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世代と国を越えて受け継ぐ、旅の記念

「おじいちゃん、それなに」

ある日、祖父母の家に遊びに行った時、祖父が引き出しから「海外での思い出の品」を取り出し、見せてくれたことがありました。

…なんてことはない、「記念メダル」でした。

まだ小学生だったこともあり、海外には全く縁がなく、「おじいちゃんが大事にしている記念メダル」以上の価値を感じることはなかったのです。

その後、月日は流れ、20年が経ちました。

大学卒業後に就職をし、数年経った頃、突然英語に興味を持ち始めたのです。思い立ったら即行動をするタイプなので、留学するなら今しかないと仕事を辞め、カナダへ留学することにしました。

それを聞いた祖父は、留学へのはなむけに、いくらかのカナダドルを私に手渡し、海外での思い出話もしてくれました。

その時に、例の「記念メダル」を再び目にする機会がやって来たのです。2回目に見た「記念メダル」は、未経験だった海外生活の断片を感じられる話と共に、非常に印象的でした。

人は、どこへ興味が向いているかで、同じものを見てもこれほど感じ方が違うのだと実感したので、よく記憶しています。

「記念メダル」には、サンフランシスコの文字がアルファベットで並んでいました。

〈このメダルはアメリカから来たんだ〉と私はメダルを自分の手のひらに載せ、思いを巡らせました。アメリカは、まだ足を踏み入れたことのない土地であり、当時は英語が話せなかったので、ある種の憧れでもありました。

祖父は、そのメダルを手に入れた時のことや、街がどのような雰囲気だったかを教えてくれました。目の前にまるでその景色が広がっているかのように、1つ1つを丁寧に振り返りながら、その時の様子を話してくれたのです。

そして、不意にこんなことを口にしました。

「歳を取ったから、もう飛行機に乗るのも大変だし、いい思い出だ」

どこか寂しそうな顔をしながら、自分に言い聞かせるようにうつむいていました。

その姿を見た時、あることが思い浮かんだのです。

〈これを受け継ごう〉

ただ、直感的にそう思ったのです。

当時の私には海外経験はなく、英語も話せませんでした。本当にできるのかはわかりませんでしたが、なぜかできるような気がしたのです。単純に、祖父を喜ばせたかったのだと思います。とにかく海外へ行ったら、記念メダルを作り、その時々の旅の思い出を祖父に話しに来よう。そうしたら、きっと喜んでくれる。

その後、留学を終え、英語が話せるようになった私は、世界の様々な場所へ旅立ちました。そして、機会を見つけては旅先で記念メダルを作るようになったのです。

実際に作った記念メダル

先日、家の片付けをしていた時に出てきた記念メダルの数々。1つ1つを眺めると、その時の思い出が一気に蘇ってきました。だからこそ、祖父は大切なサンフランシスコの記念メダルを私にくれることはなかったのだと、理解しました。

ただ不思議なのは、私もサンフランシスコへ行って、祖父の持っていた絵柄と同じ記念メダルを作って来たはずなのに、手元にないことでした。おそらく、写真にある記念メダルは私のコレクションの一部で、まだ家のどこかに眠っていると思われます。こうしたところは性格が出ますね。

数年前、祖父は亡くなりました。でも、この記念メダル集めはまだ続けています。

そして、この話には続きがあります。

実は、ユーロには、記念メダルだけではなく、「記念紙幣」があることを知ったのです。

このような背景があるので、それは集めずにはいられないと、初めて知ったその瞬間から大興奮でした。

そして、先日ドイツ国内を旅行した時に、早速手に入れてきました。

それがこちらです。

ニュルンベルクを象徴するお城が印刷されています。

面白いのは、お札を見てわかるように、「ゼロ」ユーロなんです。

要は、0ユーロに3ユーロを払うという矛盾。

道行くドイツ人も、ドイツ人夫も、大興奮の私に対し、絶対買わないと苦笑いをしていました。

でも、私の真横でぴょんぴょんとその興奮を分かち合ってくれる我が子がいました。

しかし、一瞬で予想外の展開に。

「ママ~。ありがとう。プレゼントしてくれるんでしょ」

なんと、我が子は自分のために、私が購入したと思っていたのです。まさかの展開に唖然としましたが、こうなったら仕方がないので…

「そうだよ。でもゼロユーロだから使えないからね。記念だよ」と言って、手渡しました。

その後、旅を終え、自宅のあるベルリンに戻りました。

そして、先日、家族に内緒でこっそりベルリンの記念紙幣を買いに向かいました。

でも、いざ手にするとやっぱり嬉しくなって、我が子に見せてしまったのです。すると、再びお礼を言われ、手渡すことに。

現在、ベルリンの紙幣も我が子が大切に保管しています。

見せる前に撮影したお札

母と子で楽しんでいる「記念紙幣」集め。ドイツ人夫はいくら使うのかと言いたそうですが、しばらくは家族で楽しめる新しい趣味になりそうです。

きっと祖父は、空からこの様子を見て、笑っていることでしょう。

#創作大賞
#エッセイ部門


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