68 「1つ屋根の下、3ヶ月で逃げた話」
またしても夜勤が中止になった。
そして暇になっから昔話を書こうかなと
…今回は人を殺めた人と3ヶ月同居してた話。
16歳、まぁある程度は割愛するのだが
滋賀でプラプラしてた時に兄貴に大阪に来ないかと誘われる。
当時兄貴17で何かのツテで大阪で勤めてた
俺もどうせやることもないから二つ返事で行くことになった
それから兄貴と2人暮らしとなるが10代の集まりなんて社会ではまだまだヒヨッコなわけで
僅かな給料を貰いながら何ヶ月か過ごしてた。
ある日帰ってきたら机に紙切れ1枚置いていた
(すまんが探すな)と。
おいっ。マジかよ
と。
兄貴が消えた。
…んー。どうする?これは…
まぁ、心当たりはあったが社長にとりあえず言わなきゃいけないし、俺一人でアパートの管理なんか出来ん。
そんな事でまぁやっぱり無理なもんでアパートは引き払うこととなる
そして住処を失うからどうするとなって
社長の提案で
『ウチで住め』と。
まぁ、仕方ない。
不本意ではあるが泥を塗るわけにはいかないし、お世話になることにした
まぁその当時の社長も極道から足を洗って何年も経っている方。
俺もそんな素性は分かっては居たけど
雇ってもらって面倒見てもらい飯も食わしてもらってたので
俺は仕事で返したかった
リビングに布団を敷いて寝ての生活だったが俺は悪い気はしない
元々何処でも寝れるような生活をしてたから
だが、そんな日々も崩れるときが来る
社長の昔からの友人が刑務所から出てくるとのことである
『まぁ、出てきてもたちまち生活が成り立たないやろうからウチで面倒見るが銀狐、かまへんか?』
と、言うことは一緒に過ごせと言うことだ。
まぁ、俺もそれは仕方ないと思いますと
何故刑務所に入ってたんですか?と聞いた所
暴行で人を殺してしまったとのこと。
…マジか…
心で思ってたけど
仕方ないよなぁと思ってた
そしてその日がやってくる
初対面。
ガッチリして強面だ。
岩みたいな感じだな
名前は宮本(仮名)
40代後半なのは覚えてる。
『おぉ、名前なんて言うんや?銀狐?よろしくなぁっ』
よろしくお願いしますと
そっから3ヶ月生活を共にすることとなる
まぁ見た目とは裏腹に優しいんだなと日に日に分かるのだが
酒を飲むとまずいんだなコレが…
下手な事を言えない空気を出してくる。
まぁ怖い。雰囲気が
休みの日なんか
『おうっ!銀狐、暇かっ!付き合えや』
「あ、はい」
と、向かう先はパチ屋
『おう、ワレも打ってみい。』と金をくれる
当然やり方は分からないからすぐに溶かす
『何やワレ下手やのぉ、あははは』
時折見せる笑顔は優しく見える
そのまま夜にはスナックなんか連れて行かれる
『おう!タンバリン出来るかぁ』
と渡される
「いやぁ、出来ないっすよ…」
『まぁ叩けや。』
とパシパシ叩く
『何やワレぇ、下手やのぉ…もうええわ』
…演歌に誰が叩くねん。
そんなメチャクチャな人ではあった。
そして仕事はやっぱり達者だったなぁ
まぁそうした中で一回聞いてみた
「なんで刑務所入ってたんすか?」
『ん?何やワレ興味あんのか?』
「ちょっと聞いてみたかったんです」
『まぁ、アレや。人が酒飲んで気持ちようなってる時に絡んできよってやな』
「そうなんですかぁ」
『ほんでド突いたら当たりどこ悪くて死によったんや、まぁよくある事や』
…いや、無いやろ。
「そうなんすね、何年くらいいたんですか」
『んー。十年かぁあんまり覚えてへんわ。もうええやろ』
「あ、はい…」
とまぁ、そんな風に聞ける事もあったが
やっぱりそんなか生活は段々嫌になる自分が居た。
そして、社長にお世話になってるけど
辞める理由を考えて切り出した
「滋賀の方でオカンが厳しいとのことなので戻りたいです」と。
まぁまだ16の少年が言う理由に社長も
『ええよええよ、戻ったり』と解ってくれた。
いや、見透かされてたんだなと思う。
そうして最後の日となり
仕事も終え
夜に荷物を纏めて次の日に別の人間が滋賀まで送ってくれるとなってた。
そんな夜にまた宮本さんも酒を飲んで
『淋しくなるなぁ、また遊びに来いよぉ』
と。
「そうですね、お世話になりました。本当にありがとうございました」
『⋯⋯⋯よぉ』
自分は荷物をまとめながら何か言ってる宮本さんを見た。
その時だ。
『何じゃワリャぁ!何無視しとんじゃぁっ!』
と。
「ちょっ、ちょっとどうしたんすかっ!」
ものすごい力で胸倉を掴まれる
「痛い痛い痛い…」
その声を聞きつけて
社長のお父さん(爺ちゃん)
娘さん(24歳)
が止めに入る
『何やってのよ宮ちゃんっ!やめーな』
と。
…どうやら話してたのを無視して見下したように見えたのが腹が立ったらしい
俺は聞こえてなかったから仕方ない。
だが、この沸点の低さでさらに恐怖が倍増する。
こりゃ無理だってと。
翌日、トラックに荷物を積んで名神高速を走る
京都方面がまぁ渋滞。
昼過ぎに出たもののいつ着くんだ?と。
『こんな混んでたらいつ着くか分からんもん、左走るばいっ!』
路肩をゴリゴリ行く。
…やっぱ辞めて良かったな。この会社で命預けるのはまだ早かった気がした
余談で兄貴の失踪はすぐに見つかった。
どうやら大阪の南の方で極道の門を叩いてそうな。
案の定社長にバレて
どうすんだ?と詰められてた。
そのまま
『自分は行きます!ご迷惑をお掛けしました』
と詫びてた。
そして、そっちの世界に行ったのである。
現在はとっくに抜けて普通に暮らしてるって話。
宮本さんはアレからどうなったかは分からない。
多分肝臓壊してたから
まぁ、言うまでもないか。
ちょっと書くかにしては長いな。
まぁ、こんな時もあったって話だ。
