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【創作大賞2025応募作品】俳句集/急性骨髄性白血病患者闘病記「凍月〜抗がん剤と戯るるナース〜」




✰作者は2024年9月27日、急性骨髄性白血病と診断され、2024年10月2日から12月31日まで、抗がん剤治療の為、血液内科病棟へ入院。2025年1月1日から同血液内科病棟はリニューアルした病院へ吸収されました。作者は抗がん剤治療第3クール後半から第4クール終了日2025年3月5日迄、リニューアルした病院で治療を受けました。

✰全ての俳句は入院中、または一時退院期間中に詠んだものです。入院前に動物愛護活動をしていたので、動物俳句も詠みました。

✰俳句の末尾の数字は詠んだ日付です。



前書きにかえて/無季俳句
新病棟では、毎日がロシアンルーレットでした。血液内科からではない病棟から配属された、マイルールで動く看護師さんたちに翻弄されました。

「ロシアンルーレット」

リボルバーに看護師と云ふ弾三発  2/26



1.抗がん剤治療第3クール後半に詠んだ13句


元旦や轟音の室(へや)に目を覚ます1/1
粉砕機より救ひし雛とゐる二日1/2
おとうとの頑張れメール初茜1/5
点滴や窓馳落つる寒の雨1/6
ルートに気泡あまた小暗き冬の雲1/6
無菌室の灯り見てゐる七日かな1/7
無明世界牛鍋食らふ人らかな1/9
寒晴や鳥の風切の細部迄1/9
リハビリやひねもす寐たる冬の山1/9
無菌エリア獄所のごとき寒夜かな1/9
無菌エリアシャワーで頂く初湯かな1/11
明日消えてなくなる部屋の寒夜かな1/12
無菌室患者娑婆へ出さるる寒九かな1/12



2.3回目の退院中に詠んだ9句


街中より上がる冬月娑婆のいろ1/13
蕾あまた山茶花もわれも寒の内1/14
冬月が見遣れる方に夜明けかな1/16
春満月雛は地獄に生まれけり1/17
寒の雨去る芥(ごみ)提ぐる人が来て1/20
家計座礁山茶花汚く街に咲く1/21
寒の花壇狐のあたま埋まりけり1/22(岐阜県関市小瀬)
雑巾色の保護鶏あゆむ冬日向1/22
無菌室の姉にメールの寒見舞1/27





3.抗がん剤治療第4クールで詠んだ28句


春立ちぬ無菌室へと舞ひ戻り2/3
無菌室に着切雀春立ちぬ2/4
笹鳴や独り立ちせぬ看護師ら2/8
ラポール無き巡回去りて余寒かな2/12
蝶行けば雀食ひつく三叉かな2/12
虻の昼リハビリ師われに打たれけり2/14
血管はエア食はされてばかり薄氷(うすごほり)2/14

ミス一つナースが敵に冴返る2/15
ミスの山明るき春のナースかな2/15
トリガーのナース彷徨く二月かな2/17
立春のエア血管へ駆込みぬ2/17
狼も羊の寝顔春の夜2/18
引越し児涙まみれの雨水かな2/18
羽コートに合はぬ死に方春の鶏2/18

「猫の日」に詠む
夕闇の空地に浮かむ子猫かな2/22
秋風や眼前の猫われを見ず2/22
地獄花猫の子二匹さまよへり2/22

鼬来て落として逃げぬどぶ鼠2/2
雪消月大阪の夜に白き落つ2/23
凍月や抗癌剤と戯るるナース2/24
看護師に捨て置かれたる日永かな2/25
春暁の血抜く押しかけナースかな2/25
留置カテーテル駆血されけり春灯2/25
春の夜や轟くままの無菌室2/26
二夜目は転倒したり床凍つる2/26
ニット帽より尼僧のあたま朝鏡2/27
膳に乗り無菌室入り雛あられ3/3
春の雨看護師われを忘れけり3/5



後書きにかえて/無季俳句
抗がん剤治療第1クールから第3クール前半迄を闘った病棟は、解体され地上から消えました。もう存在しないものは忘れるべきなのかと思いました。

「前血液内科病棟消ゆ」

解体作業わが闘病を無きに成し3/1




全52句 詠み手/楓摩ゆみ