【勝手に読書感想部】葉桜の季節に君を想うということ:歌野晶午
[作品紹介]
『蓬莱倶楽部』は老人をメインターゲットに、怪しげな健康グッズや水を法外な金額で販売する悪徳業者。
保険金詐欺や恐喝、殺人にも手を染めているという疑惑もある。
元•私立探偵(見習い)の成瀬将虎は、久高隆一郎の不審な死に疑念を持つ家族から依頼を受けて、この団体の調査に乗り出す。
[感想]
*以下ネタバレ含みますので、まだ読まれていな方はご注意ください
トラちゃんは、息を吐くようにポンポンと嘘をついていました。
どうして好きになった相手に対して本当のことを話さないのか?とか、なんでさくらとのやり取りに使っているケータイはずっと2号の方なんだろう?とか違和感を覚える描写は細かく散りばめられていましたが・・・
いやー・・・完全に騙されましたね。
トラちゃんにも、さくらにも。
正確にいうと、騙されたわけじゃない。
私たちは、文章の中から情報を読み取り、そこから想像して登場人物のビジュアルや人となりを頭の中で組み上げています。
強めのパーマに茶髪、花柄のワンピースから、さくらに若い女性像を重ねました。
フィットネスクラブで80キロのベンチプレスを軽々持ち上げ、エネルギッシュに女遊びに明け暮れるトラちゃん。ガードマンやパソコン教室講師で生計を立てる、仕事が続かないけど色んなことに興味があって、いろいろや経験を積みたい若者なのかな、って・・・誰がシルバー人材って思いますか?笑
今思えば、若者にしては異常に早起きでしたもんね。
高校生の舎弟、キヨシが7歳年下という文からトラちゃんの歳を20代半ばと思い込んでいました。
久高愛子も隆一郎のことを「おじいさん」って呼んでいたし。(うん、確かに夫婦でも「おじいさん」「おばあさん」って呼び合うか)
だけど確かに、トラちゃんが20代だって明言している描写はひとつもありませんでしたもんね。
思い込みフィルター、老人が主人公のはずないっていう固定観念。自分の想像力の拙さに、小さく肩を落としつつも、読書ならではの楽しさを満喫できました。
再読するとこの物語の見え方、世界が、ガラッと変わってきそうですね!
また、いくつになっても果敢にいろんなことにチャレンジしていくトラちゃんの姿勢はすごくかっこよかったです。
桜は、花が散ったあとも葉桜となって見る人を楽しませてくれる。秋が来て、葉っぱが赤や黄色に色付いた光景も、これはこれで美しい。
桜の魅力は「花」だけじゃないんですよね。
「老い」に、消極的な感情を持つ必要なんて全然ないんだって、もっともっと老後も楽しめばいいんだって思えて、なんだか活力をもらえました。
トラちゃんみたいな行動力溢れるパワフルな老後を送りたいなって、憧れちゃいました。
