赤ちゃんの写真や動画、載せると危険⁉️ 親世代みんなでアップデートしたいネットリテラシーの話
はじめに
Instagramを開くと、赤ちゃんや子どもの写真が時々流れてきます。
見ているこちらもほっこりしてしまう投稿ばかり。
でも、名前や誕生日、通っている園や学校のことまで、わかってしまう投稿もありますね。
正直に言うと、わたしも「かわいいから見たい派」です。
だからこそ、「それって危ないから今すぐやめて!」と誰かを責めたいわけではありません。
ただここ数年、「シェアレンティング(Sharenting)」と呼ばれる行為――親が子どもの写真や情報をSNSに投稿すること――について、世界中で研究や議論が進み、
想像していた以上に、子どもの未来に長く影を落とすかもしれない
ということが見えてきています。
このnoteでは、
怖がらせるためではなく
誰かを責めるためでもなく
「わたしたち親世代のネットリテラシーを、少しアップデートするヒント」として、実際の研究や公的機関の情報をベースに、子どもの写真をSNSに出すことのリスクと付き合い方を書いてみます。
1. 「シェアレンティング」って何? なぜ今、問題になっているのか
親が子どもの写真や動画、エピソードをSNSに投稿することは、
英語で “Sharenting(シェアレンティング)” と呼ばれます。
sharing(共有)+ parenting(子育て)を組み合わせた造語です。
研究者や専門家が問題視しているのは、主にこの3点です。
① 子どものプライバシー・人権の問題
子ども本人は同意していないのに、顔・名前・生活圏が世界に公開される
将来「自分の知らないところで、赤ちゃんの頃から全部晒されていた」と知ったときの精神的ダメージ
「親にとってはただの育児日記」でも、
子ども本人にとっては 「自分の人生のスタート地点から、全世界に公開されていた履歴」 になります。
② 画像の“勝手な二次利用”や「デジタル誘拐」
海外では、
他人の子どもの写真を勝手に保存し
自分の子どもかのように再投稿したり
画像を加工して別の文脈で使う
といった「デジタル誘拐(digital kidnapping)」と呼ばれるケースも報告されています。
③ オンライン・プレデター(性的な目的の加害者)への“材料提供”になりうる
いちばんセンシティブな話ですが、ここも現実として触れざるをえない部分です。
子どもの写真が、児童ポルノ的な文脈で収集・共有されている事例
家族ブログやSNSからダウンロードした子どもの写真が、性的な画像共有サイトに流用されているという研究報告
などが、海外の調査で出ています。
つまり、
「かわいい写真を見てもらう」の裏側で、
子どもの“将来に関わるデジタルな履歴”を、親が先回りして決めてしまっている
というところが、本質的な問題だと言われています。
2. 「赤ちゃんの頃から名前入りで公開」のどこが危険になりやすいのか
よくあるパターンを、あえて整理してみます。
顔がはっきり写った写真
本名(ローマ字つき)
誕生日ケーキや生年月日の公開
通っている園・学校名、制服やランドセルでなんとなく場所が分かる写真
自宅周辺が分かる背景(マンションの外観・表札・近所のランドマーク)
これらが 「公開アカウント」で、何年も積み重なっている とどうなるか。
① 現実世界で特定されやすくなる
顔+名前+生活圏(学校・習い事・公園など)がそろうと、
「オンライン上の存在」と「現実の子ども」が結びつきやすくなります。
普通の人にはただの情報ですが、
悪意を持った誰かにとっては「探すための手がかり」になりえます。
② “成長アルバム”が誰にでも見られる状態になる
赤ちゃんから幼児期、小学生、中学生…と、
「成長記録」が時系列で並ぶことで、
特定の誰かが興味を持てば
その子の成長を追いかけ続けること自体は、技術的にはとても簡単
です。
「赤ちゃんの頃から追いかけて、成長後に襲う」というパターンを
統計的に証明した研究はほとんどありませんが、
そうしようと思えばできてしまうだけの情報が、無料で世界中に置かれている
という構造自体が、専門家にとっては大きな懸念になっています。
③ 将来の“なりすまし”や“身元情報のセット”になる
欧米の調査では、
「子どもに関するID盗難(なりすましなど)の多くが、親のシェアレンティングに由来しうる」と警告しているものもあります。
顔写真
名前
誕生日
生活圏
これらがセットでそろっていることで、
なりすましアカウントや、詐欺の材料にされる可能性も指摘されています。
3. 実際に何が起きているのか:研究や調査が示していること
3-1. オンライン・プレデターが「親の投稿」を狙うケース
オーストラリアで行われた調査では、
子どもの写真をオンラインに投稿している親の一部が
子どもの性的な画像を求めるメッセージや
金銭と引き換えの要求
を受けている、というショッキングな結果が報告されています。
また、アメリカの研究者のレビューでは、
