詩のような物語 十二か月(3)三月 三月は、
三月は、まだ寒さを言い訳にしながら、
それでも確実に前へ進んでいる月だ。
コートのポケットに残ったままの手袋と、
少し軽くなった心。
同時に抱えて歩くことを、
誰も責めたりしない。
三月は、決意の月じゃない。
芽吹きの準備をしているだけの月。
土の下で、
「まだだよ」と言いながら、
ちゃんと力を溜めている。
昨日と同じ景色なのに、
光だけが少し違う。
それだけで、
生きていける気がする。
急がなくていい。
咲く順番を比べなくていい。
三月は、
迷いながら進む人の背中を、
いちばんよく知っている。
だから今日も、
静かに息をしていればいい。
春はもう、
あなたを見つけている。
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