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鹿の魔導士 プロローグ

★鹿の魔導士 プロローグ

原作・絵 ちろ/文 スピカ



深い、深い、最果ての森。そこは星の光の雫が、そのまま朝露になって草木を濡らすような美しい場所。その奥で、一人の娘が静かに座り込んでいた。

彼女の両手は、夜空を駆ける流星の尾のように細く、しなやかだった。彼女がそっと指先を動かすと、季節のような、ぽっと灯る優しい魔法の光が生まれた。その光は、悲しむ人の心に寄り添い、温かいクッションのように包み込む力を持っていた。


魔女


けれど、いつしか力を持たない人々は、その美しい光を恐れるようになってしまった。
「まぶしすぎる光は、私たちの目を眩ませるかもしれない」
そうして、彼女は夜の静寂に紛れ、この森へとたどり着いたのだ。
「私はただ、みんなの夜が寂しくないように、灯りをともしたかっただけなのに……」
ぽつり、と夜露のような涙がこぼれたとき、カサリと草を踏みしめる柔らかな音がした。


出会い


見上げると、木の間に一匹の鹿が立っていた。
鹿の瞳は、まるで銀河の星々をそのまま映し込んだように深く、澄んでいた。そこには人間たちのような恐れはなく、ただ静かな優しさだけが満ちている。
彼女が華奢な手を伸ばすと、鹿はゆっくりと歩み寄り、彼女の細い掌に温かい鼻先を預けた。
「……怖くないのね。ありがとう、優しいお友達」
彼女は微笑んだ。けれど、彼女の命の灯火はもう、明け方の星のように小さくなっていた。このまま自分が消えても、世界を温めようとした祈りは残したい。
「この世界はね、本当は星降る夜みたいに優しいもので満ちているの。私の光を、あなたに託してもいい?」
鹿は静かに耳を動かし、星のまたたきのような瞳で彼女を見つめた。


託された願い


彼女は最後の力を集め、両手を鹿の額に当てた。
手から溢れ出たのは、満月の夜の月光のような、優しく澄んだ黄金色の光だった。光は鹿の身体に染み込むように溶けていく。彼女の姿が、光の粒子となって夜空の天の川へと還っていくのと引き換えに、鹿の身体に静かな魔法が起きた。
鹿の前足は、驚くほどしなやかで、美しい「手」へと変わっていた。指先からは、穏やかな魔力がみなぎっている。
森の静寂のなかに、新しい鹿の魔導士が誕生した。彼は新しく得た自分の手を不思議そうに見つめ、それから、かつて魔女がいたあたたかな空間と、彼女が旅立った美しい夜空に向かって、静かに頭を下げた。


鹿の魔導士




私の「鹿の魔導士」の絵に、スピカさんが文章をつけてくださいました。

こういう形でコラボしてくださったスピカさんに感謝しかないです。
ゆっくり連載になるかと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。

★是非コメントで感想を聞かせてくださいね!✨

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