【勝手に読書感想部】ツミデミック:一穂ミチ
[作品紹介]
六つの『罪』の物語を綴った短編集。
第171回直木賞受賞作。
違う羽の鳥
居酒屋の客引きバイト中の優斗を逆ナンしてきた派手な女性は、優斗が中学生の時の同級生で線路に飛び込んで自殺したはずの『井上なぎさ』を名乗った。
ロマンス☆
街で一度だけ見かけたフードデリバリーのイケメン配達員に心を奪われた専業主婦の百合は、まるでソシャゲでガチャを引くように、お目当ての配達員に会えるまでフードデリバリーを注文し続ける。
憐光
豪雨災害で命を落とした唯は、幽霊となって15年ぶりに現世に戻ってきた。
当時の記憶は断片的だが、親や友人らの会話の中から徐々に記憶を取り戻していく。
特別縁故者
パンデミックの影響で休職中の恭一は、パートを掛け持ちして働く妻を横目に自堕落な生活を送っていた。ある日外で遊んでいた息子の隼が、近所の老人からもらったと言って古い一万円札を持って返ってくる。
祝福の歌
高校生で妊娠した娘の菜花。
言葉がキツく小言の多い妻。
年老いたひとり暮らしの母。
達郎はたくさんの問題を処理しきれずに抱え込んでいた。
さざなみドライブ
SNSを通じて出会った5人の自殺志願者。
彼らはコロナウイルスのパンデミックに人生を狂わされ、死にたくなったという共通点から集まり、死出のドライブに向かう。
[感想]
精神的に追いつめられていたり、日々の暮らしにすり減ってしまったり。
そういう時に人は、罪を犯してしまうんだなーと感じました。
罪に至るまでの登場人物たちの心理状態とプロセス、その描写があまりにもリアルで、読後しばらく胸がざわついています。
これを読んでいると、根っからの極悪人なんて逆にいないんじゃないかって思えてきます。
自制心と欲求の境目ギリギリのところで踏みとどまれるか、一線を超えてしまうかって、本当に紙一重。
犯罪は特別なことではなくて、その時の精神状態とか置かれている状況、ちょっとしたボタンの掛け違えからするりと墜ちてしまうんだなって・・・「罪」がいつだって自分のごくごく身近に居座っているような怖さがありました。
それでいて、その「罪」の先にあるのは達成感とかじゃなくて、虚しさ・・・誰も幸せになれない結末が切なかったし、怖かったです。
でもまぁ、この怖さに中毒性があるから夢中になって読んじゃうんですけどね。笑
本当に全編面白かったですが、『ロマンス☆』と『特別縁故者』が好きでした。
特に『特別縁故者』はこの張り詰めた短編集の中のオアシス的存在でしたね。笑
