやはり秀吉だと推察されています。
跡形もなく安土の信長の痕跡を壊し、すぐ南にある近江八幡に「八幡山城」を築いたのも、どこか秀吉の黒さ●●を感じずにはいられません。

陰にはもちろん、その弟の秀長の悪知恵もあったはずです。


さて、大河はこれから豊臣の絶頂期に向けて物語は進みます。

小栗信長は圧倒的な存在感を放っていましたが、今年の大河においては、あくまでも「前座」みたいなもの。
これからやっと始まる「本編」の展開に期待しましょう。


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