デジタルタトゥーを消したい|アマノ文筆クラブ作品
こちらに参加させて頂きました。
「私の過去、消せませんか?」
国民的アイドル・リナが探偵の俺に泣きついてきた。昨夜、彼女の学生時代の素行不良な写真が流出。「清純派の裏の顔」と大炎上し、ネットに刻まれたデジタルタトゥーとなっていた。
「海外サーバーの画像は、物理的には消せない」
俺が告げると彼女は絶望に沈んだ。だが翌朝、不可解なことが起きる。検索結果から例の写真が“消滅”したのだ。
「一体どんな凄腕ハッカーが?」
首を傾げる俺に、助手が笑ってスマホを見せた。
「消したんじゃないですよ。沈めたんです」
検索ワード『リナ 不良』。トップに並ぶのは、昨夜から突如始まったファン達による『リナに似合う最強ヤンキー設定』という大量の妄想イラストや小説だった。
数万の“推し”たちの愛ある投稿がアルゴリズムを味方につけ、悪意ある元画像を検索結果の深海、数百ページ目へと追いやったのだ。
「最高のファンですね」
画面の中で、特攻服を着た彼女のイラストがピースをしていた。
ネットは悪意だけでは出来ていない。
(了)
