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『早く食べて!』が子どもの偏食を強くする——14,000人の追跡データが示す傾向

食べるのが遅い子を急かすとなぜ逆効果になりうるのか

「早く食べて」「もう時間だよ」——忙しい朝や夕食時、つい急かしてしまう場面は誰にでもあります。でも、食べるペースがゆっくりな子を急かし続けると、食事そのものが嫌いになってしまう可能性があることを、研究が示しています。

Taylor & Emmett(2019)は、イギリスの大規模出生コホート(ALSPAC、約14,000人)を中心に偏食の原因と結果を整理しました。そこで繰り返し確認されたのが、「食べることへの圧力は偏食を悪化させる」という知見です。

食事を急かすことがなぜ逆効果なのか——研究が示す傾向

ALSPACコホートでは、38ヶ月(約3歳2ヶ月)時点で15%の子どもが偏食と分類されました。偏食の有病率は研究によって6〜50%と幅がありますが、一定の割合の子どもが食の困難を抱えているのは確かです。

イギリスの研究集団では、偏食の子どもは非偏食児と比べ、肉の摂取が約40%少なく、野菜が約48%少なく、果物が約33%少ないと報告されています。ただし、これはイギリスの食文化を前提とした数値であり、日本のお子さんにそのまま当てはまるとは限りません。

とりわけ重要な知見は、「食べることへの圧力(プレッシャー)が偏食を悪化させる要因として繰り返し報告されている」という点です。親が「あと一口」「残さず食べて」と促すほど、子どもは食事を苦痛に感じやすくなります。これは因果関係が確定しているわけではありませんが、複数の研究で一貫した傾向です。

もうひとつの注目点は、生後9ヶ月以降に塊のある食べ物の導入が遅れた場合、偏食のリスクが高まる可能性があるという報告です。食べるペースが遅い背景には、噛む機能の発達も関係しているかもしれません。

研究の詳細——何がどこまで分かっているか

Taylor & Emmett(2019)のナラティブレビューは、ALSPACコホートを中心に偏食の定義・有病率・原因・結果を包括的に論じたものです。ナラティブレビューは、系統的レビュー(=事前に定めた基準で文献を網羅的に検索・選定する手法)とは異なり、著者の専門的視点で研究を選び解説する形式のため、網羅性では限界があります。

ただし、ALSPACは約14,000人を出生から追跡している大規模研究であり、偏食に関するデータの蓄積は豊富です。食事への圧力と偏食の関係は、他のコホート研究でも同様に報告されており、一つの研究だけに依存した知見ではありません。

この研究を読むときに知っておきたいこと

・ALSPACは主にイギリスの一地域の研究であり、文化的背景が異なる
・横断研究(=ある一時点でのデータを分析する手法)が多く含まれており、因果関係は確定していない
・偏食の定義が研究間で統一されていないため、数値の比較には注意が必要

日本の食文化は欧米と大きく異なります。研究結果を参考にしつつも、目の前のお子さんの様子をよく見ることが最も大切です。

今日からできること

1. 「早く食べて」を減らしてみる。子どもには子どものペースがあります。
2. 食事時間に5分でも余裕を持てるよう、生活リズムを少し前倒しにしてみる。
3. 食べるのが遅い理由を観察する。噛むのに時間がかかる、量が多すぎる、気が散りやすいなど、原因によって対応は異なります。
4. 食べ終わらなくても一定時間で切り上げる日があってもよいと割り切る。

食卓が「早くしなければ」という場になるよりも、少し残しても笑顔で終われる方が、子どもの食の発達にはプラスに働く可能性があります。

Taylor CM, Emmett PM. Picky eating in children: causes and consequences. Proc Nutr Soc. 2019;78(2):161-169.

※ 本記事は国際的な研究知見と保育現場の経験をもとにした一般的な情報提供です。個人差があり、すべてのお子さんに当てはまるものではありません。お子さんの健康や発育に関するご不安は、かかりつけの医師・専門家にご相談ください。情報は投稿時点のものであり、新しい研究によって見解が変わる場合があります。

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