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【特集 医療的ケアが必要な子どもと,きょうだい, 家族によりそう ②病気のある子どもの「きょうだい」支援~子どもたちが教えてくれること~】

NPO 法人しぶたね 清田悠代

2025年6月号の特集は「医療的ケアが必要な子どもと,きょうだい, 家族によりそう」。そのなかから紹介する2本目の論文は,自身の経験から立ち上げたきょうだい支援の活動を通して子どもたちが教えてくれていること,そして,子どもにも大人にも安心を増やすために何ができるかについてご執筆いただきました。
※こちらの記事は、『チャイルドヘルス2025年6月号』に掲載されたものです。記事の著作権は株式会社診断と治療社に帰属しており,無断での転載は禁止されています。



わたしのこと

 弟が入院する病院は,感染予防のために,中学生以下のきょうだいは病棟の扉の先に入ることができませんでした。小さなきょうだいたちは,ロビーの椅子 や,廊下にレジャーシートを敷いて座って,親御さんが面会から戻ってくるのを何時間も待っていました。2,3 歳の女の子が「ママ,ママ」と扉の前で母親を求めて来る日も来る日も泣いていて,その子の隣に座りながら「こんな小さな子どもが毎日ひとりで泣いていることが当たり前になっていてよいのだろうか」と感じていた疑問や悲しさが,今の活動の原点です。
 一方で,自分が抱えていたつらさを自覚したのはずっと後になってからでした。弟が死んでしまうのではといつも不安だったこと,だれかに「ここにいてもいい」と言ってほしかったこと,友人にはあるキラキラした未来が自分にはないと思っていたこと,私にも病気の弟にするみたいに親ばかみたいなことをしてほしかったこと……。当時は,自分の悩みごとは,弟の命の重さと比べるとどれもちっぽけなことにみえて,こんなことがつらいはずがないと自然に思っていました。つらかったことに気づき,言葉にできるようになったのは,同じ立場のきょうだいに出会い,自分のなかにあったのと同じ気持ちを言葉にするのをみることができたからです。今,講演会などできょうだい支援のお話をさせていただくと,終了後に「今日初めて,自分に支えがほしいと思ってよかったんだと思えました」と伝えてくださる大人のきょうだいに毎年出会います。子ども時代には自覚しづらいつらさがあることを知っていたいです。

「しぶたね」を立ち上げて

 2003 年,重い病気のある子どものきょうだいのサポートを広げるため,社会福祉士や保育士の仲間と 3 人で「しぶたね」を立ち上げました。
 「しぶ」は,性別や年齢の上下に関係なく兄弟姉妹を表す英単語「シブリング(sibling:きょうだい)」から,「たね」は,きょうだいたちの安心が増えるように,みんなで「たね」を蒔いて増やしていこうという思いから,あわせて名付けました。
 アメリカで広く行われている,特別なニーズのある子どものきょうだいのためのプログラム“Sibshops”をベースに,きょうだいが主役にな り,安心の空気のなかであそびきる ワークショップ「きょうだいさんの日」の開催から活動をはじめ,病院の廊下で面会中の保護者を待つきょうだいとあそぶ活動,きょうだいのための小冊子の作成配布,寄稿や講演,支援者養成とネットワークづくりを目的とした「シブリングサポーター研修ワークショップ」の開催(2024 年 12 月現在,32 都道府県で80 回開催し,修了者は 2,424 名),4月 10 日の「きょうだいの日(シブリングデー)」にあわせた啓発など,きょうだいたちに導かれて活動は広がっていきました。
 活動を始めてすぐに,きょうだいを思う大人の優しい気持ちにふれる機会が次々にやってきました。親御さんの「きょうだいのことをもっとみてあげたい」と思う気持ちや,支援者の方の「ちょっと心配なきょうだいさんに何かしてあげたいけど……」と悩んでいる気持ち…… きょうだいたちの頑張りを社会に伝えるのと同時に,きょうだいたちに,この優しい気持ちを伝えることも,私たちの役割のひとつだと思うようになりました。
 「たねまき戦隊シブレンジャー」は7 色の,きょうだいのためのヒーローです(写真 1)

