読書記録│世界で一番いのちの短い国 シエラレオネの国境なき医師団
【世界で一番いのちの短い国 シエラレオネの国境なき医師団】(山本 敏晴)
内戦停止前のアフリカ・シエラレオネ。
タイトル通り、世界で一番短命の国。
2002年のシエラレオネの平均寿命は34歳。
2001年にシエラレオネへ派遣された、国境なき医師団の医師による活動手記。
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序盤はユーモラスな場面も多いです。
ただ、医療の場面では常に緊迫している様子が伺え…。医療が崩壊しているシエラレオネ。現地の医療と西洋医学を上手く使い分けながら、現地スタッフ達と協力している様子。
現地の人々を尊重しているのが感じ取れます。
著者は文字の無い現地の言葉を習得しながら、生活上の不便も医療上の困難も、強い意思で取り組み乗り越えていきます。

私には、p.97からのこの国の内戦事情、そして市民への四肢切断、5歳の少年兵の話が強く印象に残りました。
著者は『人権蹂躙』と言っていますが、想像を絶する、言葉を失うような話でした。
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『四肢切断』は、ふざけた革命軍(RUF)の兵士が一般市民を切り刻んだケースもあるといいます。
けれど、もっと悪質な思惑がある、と…。
わざと死なないように四肢を切断し、体が不自由になった一般市民を生かしておくのである。
何のために?
これにより政府は、体が不自由になった人々を保護し福祉を提供するため国家予算をさかねばならず、またその不自由な人を家で家族も介護するために家族も働きに出ることができない。こうして、産業を含めた国力が疲弊していくのである。
さらに衝撃的なのは、少年兵をどのようにして作るのかについての記述。
私はこの本を読むまでは、教育の行き届いていない子供たちを洗脳して『少年兵』として育てていくのだと思っていました。
ところがそんな生易しい話ではなかったのです。
RUFは、1990年代初頭、軍事施設とまったく関係のない村々を襲い、5歳前後以上の少年少女を誘拐していった。(略)身代金を要求するのではなく、そのまま兵隊にするのである。
5歳、日本なら小学校に入る前の幼い子ども。
倫理観念や道徳規範が十分に育つ前の子供たち!
そして『少年兵』ではなく、『子ども兵』…半分は女の子!!
本来は親が恋しい年頃の子供たちですよ。自分の中の『少年兵』という概念が崩れていきます。
どうやって兵隊に仕立てあげるのかというと、麻薬を無理やり服用させ(皮膚に切れこみを入れ、そこにコカインなどの粉をまぶしこみ)、心をハッピー(悦楽状態)にし、最前線にライフル銃(自動小銃AK47、別名カラシニコフ)を持たせて立たせ、恐怖を感じない最強の戦士として「使用」するのである。麻薬でラリって、善悪の見境のなくなった少年少女は、自分の親兄弟ですら平気で殺す、「殺人マシーン」となってしまう。また、家族や同じ村の村人を殺してしまった子供たちは、二度と、その村に戻れなくなってしまうので、一生、子ども兵を続けていくしかなくなる。
残酷すぎやしませんか。
半ば停戦が決定した状態(内戦から10年程度)で、「子ども兵問題」に着手したキリスト教系組織【カリタス】がありました。カリタスは、教育、宗教、そして道徳を子どもらに教えます。
子ども兵だった子供たちは、生まれ故郷から帰還を拒まれていたんです。
その中で著者は、子ども兵たちの医学的健康上の問題に対処するためにカリタスから協力要請されました。
合計で500人以上は診察したと思うが、なかなかすさまじい結果だった。ほとんどの少年少女に、弾痕(撃たれたあと)があり、またナイフによる刺し傷がいたるところに認められた。実はその切り傷のうち、こめかみや手首のところにあったものは、RUFが子どもたちの体に(粉末状の)麻薬をすりこむときに使った場所だということを、私はあとからカリタスのスタッフから教えてもらった。
さらに驚くのが、少年少女ともに夜を強要されていたということ。
女性のほとんどが妊娠中か妊娠経験があったといいます。少女たちは毎晩多数の男性から行為を強要されていた、と。妊娠した場合、中絶するために危険な方法(化学薬品を大量に飲むなど)を取っていました。
少年の方も、みんなの前で見世物として性行為をしなければならなかった…。

医療に目を向けると問題は山積みで、特権階級の医療従事者たちは国外へ逃亡済み。スタッフは近所の村人たち。建物は被弾し破壊されている…そんな状態から、この国の医療を再建するために著者は立ち上がります。
停戦は間近であっても戦争中。
その中での活動の様子が、かなり興味深いです。
内戦の地域での活動がどれだけ危険か、綺麗事を言わないのもこの著者の良いところです。
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そして彼の理念も素晴らしいものでした。
私の国際協力の方針は、「未来に残すための教育重視」のほかにもう一つあり、それはその国の文化、風習、宗教などを把握してから、その国の未来にとってどうすることがもっとも適切なのかを、「彼らと同じ視線」で考えてみること、である。
ここまでの内容で本の半分。
濃密でしょ?
現地の考えを尊重し、60人を超える現地スタッフの顔と名前を覚えて交流をはかる。そして現地を学ぶ。
そんな西洋的な考えを押し付けない著者のやり方に共感しました。
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私は何年か前に、この本を電子書籍で読みました。でも紙でも読みたくて、改めて購入したんです。買ってよかった。
先程、半分まで読めましたが、文章が読みやすくてとてもサクサクと読み進めていけます。
この著者、周りの『人』をよく見ているんですよ。冷静に。同じ国境なき医師団のスタッフの事も、現地スタッフの事も、現地の人達のことも…みんな。
私はこの著者を尊敬しました。

