菜花の寄り道🔞 第三話
菜花が二つ目のグッズを使ってから、さらに一週間が経った。
月曜の午後、部署のデスクで資料をまgとめていると、小柄な後輩が近づいてきた。
「小森乃さん、ちょっといいですか?」
天建寺鈴だった。ストレートの長い黒髪を低めの位置で一つにまとめ、柔らかい笑顔を浮かべている。菜花より一つ年下の二十五歳。若手女性は今、この部署に二人だけだ。
「あのですね、今週末、うちの人が出張で金曜の夜から月曜まで帰ってこないんですけど……せっかくだから、久しぶりに飲みに行きませんか? 駅前の、前に二人で行った個室居酒屋ですけど」
こうして金曜の夜、二人は駅前から徒歩五分のビルの地下にある落ち着いた個室居酒屋にいた。
小さな掘りごたつの個室で、まずはビールで乾杯する。仕事の愚痴や最近のドラマの話で盛り上がった後、アルコールがほどよく回ってきた頃、鈴が少し声を落とした。
「ねえ、菜花さん。最近……雰囲気変わってませんか?」
菜花はグラスを持つ手を止めた。
「え……そう?」
「はい。なんか、ふわっと柔らかくなったっていうか……いえ前からそうなんですけどねえ、よりいっそう」
鈴はにこっと笑って、ストレートヘアを耳にかける。
菜花は迷った末、声を震わせながら小さな声で言った。
「……実は、最近……あのね、電気で…リラックスする…お、おもちゃ、買っちゃって……」
鈴の目がぱっと大きくなった。
「え……! 菜花さん、初めてだったんですよね……?」
菜花は耳まで真っ赤になって、グラスを置くと両手で顔を覆った。指の間から視線を泳がせると、か細い声で続ける。
「……うん。口紅みたいな細いスティック型と、チューリップの蕾みたいな……の。二つ買っちゃったの。最初は怖くてパジャマの上から当ててたんだけど……だんだん気持ちよくて……つぎにお風呂で使ったときは、すごく……溶けちゃうみたいになっちゃって……」
菜花はそこで言葉を詰まらせ、再び顔を両手で覆った。鈴は驚きつつも、優しく目を細めて聞いた。
「へえ……お風呂で……。結構大胆っていうか、でも……リラックス、できたんですよね?」
鈴は少し頬を赤らめながら、グラスを傾けて一口飲むと小さく笑って言葉を続けた。
「いいじゃないですか、最近お仕事も忙しかったし、自分を知るためのご褒美、素敵ですね」
「私なんて、高校の時から旦那と付き合ってて……何かと結構早かったから、新婚生活になってからも、さらにいろいろ試してたり。今は新居探し中だけど……家ではやっぱり自由にできるのが嬉しいし……」
菜花は指の隙間から鈴の顔を覗き、驚いたように目を丸くした。鈴は照れくさそうにストレートヘアを指でいじりながら
「九年選手のくせに、まだまだ新鮮な部分もあって……ふふ。菜花さんの新しい発見、ぜひ教えてほしいなぁー」
その夜の女子トークは、いつもよりずっと甘く、親密で、少しだけ危険な空気すら帯びていた。
店を出たあと、夜風に当たりながら鈴が言った。
「菜花さん、今日話してくれてありがとう。なんか楽しそうで、私まで嬉しくなっちゃった。また飲みましょうね。今度はもっとディープな話、期待してますよ?」
菜花はまだ頬の熱が引かないまま、小さく頷いた。
「……うん、またね、鈴さん」
二人の距離が、また少し近くなった金曜の夜だった。
――おしまい