写真1 たねまき戦隊シブレンジャー

「どんな色の気持ちでも,変化してもいいんだよ」「真っ黒の気持ちにも居場所があるよ」を子どもたちに伝えています。

きょうだいの気持ち, 親御さんの気持ち

「何が起こったの? お姉ちゃんとママはいつ病院から帰ってくるの?」
「私は,価値がないほうの子どもだから」
「弟は入院して頑張っているのに自分だけ楽しんでいいのかな」
「家族でお出かけすると周りの人が車椅子のお兄ちゃんをじろじろ見てくるのが嫌」
 子どもが大きな病気になったとき……きょうだいたちもまた,不安や孤独感,嫉妬,罪悪感,あきらめ,プレッシャーなど複雑な気持ちを抱えて頑張っているかもしれません(図1)

図1 きょうだいのもちやすい気持ち

 きょうだいの気持ちは成長に従い変化していきます。幼児期には親御さんとの関係が重要になるかもしれませんし,学齢期からは少しずつ世界が広がって,それに伴う悩みも出てきます。大人になると結婚や親なき後のことなど,現実的な問題に直面することもありますし, 子ども時代の経験が人格形成に影響を与え,大人になっても生きづらさを抱え続けているきょうだいもいます。
 日々の活動のなかで,親御さんのきょうだいへの思いにもふれてきました。「この子をきょうだい児にしてしまった」「放置するしかなかった」選ばれる言葉から強い自責感が伝わってくることも多いです。
 親御さんに向けては,「きょうだいのことをもっとみてあげて」という自責感につながるメッセージを渡すのではなく,親御さんがきょうだいを思う気持ちが,きょうだいにも,親御さん自身にもみえやすくなるための日々の小さな工夫をともに考えたいと思っています。頑張りすぎて,きょうだいが親御さんへの甘え方がわからなくなってしまうこともあります。たとえば,スキンシップをはかれるゲームを楽しむことで「こんなふうに甘えていいんだ」「うちの子かわいいな」と,お互いを「大好き」な気持ちがみえやすくなることもありました。
 家族は風に揺れるモビールのようにつながっていて,誰かが病気になったり,障がいがあるとわかったとき,みんなが揺れています。家族のメンバーはそれぞれに影響を受け,意識的に,あるいは無意識のうちに,バランスを戻すために心身のエネルギーを使っているかもしれません。家族のなかだけで解決しなければと思うと,「親だからもっと頑張らなければ」「お父さんもお母さんも大変そうだから自分が我慢しなければ」と,だれかのためにだれかが我慢をしたり,みんなが苦しい気持ちを抱えている状態になることがあるのですが,本当は,家族のモビールの周りには,ともにありたいと願う人々がいて,その周りには地域や社会があります。家族が病気になれば,モビールが揺れるのも,揺れている同士でバランスをとるのが難しいのも,当然のことです。きょうだいのつらさは,家庭の問題ではなく,社会の問題です。モビールを支える手が社会の側に増えることを願っています。

きょうだいに出会う人は, きょうだいの支えになれる人

 きょうだいのために,たとえば, 微笑みかけること,話を聴くこと, 情報を渡すこと,一緒にあそぶこと,仲間に会える場をつくること, 世界を広げること,困ったときに相談できる存在でいること……大人ができることがたくさんあります。
 看護師さんが名前を呼んでくれたことをずっと大切に覚えている子, 障害のある弟のデイサービスの送り迎えについていくといつも話しかけてくれるスタッフさんがいて嬉しいと教えてくれた子,「将来,パパとママが死んでしまったら,医ケアの妹のことは私が看るの?」と訪問看護師さんに尋ねた子,学校の先生や習い事に行く時間が心の支えだったと話してくれる子もいます。もちろん,親御さんがきょうだいにとって一番の安心の土台であることは変わりませんが,その土台の上で,さまざまな大人に出会い,大切にされる経験を積めるとよいと感じています。親以外の大人にも大切にされた経験は,子どもたちが自分を信じる力につながっていきます。子どもたちのすてきなところをたくさんの大人でみつけたいです。
 「きょうだいの支援ができていない」と感じる人は,その時点で既に大切な応援団の 1 人です。きょうだいの近くにいる大人が,相談できるネットワークにつながっておくことは,子どもたちにも,大人にも,「お守り」になります。1 人ですべて解決しなくてはと思わず,優しさの重なるところで子どもたちを受け止められるように,これからもご一緒に,きょうだい支援の輪を広げてくださるとうれしいです。


著者プロフィール

大阪府立大学社会福祉学部社会福祉学科卒業。心臓病の弟がいた経験から,病気のある子どもきょうだいの支援を志し,2003 年任意団体「しぶたね」を設立。きょうだいたちに導かれながら,各地のきょうだい支援の輪の広がりに貢献できるよう活動を広げています。