鶴岡八幡宮編・弍|静寂の水面に映る物語
─源氏池と太鼓橋──
三の鳥居をくぐった瞬間、空気がひんやりと澄んだものへと変わる。朝の境内は、いつ来てもどこか水の底にいるような静けさがある。
人影もまばらで、砂利を踏む音が自分自身の呼吸と重なり、世界の音がひとつにまとめられていく。
この静けさの中を歩いていくと、ふわりと風が流れ、その先に広がる光景が見えてくる。源氏池だ。
源氏池は、池の形そのものに意味が込められている。東側に位置し、「三つの島」が浮かぶことから「三」は吉数、源氏の栄華を示すものと伝えられる。私がこの池に惹かれるのは、ただの景観の美しさだけではない。
水面に映る空や鳥の動き、そしてわずかに揺れる波紋。それらが、今この瞬間でありながら、どこか遠い時代の気配をふくんでいるからだ。
季節によっては蓮の花が咲き、朝日を受けて淡い光を返す。花弁のひとつひとつがまるで時間を柔らかく包んでくれているようで、私はしばらく立ち止まってしまう。
ここには、静かにしているだけで心の奥の波立ちが穏やかになるような優しさがある。
ここから先は
1,114字
¥ 300
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで
この記事が参加している募集
ありがとさま‼️ これで美味しい珈琲豆を買いにいきます☕️✨
