【日経新聞より】「見えない資産」に値段はつくのか──のれん償却が映し出す経営者の覚悟


「見えない資産」をどう費用にするか
――のれん償却の議論に見る、
経営者の『覚悟』とは
今朝の日経新聞一面に、「のれん償却 維持で決着」
という記事が掲載されていた。
一見すると、会計士や経理担当者だけの専門的な
ニュースに見えるかもしれない。
しかし私は、この議論の本質は
「会計ルール」ではなく、
「経営者が未来とどう向き合うか」
という姿勢そのものだと感じた。
今日は社外CFOの視点から、
このニュースを読み解いてみたい。
第1章 そもそも「のれん」とは何か
企業を買収するとき、相手企業の純資産以上の
価格で買うことは珍しくない。
例えば、純資産200億円の会社を300億円で
買収した場合、その差額100億円が
「のれん」と呼ばれる。
この100億円は、
・ブランド力
・技術力
・優秀な人材
・顧客との信頼関係
・企業文化
など、決算書には載らない
「見えない資産」への対価である。
つまり、「将来稼ぐ力」にお金を
払っているとも言える。
第2章 日本と世界では考え方が違う
問題は、この「見えない資産」
をどう費用として扱うかだ。
日本では、20年以内で毎年少しずつ費用化していく
「定期償却」が採用されている。
一方でIFRS(国際会計基準)や米国基準では、
毎年の償却は行わず、価値が下がったと判断した時だけ
一括で損失計上する「減損方式」が採られている。
そして今回、日本の会計基準を決めるFASFは、
「定期償却を維持する」と正式に判断した。
つまり、日本はこれまで通り慎重な会計を
続けることになったのである。
第3章 数字が語る、
日本企業と欧米企業の違い
記事の中で興味深かったのは、
「のれん」が株主資本に占める割合だった。
欧米企業では20〜30%という企業も珍しくない。
一方、日本企業はわずか数%程度。
これは単なる会計基準の違いではない。
M&Aに対する姿勢そのものの違いだ。
欧米企業は積極的に未来へ投資する。
日本企業は慎重に積み上げる。
どちらが正しいという話ではないが、
企業文化の違いが数字にはっきり表れている。
第4章 利益を守るか、
リスクを先送りするか
非償却方式には大きなメリットがある。
毎年の利益が減らないため、業績は良く見える。
しかし、その反面、一度価値が下がると
巨額の減損損失を一気に計上することになる。
株価が急落したり、経営責任が問われたり
するケースも少なくない。
一方、日本の定期償却は毎年利益を圧迫する。
しかし、その分リスクを少しずつ吸収していく
ことができる。
これはまるで、
「毎月コツコツ返済する住宅ローン」と、
「最後に一括返済するローン」
くらい考え方が違う。
第5章 社外CFOとして考えること
私は中小企業の経営支援をしているが、
この話は決して上場企業だけの問題ではない。
会社を買う。
事業を譲り受ける。
ブランドを引き継ぐ。
どれも「見えない価値」に投資する
という意味では同じである。
その価値をどう評価し、
どれだけ慎重に未来を見積もるか。
そこに経営者の姿勢が現れる。
第6章 会計基準より大切なもの
今回のニュースは「のれん償却維持」で終わる話ではない。
私には、
利益をどう見せるかではなく、
未来にどれだけ責任を持つか。
そんな経営哲学が問われているように感じた。
社外CFOとして私が大切にしたいのは、
数字を整えることではない。
経営者が安心して未来へ挑戦できる
財務基盤をつくることだ。
見えない資産には、必ず「期待」が含まれている。
だからこそ、その期待を現実に変えていく覚悟が、
経営者には求められるのではないだろうか。
