あの頃の、風に…… #ちび創作大賞
天野さん、よろしくお願いします😊
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私は……それまで、自由気ままなつむじ風だった。
でも。
あなたに出会って……私は、あなたに囚われてしまったのかもしれない。
そばにいたいと思った。
初めての、恋だった。
ただの空気ではダメだ。
あなたの心がよどまないように、絶えず流れ、あなたに新鮮な空気を送る。
そう……例えばそよ風みたいに。
あなたのために、私は変わりたいと願ってしまった。
自転車で登校するあなたの背中をそっと押して。
部活を頑張るあなたに、勝利のチャンスを送り。
いつでもあなたを支える……そんな、あなたに吹く風になりたくて。
見てもらえなくてもいい。
気づかれなくてもいい。
だって……風ってそういうものだから。
目に見えないのが、当たり前だから。
あなたの声をそばで聞いて、どさくさに紛れて身体に触れる。
それだけで、幸せ。
ただ、あなたを想うだけで十分。
あなたが幸せなら、それでいい……。
それが美徳だと思い込んだ。
あの頃……私は何も知らない少女で。
そんな初恋に、何の疑いも抱かず……流されるように、邁進してしまった。
でもね。
風は、誰にでも吹く。
そして、私の思い描いた風が、あなたの望む風だったのか。
……それは今もわからない。
考えることができなかったのは、確かだ。
わかったのは……風は、背中を押せても、隣は歩けないということ。
肩を並べることも、顔を見て笑うこともできなくて。
すり抜けるばかりで、手も繋げない。
だから。
気づいた時には、遅すぎた。
いくらあがいても、私は自由な風に戻ることはできなくて。
吹き付けてくる強い風に、立ち向かうこともできなくて。
すれ違っていくことが怖くて、私はただ自信をなくしていくだけで……。
あなたが私のもとを去って、他の誰かを好きになっても。
遠く離れ離れになってしまっても。
私は何もできず……あなたを想い続けるしかなかった。
大切だった時を守りたくて。
思い出にずっと恋をするように……。
自分をなくしたまま、あなたに吹く風でいようとした。
二人で同じ風に吹かれていたほうが、ずっと幸せだったのに。
だから……ずいぶんたった、今なら分かる。
あの頃、私が手放してしまったものが、何だったのか。
本当になりたかったのは……あなたのための風じゃない。
私は、自信を持って、私らしく……あなたと共に歩める人になりたかったんだ。
大切な時も、思い出も……。
閉じ込めたままでいたけれど。
そろそろ、手放してあげなくちゃね。
風が、新しい空気を、また運んでこられるように……。
