【総括】令和7年度 介護事業経営概況調査ーー多くは収支差率1〜3%台という薄氷の水準
はじめに
厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査」の第1表〜第50表(サービス種別23区分×全国集計・地域区分別・経営主体別)を横断分析した結果、結論は明確です。全国集計ではすべてのサービス種別が黒字を維持していますが、その多くは収支差率1〜3%台という薄氷の水準で、地域区分別・経営主体別に見ると実際に赤字となる区分が複数存在します。本記事では50表全体を俯瞰し、介護施設経営の「ゆとり」の実態を数値で整理します。
黒字だが薄い─収支差率の実態
令和6年度決算の収支差率(全国集計)は、最低が地域密着型特定施設入居者生活介護の0.4%、最高が定期巡回・随時対応型訪問介護看護の13.4%と、サービス種別で大きな開きがあります。

傾向として、施設系・通所系サービスの黒字幅は薄く、訪問系・定期巡回系サービスは相対的に堅調という構図が全表に共通して見られます。
黒字倒産は「対岸の火事」ではない
全国平均が黒字でも、地域区分別(第24〜46表)・経営主体別(第47〜50表)の内訳では実際に赤字区分が確認できます。たとえば定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、全国平均13.4%の裏で7級地+17.0%〜2級地−18.3%と35ポイント超の開きがあり、同一サービスでも立地によって黒字と赤字が逆転します。通所リハビリ、老健、短期入所生活介護などでも同様の地域格差型の赤字区分が確認されました。全国平均という「面」の黒字は、個々の事業所という「点」の資金繰り破綻リスクを覆い隠します。収支差率1%未満の区分では、収入の小幅な減少や費用の小幅な増加だけで赤字に転じ得るため、黒字倒産的な状況は特殊な事例ではなく構造的なリスクとして常に隣り合わせにあると言えます。
「返戻」への言及はゼロだった
今回分析した50表・250件超の成果物を横断検索した結果、介護報酬の「返戻」(過誤調整・再請求)に関する記述は一件も見つかりませんでした。本調査はあくまで月次の収支・費用構造を扱う集計統計であり、個別事業所のキャッシュフロー・イベントである返戻は対象外です。裏を返せば、ここで示した収支差率の薄さに加えて、返戻による入金遅延というもう一つの資金繰りリスクは、本調査のデータには一切反映されていないということです。実態把握には介護給付費実態統計など別統計との突き合わせが必要です。
ゆとりある経営への道筋
各表の分析が共通して指摘する課題は、費用の伸びが収入の伸びを上回る構造です。給与費比率は多くの表で60%台前半を占め、費用構造の中心となっています。改善提言として繰り返されるのは
①自施設の数値を業界平均と同一定義で比較する
②収入増減を介護料・利用料・補助金に分解する
③給与費は職員1人当たり指標や加算取得状況と併記して評価する
④補助金込みと本業のみの差引を分離して依存度を確認する
の4点です。
多くの表で補助金依存度は数%にとどまり「比較的自立した収支構造」と評価されていますが、それは裏を返せば本業の収支改善そのものが急務であることを意味します。
まとめ

データ出典: 厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査」第1〜50表(令和6年度決算)
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