【心に効く音楽 2】喪失や別れ、どうしようもない悲しみに寄り添うクラシック
はじめに
大切な人やものを失ったとき、
ふいに訪れる「喪失感」は、
どんな言葉でも慰めきれないことがあります。
悲しみにどっぷり浸かっている自分を責めたくなったり、
何かをしなきゃと焦ったり、
でも動けなかったり。
そんなとき、音楽だけは、
なにも求めず、なにも押しつけずに、
ただそばにいてくれる気がします。
わたしの小さな体験から
何年も前のこと。
ある人との別れが、わたしにとって想像以上に大きな痛みでした。
日常は回っていて、
仕事も舞台もレッスンも、
すべて予定通りにこなしていたけれど、
心はぽっかり穴があいたよう。
人に話すことでもない、
自分の中にとどめておくしかないその想いを、
夜、音楽の中に沈めていました。
悲しみは消えなくても、
音楽に包まれることで少しずつ和らいでいく。
そんな時間があったから、
いまの自分がいる気がします。
こんな夜に寄り添ってくれる音楽たち
■ フォーレ:《レクイエム》より「ピエ・イエス」
清らかで静かな祈りに満ちたソプラノ独唱の1曲。
「慈悲深きイエスよ、永遠の安息を与えてください」というラテン語の歌詞も、
意味がわからなくても、ただ聴くだけで心が落ち着いていきます。
■ マーラー:《アダージェット》(交響曲第5番 第4楽章)
弦楽器とハープだけで奏でられる、静かな哀しみの音楽。
「悲しみ」そのものというより、
悲しみを乗り越えようとする心の軌跡を描いたような曲。
ゆっくりと深呼吸しながら聴いてみてください。
■ モーツァルト:《レクイエム》より「ラクリモーサ」
「ラクリモーサ=涙の日」という意味のこの曲は、
モーツァルトが亡くなる直前に作曲していた、まさに命の終わりを見つめる音楽。
大合唱が静かに始まり、次第に感情がこみあげてくる構成は圧巻です。
■ ブラームス:《ドイツ・レクイエム》より
「あなたがたはい今しばしの間、悲しみを抱えている」
大切な人を失った人のために、残された者が歌うレクイエム。
聖書の言葉に、ブラームス自身の優しさと祈りがこめられています。
深い悲しみの中にも、そっと光を差してくれるような一曲です。
おわりに
悲しみは、急には消えません。
無理に忘れようとしなくても、
立ち直るタイミングはきっとそれぞれにあるはず。
そんなとき、音楽だけがそっと寄り添ってくれることもあります。
この連載では、心のさまざまな瞬間に効くクラシック音楽を、少しずつ紹介しています。
よかったら、また聴きにきてくださいね。
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