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年末年始のあれこれ。③ 「200m先の熱」を読んで考えた「一緒に生きる」ということ

年末年始は少し時間に余裕ができるからでしょうか。
普段は流してしまうような言葉や物語が、妙に心に残ることがあります。

昨年の年末に何気なくLINEマンガで読み始めたのが
桃森ミヨシさんの『200m先の熱』でした。

LINEマンガで8巻まで無料で読めます。


少女漫画だと思って読み始めたのですが、
気付けば課金して最新刊まで一気読み。
何度も繰り返し読んで、読み終えた後もしばらく頭から離れませんでした。

この作品は、
「誰と恋をするか」ではなく、
「誰と、どう生きるか」を描いた物語だと思います。

200m先に住む幼なじみと、
200m上に住む恋人。

近いのに遠い距離の中で、
主人公の紬が選ぼうとする人生について、自分のことのように考えさせられた年末年始でした。

『200m先の熱』(桃森ミヨシ)あらすじ

『200m先の熱』は、
「近すぎて、遠い」関係に縛られる三人の大人の恋と人生を描いた長編作品。

主人公は20代の女性・吉家紬(つむぎ)。
高校時代、隣に引っ越してきた同級生・真霜知哲(ましも)と家族ぐるみで親しくなり、やがて恋人同士になる。

初めて身体の関係になろうとした日、
不器用な失敗にその場から逃げるように走り去る真霜の情けない表情に、
紬は初めてときめく。

しかしその後、秀才でプライドの高い知哲は紬を避け続けたまま卒業。
想いを確かめ合うこともないまま、二人は離れていく。

やがて、
生まれ育った家の200m先に建ったタワーマンションに紬と両親が移り住んだことをきっかけに、
二人の物理的な距離は「隣」から「200m」に変わる。

紬は和裁の道に進むが、職場でのパワハラや両親の突然の事故死を経て、
心身ともに限界に追い込まれる。

その最も辛い時期、
意識を失って倒れていた紬を見つけ、献身的に支えたのが真霜だった。

しかし紬はその時期の記憶を失っており、
真霜が自分を支えていたことも覚えていない。

5年後。
在宅で和裁の仕事を続ける紬は、
タワーマンションの役員が回ってきたことをきっかけに、
年上の男性・連太郎と出会う。

連太郎は成功した劇伴作曲家。
仕事観が似ていて、優しく、紬の才能を外の世界へとつないでくれる存在。

二人は急速に距離を縮め、同棲を始めるが――
その関係は、紬にとって「安心」と同時に、言葉にできない違和感も孕んでいた。

一方、
真霜は「自分は紬のためにしか動けない人間」だと自覚しながら、
想いを伝えられないまま、ただ側で支える道を選び続ける。

豪雨災害をきっかけに、
紬は人とのつながり、仕事の意味、
そして「一緒に泥をかぶる」という亡き母が父に告げた言葉を偶然真霜から聞き、その覚悟の重さを知っていく。

200m先に住む幼なじみと、
200m上に住む恋人。

紬が選ぶのは、
「守られる関係」か、「共に生きる関係」か――。

読みどころ①

「恋」ではなく「生き方」を描く三角関係

この作品の三角関係は、
誰が好きか、では終わらない。

• 想っていても言えない真霜
• 想いを言葉にし、力で守ろうとする連太郎
• 自分の時間を仕事に全振りしたい紬

それぞれが
「正しさ」を持っているからこそ、簡単に決着がつかない。

読んでいて苦しいのに、目が離せない。

読みどころ②

紬という主人公の「働く女性としてのリアル」

和裁、パワハラ、フリーランス、映像衣装、起業の話。
恋愛漫画でありながら、
仕事の描写が異様にリアル。

「好きなことを仕事にする」
「才能があっても、環境がなければ潰れる」

この辺りは、
20〜30代女性にかなり刺さる。

読みどころ③

「結婚」という言葉の意味を問い直す

連太郎が提示する結婚は、
愛情であると同時に権力の行使でもある。

守るため、独占するため、
相手の人生に責任を持つため。

それを本能的に拒否する紬の感覚が、
とても現代的で、痛いほどリアル。

読みどころ④

タイトル回収が静かに効いてくる

「200m」という距離は、
• 物理的な距離
• 心の距離
• 覚悟の距離

すべてを象徴している。

読み進めるほどに、
このタイトルの重さがじわじわ効いてくる。

年末年始にこの作品を読んで思ったのは、
人生の大事な選択は、劇的な瞬間にばかり起きるわけではない、ということでした。

一緒に生きる、というのは
好き、だけでも
優しい、だけでも
守ってくれる、だけでも足りなくて。

同じ方向を向いて、
一緒に泥をかぶる覚悟ができるかどうか。

『200m先の熱』は、
そんな問いを静かに突きつけてくる物語です。

新しい一年をどう生きるかを考え始める今だからこそ、
心に残る一冊(ひとつの物語)になりそうです。

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