オペラ歌手って誰のこと? ―名乗ることと向き合う、SNS時代のモヤモヤ
1. はじめに ― 曖昧なままではいられなくて
SNSが生活に溶け込み、音楽家もそれぞれのスタイルで自分を表現する時代。
その流れ自体には、私もずっと関心があって、むしろ応援したい気持ちの方が強い。
だけどここ最近、どうしても言葉にしたくなる“モヤモヤ”が胸の奥に積もってきました。
それは「オペラ歌手」と名乗ることの意味について。
音大出身で、声楽を学び、人前で歌っている人はたくさんいます。けれど、「オペラ歌手」と言われると、ストレートに名乗ることに躊躇いがあります。
もしかしたらこれは、狭量な意見に映るかもしれない。
誰かを批判したいわけではありません。むしろ自分自身に向き合いたくて、今日このnoteを書いています。
2. プロとアマ、その境界線はどこにある?
「プロかアマか」と問われたとき、答えるのは案外むずかしい。
報酬が出る=プロ、という考えもあるけれど、それだけでは測れない世界が音楽にはあります。
無償でも、深い知識と技術で本気で歌っている人もいる。
逆に報酬が発生していても、技術的にはまだまだ、という場合もある。
だからこそ、名乗ることに責任と慎重さが必要なのだと、私は感じています。
3. 「オペラ歌手」と名乗ることの重み
わたしが思う「オペラ歌手」は、オペラ全幕の舞台に立ち、演出や指揮者とともに作品をつくり上げる作業を継続している存在です。
たとえプリマ・プリモでなくても、合唱でも、仕事としてオペラの舞台に立ち続ける人は、まさしくオペラ歌手だと思います。
でも近年、オペラ作品の中の「アンサンブルの一曲、一場面を勉強したことがある」というだけで、「オペラ歌手」と名乗る人をSNSで見かけるようになりました。
そしてそのまま起業して、一般の方に“教える立場”として活動している姿を見ると、複雑な気持ちになります。
名乗るのは自由。誰かがどんな名前で活動していても、止めることはできません。
だけど、それを見たときに「実際の現場を知る人は、どう受け取るだろうか?」と想像することも、また大切なことではないでしょうか。
4. SNSと肩書き:伝えたいのは誇りか、印象か
SNSでは、ほんの数秒で“印象”が決まります。
だからこそ「オペラ歌手」という肩書きは一種のパワーワードといいますか、人を惹きつける強さがあるのかもしれません。
でもその強さに頼りすぎると、現場で積み重ねてきた人たちの想いや歴史を、見えなくしてしまうことがあるのではないかと感じています。
「歌が好き」「人に伝えたい」
その気持ちは、誰にでもあっていい。
ただ、名乗ることで得られる信頼や影響力があるのなら、それに見合った誠実さが必要ではないか――そんな思いもまた、私の中にあるのです。
5. おわりに ― わたしが大切にしたい名乗り方
わたしもまた、契約を交わし、稽古に通いながら年に数回オペラの舞台で歌い続ける歌い手のひとりです。
一年中何かの稽古がある状況は今年だけかもしれないし、来年以降のことは分かりません。
だからこそ「自分はオペラ歌手です」と言い切るのは違うように感じます。
声楽家として、歌い手として、名乗ることの重さにはいつも真摯でありたいと思っています。
誰かを責めたいわけではありません。
ただ、このモヤモヤが生まれる背景には、「音楽を大切にしてきた人たちへの敬意」や「表現することへの責任」があるように思います。
もし、このnoteを読んでくださった方がいたら、
それぞれの立場から「名乗るってなんだろう?」と一度だけ、立ち止まってくれたらうれしいです。
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