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大丈夫だ、プラシーボを信じろ

まるで心が安定しない。妊娠8ヶ月、当然といえば当然かもしれない。
毎日不安に襲われて泣き明かしていたり、食事も喉を通らなかったり、仕事にも行けないとか全然そういうことではない。ないけれど、「出産」という自身の人生の中で前例のない一大イベントが必ず訪れる、そんな漠然とした事実をまだ受け止めきれていないのかもしれない。

赤子をいつまでもお腹のなかに大事にしまっておくわけにはいかないし、いつか必ず産まれてくる。誰だってそういう風に家族になってきた。それは分かる、私だってそうだ。だが、自分に置き換えた途端それは突然現実味をなくす。おおよそ3キロほどの赤子が、この狭い股をこじ開けて出てくるなんて本当にそんなことできるの?というか、生きて帰れるの?という思いばかり湧き上がる。いくら周りに大丈夫だから!と励まされても何が大丈夫なのかも全く分からない。ホンマか、ホンマにワシにやれるんか。

二人の子を持つ妹曰く「できるとかできないとか、乗り越えられるとか乗り越えられないじゃなくて、始まったら産まれるまでは終われない。ただそれだけ」とのこと。言葉の端々にどうしようもない逃げ場のなさを感じておもわず身構えるが、これが一番リアルである意味助かった。おそらく、覚悟を決めるとか以前の話なのだ。生まれてから死ぬまで絶え間なく動き続ける心臓のように、無意識でしている呼吸のように、お腹に宿ったその日から私の意思とは関係なくその命は成長し、いずれ産まれる。私にできることといえば、流れと痛みに身を任せてその波を乗りこなすことくらいだろうか。

噂によると、出産の痛みや衝撃はどれだけイメージしてもそれを簡単に飛び越えてくるらしいし、人のお産もあまり参考にならないらしい。出産ハードモードすぎる。だとしたら、怯えていろいろ想像するだけ無駄である。どうせなら自分の理想のお産を口に出しといたほうが引き寄せの法則で上手くいくかもしれない。

自慢じゃないが、私は結構自己暗示が強いほうだ。子どもの頃、夕飯に食べた肉が喉にひっかかり痛くて苦しんでいたら「手のひらにのの字を書いて飲めば治る」とか適当なことを父に言われ、しぶしぶ実行した結果肉を吐き出せたこともあったし、ひゃっくりが止まらなくて死ぬかもしれないと思ったときは友達に突然「黄色い食べ物は?」と聞かれて「レモン」と答えた瞬間止まったりもした。ちなみに今でもこの方法で止まる。父に関しては幼少期の肉吐き出し事件が相当おもしろかったのか、私が困るたびに「手のひらにのの字をかいて飲めばなんとかなるよ」ばかり言ってきたときもあった。なめやがって。

とにかく、それくらい思い込みが激しいんだからやれると思ったら案外それにも乗れるかもしれない。以下は私の理想だがほぼ確定的なお産スケジュールだとする。

□陣痛〜出産まで6時間ほどに収まる
□陣痛は痛いが耐えられないものじゃない
□普段の最強下痢の方がマシと思える
□しっかり10秒吐いて吸う呼吸を意識できる
□叫ばない、暴れない、気を失わない
□初めての痛みを面白がれる
□会陰切開は無しorほんの少しで済む
□胎盤はほとんど痛みなくスルッと出る
□あらゆる産後処置は思っていたほど辛くない
□元気に産院のごはんを食べる

いかに痛みに怯えているのかが分かる内容である。あとごはん。今の私の心の支えは産院の美味しそうな食事です。本当は点滴の針の痛みとかもカウントしたいくらいビビってる。お願いですできるだけ痛いことしないで、はぁ無理ですか、そうですか…全ての母に尊敬と感謝を…とりあえずはこの理想の出産スケジュールを頭に叩き込み、当日は必ずこうなると念じながら残りの期間を過ごしてみようと思う。もちろんそれで恐怖が拭えるわけではないが、半信半疑な思考を現実化するための思い込み作業が成就したら、かなり大きな希望になる。産後どうなるか楽しみにしていよう、あとはメシのことだけ考えよう。そして、自身の大いなる思い込みパワーを信じて過ごしてみようと思う。


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