尺度得点なんだから本来は平均を使って t 検定や分散分析でいいはずなのに、Shapiro–Wilk で p < .05 になってしまった…

よくある問題です。何でもかんでもノンパラ検定に逃げる必要はありません。

1. まず確認すべきこと:正規性検定を“鵜呑み”にしない


  • 正規性検定(Shapiro–Wilk, Kolmogorov–Smirnov など)は

    1. 完全な正規分布かどうか」を問うテストです。

  • 尺度得点(合計点)は

      • 上下に**上限・下限(1〜6点×項目数)**があり

      • 人間の回答なのでちょっと歪むのが普通

  • サンプルサイズがそこそこ大きい(n ≈ 200 など)と、

      • ほんの少しの歪みでも p < .05 になりやすい

        1. → 「現実に困るレベル」かどうかとは別問題です。

なので:

p 値だけで「正規じゃないからパラメトリック不可」と判断するのはやり過ぎ

Rasch, D., Kubinger, K. D., & Moder, K. (2011).

The two-sample t test: Pre-testing its assumptions does not pay off. Statistical Papers, 52(1), 219–231.

になります。



2. 実務的な判断フロー

だいたい、次の順で見るとよいです:

(1) ヒストグラム・Q-Qプロットを見る

  • 総合点のヒストグラム

  • Q-Qプロット(正規分布と比べたときのズレ)

を見て、

  • ちょっと歪んでいるけれど「明らかに二山・極端な裾」ではない

  • 極端な外れ値が少ない

  • 天井効果・床効果が「致命的」ではない

くらいであれば、

t 検定・分散分析などのパラメトリック検定をそのまま使ってよい

Glass, G. V., Peckham, P. D., & Sanders, J. R. (1972).

Consequences of failure to meet assumptions underlying the fixed effects analyses of variance and covariance. Review of Educational Research, 42(3), 237–288.

とされることが多いです(中心極限定理と「ロバスト性」のおかげで,平均の比較はかなり頑丈です)。

(2) サンプルサイズ

  • 各群が n ≧ 30 程度あるなら

    1. 多少の正規性違反はあっても平均の推定はかなり安定です。

なので,「総合得点を t 検定や ANOVA で比較する」という方針は、

正規性検定が棄却されたとしても実務上は許容範囲と考えてよいです。



3. それでも気になる場合の選択肢

「どうしても正規性が気になる/査読を意識して慎重にしたい」場合は:

① ノンパラメトリックを併用して記述的に示す

  • メインは t 検定(平均 ± 95%CI,d など)

  • 補足として Mann–Whitney の結果と r を出し、

    1. 両方で結論が変わらなかった」と書く

これは実務的にとてもよく使われます。

② ブートストラップによる信頼区間

  • 正規分布を仮定せず、

  • 平均差・効果量 d などの 95%CI をブートストラップで出す

分布の形にあまり依存しない推定」として説得力が上がります。

③ どうしても正規性がひどいとき

例えば:

  • ほとんどの人が上限点近く(天井効果バキバキ)

  • 片側に大きく寄っていて「平均」自体が微妙

のような場合は、

  • 中央値や百分位点(四分位)を主に報告

  • 検定もノンパラメトリック中心

  • あるいは「そもそもこういうスコア分布自体が結果」として記述的に扱う

という割り切りもアリです。


4. 「尺度合計点」という性質をどう書くか

  • 6件法の項目 × 多数(20項目程度)

  • それを合計/平均した 総合得点

の場合、

理論的には「ほぼ連続量」とみなして正規分布近似を使うのは妥当


Blanca et al. (2017)
Blanca, M. J., Alarcón, R., Arnau, J., Bono, R., & Bendayan, R. (2017).
Non-normal data: Is ANOVA still a valid option?
Psicothema, 29(4), 552–557.

と多くの統計書や実務家が考えています。

論文では例えばこんな書き方ができます:

本研究で用いた防災意識尺度総合得点は,6件法20項目の合計得点であり,理論上は近似的に連続量として扱うことが妥当と考えられる。

Shapiro–Wilk 検定では一部の群で正規性の仮定が形式的に棄却されたものの,ヒストグラムおよび Q-Q プロットを確認した結果,極端な歪度や外れ値は認められず,t 検定や分散分析のロバスト性(軽度の正規性違反に対する頑健性)を考慮してパラメトリック検定を適用した。

なお,補足的にノンパラメトリック検定も実施したが,結論に大きな違いはみられなかった。


5. まとめ(この質問へのストレートな答え)


Q. 尺度化された合計得点は本来正規とみなしてよいと思うが,自分が取ったサンプルでは正規性が棄却された。どうすればいい?

  • 正規性検定の p < .05 だけで「パラメトリック禁止」とはしない

  • ヒストグラムや Q-Q プロットで「現実に困るレベルか」を見る

  • 群ごとに n≧30 あり,歪みが軽度なら

    1. → t 検定・ANOVA を使ってよい(ロバスト性に頼る)

  • 気になる場合は

      • ノンパラメトリックも併用して「結論が変わらない」ことを確認

      • あるいはブートストラップで平均差や効果量の CI を出す

  • その判断過程を方法や結果のところに一言書いておくと,査読者にも説明しやすい


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