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あの頃の、風に…… #ちび創作大賞


天野さん、よろしくお願いします😊

        ***

私は……それまで、自由気ままなつむじ風だった。

でも。
あなたに出会って……私は、あなたに囚われてしまったのかもしれない。

そばにいたいと思った。

初めての、恋だった。

ただの空気ではダメだ。

あなたの心がよどまないように、絶えず流れ、あなたに新鮮な空気を送る。

そう……例えばそよ風みたいに。

あなたのために、私は変わりたいと願ってしまった。


自転車で登校するあなたの背中をそっと押して。

部活を頑張るあなたに、勝利のチャンスを送り。

いつでもあなたを支える……そんな、あなたに吹く風になりたくて。


見てもらえなくてもいい。

気づかれなくてもいい。

だって……風ってそういうものだから。

目に見えないのが、当たり前だから。


あなたの声をそばで聞いて、どさくさに紛れて身体に触れる。

それだけで、幸せ。

ただ、あなたを想うだけで十分。

あなたが幸せなら、それでいい……。


それが美徳だと思い込んだ。


あの頃……私は何も知らない少女で。

そんな初恋に、何の疑いも抱かず……流されるように、邁進してしまった。


でもね。

風は、誰にでも吹く。

そして、私の思い描いた風が、あなたの望む風だったのか。

……それは今もわからない。

考えることができなかったのは、確かだ。


わかったのは……風は、背中を押せても、隣は歩けないということ。

肩を並べることも、顔を見て笑うこともできなくて。

すり抜けるばかりで、手も繋げない。


だから。

気づいた時には、遅すぎた。

いくらあがいても、私は自由な風に戻ることはできなくて。

吹き付けてくる強い風に、立ち向かうこともできなくて。

すれ違っていくことが怖くて、私はただ自信をなくしていくだけで……。

あなたが私のもとを去って、他の誰かを好きになっても。 

遠く離れ離れになってしまっても。

私は何もできず……あなたを想い続けるしかなかった。


大切だった時を守りたくて。

思い出にずっと恋をするように……。

自分をなくしたまま、あなたに吹く風でいようとした。


二人で同じ風に吹かれていたほうが、ずっと幸せだったのに。


だから……ずいぶんたった、今なら分かる。

あの頃、私が手放してしまったものが、何だったのか。


本当になりたかったのは……あなたのための風じゃない。

私は、自信を持って、私らしく……あなたと共に歩める人になりたかったんだ。


大切な時も、思い出も……。

閉じ込めたままでいたけれど。

そろそろ、手放してあげなくちゃね。


風が、新しい空気を、また運んでこられるように……。

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