ペドフィリアがオンライン上の“家族ブログやSNS”から子どもの写真を収集している事例
性的画像共有サイトにある写真のうち、かなりの割合が「もともと一般家庭の投稿だった」とする報告
などが紹介されています。
3-2. 公的機関も「プレデターの脅威は広範」と警告
アメリカのFBI(連邦捜査局)は、
オンライン上のペドフィリアの脅威は
vast and extensive(膨大かつ広範)
であるとし、
親が気づかないうちに
子どもの画像や情報が狙われるリスク
について、公式サイトで注意喚起を行っています。
フランスのデータ保護機関(CNIL)も、
親にとっては無邪気な「お風呂の写真」「おむつ姿」「水着」などが
インターネット上では性的な文脈で“乗っ取られる”リスク
を具体例とともに紹介しています。
3-3. 日本でも専門家が「一度出したら取り返せない」と警鐘
日本でも、メディアリテラシー教育の専門家などが、
一度ネットに出た子どもの顔写真は、完全に消すことはほぼ不可能
子どもの将来の人間関係・就職・いじめなどに、思わぬ形で影響する可能性
を指摘しています。
またヨーロッパでは、
親のシェアレンティングを規制し
子どものプライバシーを守るべきかどうか
が、政府レベルで議論されはじめています。
つまり、
「親が子どもの写真を上げすぎる」という行為そのものが、
すでにひとつの“社会問題”として扱われつつある
という流れがあります。
4. 「じゃあ全部やめるべき?」への、現実的な落としどころ
ここまで読むと、
もう一切、子どもの写真を出さない方がいいの?
と思う方もいるかもしれません。
正直に言うと、
「ゼロが理想」 という意見もあります。
ただ、現実には難しいし、「誰かを責めるためのゼロリスク論」にはあまり意味がないとも思います。
なのでここでは、
いきなりゼロにしなくても、今日からできる「安全側へのチューニング」
をいくつか挙げます。
4-1. 公開範囲を「世界中」から「信頼できる人」に絞る
アカウントを「非公開(鍵付き)」にする
フォロワーをリアルの知人・家族・友人に限定する
公開アカウントでは、子どもの顔や名前は出さない
4-2. 「顔+本名+生活圏」のフルセットを避ける
本名・誕生日・通っている園や学校名は、できるだけ載せない
背景にランドマークや自宅周辺が写る場合は、トリミングする
制服や園帽子など、所属が分かるものはぼかす/別ショットにする
4-3. 子どもが物心ついたら、本人の意思を聞く
「この写真、ネットに載せてもいい?」と必ず聞く
嫌がったら載せない
過去の投稿も、子どもと一緒に見直して消す・非公開にする
4-4. 「“今のいいね”より、“子どもの10年後”を優先する」マイルール
投稿ボタンを押す前に、一度だけ自分に問いかけてみる。
この写真が10年後もネット上に残っていて、
子ども自身や、その友だち・恋人・同僚も見られる状態だとしても、
それでも出したい写真か?
このワンクッションだけでも、
シェアレンティングの質はかなり変わるはずです。
5. 「赤ちゃんの頃から名前付きで公開してきた人」に伝えたいこと
このnoteは、
今までそうやって投稿してきた親を責めるため
ではありません。
むしろ、こう考えています。
わたしたちの世代は「SNSが当たり前」になった最初の親世代で
“後から分かったリスク”に、誰も説明を受けないまま直面している当事者
です。
だからこそ、
「今までの投稿が全部ダメ」ではなく
「今日からどうするか」を一緒に考えませんか?
というスタンスで、この文章を書きました。
もしあなたが、
「自分の子どもを守りたい」
「でも、かわいい瞬間も誰かと分かち合いたい」
と思っているなら、その気持ちはまったく間違っていません。
その上で、
公開アカウントで、顔と本名と生活圏をフルセットで世界に出してしまう
というスタイルは、
少なくとも2025年時点の知見からすると、
想像していたよりもハイリスク寄り
だということだけ、
どこか頭の片隅に置いてもらえたらうれしいです。
6. 日本の公的機関による公式警告(引用用)
警察庁および子ども家庭庁は、
SNS等で公開された子どもの写真・情報が犯罪に悪用される危険性について
公式に注意喚起を行っています。
警察庁|子どもの性被害とは
https://www.npa.go.jp/policy_area/no_cp/
子ども家庭庁|青少年の安全で安心な社会環境の整備
https://www.cfa.go.jp/policies/youth-kankyou
上記ページでは、
・性加害者がオンラインで子どもの情報を収集する危険
・SNSの不注意な利用が被害につながる可能性
などが明確に指摘されています。
わたしたち親が「知らなかった」で済まされない時代になってきました。
そのぶん、「知った後でどうするか」は、自分たちで選べる時代でもあります。
このnoteが、そのための小さなきっかけになればうれしいです。
