【エッセイ】 白い記憶、還る場所
こちらに参加させていただきますます☺️
●テーマは「記憶」
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記憶と聞いて、一番に思い出したのは……実家にある、外廊下だった。
実家は古い和風の一軒家で。
外廊下というものが家の南側にあった。
部屋側は和室で……その境目には、ふすまではなく磨りガラスの建戸がはめ込まれていて。
廊下の窓には、いつもレースのカーテンが揺れていた。
そこは……私だけの秘密基地だった。
小さな頃……私は、そのカーテンを磨りガラスに挟み込み、小さな空間を作って遊んでいた。
ヴェールに包まれたようなその狭い空間で……私は一人で絵を描いたり、童話を読んだり、人形遊びをしたりして。
ひたすら空想に浸って過ごしていたのだ。
白くぼやけた光が差し込むその空間は、まるてそこだけ別世界で。
そこにいる間は、誰も邪魔せず、嫌なことも起こらず……。
そんな、現実を忘れさせてくれる場所でもあった。
いつだったか……。
もう少し大きくなってから、私は、安房直子さんの本に出会った。
読み進めれば、進めるだけ……作品の中に吸い込まれていくような感覚に陥って。
現実との境目があやふやになるような中で、私はあの秘密基地を思い出していた。
日だまりの中で、お昼寝でもしたみたいな白昼夢。
地に足がつかない、ふわふわした夢見心地。
それは……私の奥に残る、幸せな記憶で。
あの場所は、私の中に今も存在しているのだと……その時にはじめて気づいた気がする。
それ以降、物語の中に深く入り込むと……私は、あの外廊下のひと時に回帰してしまうようになった。
磨りガラスに隔たれた、こちら側。
レースのカーテン越しのやわらかな光。
あたたかい日差しに包まれた、白い世界。
その向こう側に……物語は確かに存在していて。
いつだって、私に別世界を見せてくれる。
辛いこと、悲しいこと、苦しいことがあっても……私の根っこの部分は、そこにつながっていて。
気持ちを言葉にして紙に書き出すことで、乗り越えることができた。
創作をする時は、なおさら。
私は、淡い景色の向こうに、いろいろな物語が透かし見てしまう。
そして、あの頃と同じように内側の世界に潜り込み……あたたかな幸せに包まれるのだ。
もうすっかり大きくなってしまって……今では、同じ空間におさまることはできないのだけれど。
それでも、残念に思うことはなく。
あの頃読んだ不思議の国のアリスではないけれど……私は『私を食べて』と書かれたお菓子を、少しばかり食べ過ぎたのかもしれないな、などと。
つい想像をしてしまい……気づくと、やはりそこに還っている。
思い出そうとして思い出すのではなく……あの場所は、当たり前のように私の中にある。
大人になってからも、ふと立ち返ることのできる場所。
そんな場所は……もしかしたら、誰にでもあるのではないだろうか。
記憶に結びついた……懐かしく思い出せる景色。
私にとってのそれは……間違いなく、あの白い光に包まれた、外廊下なのだ。
柊紅葉さん、ご紹介ありがとうございました😊
